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死神の寵愛を授かった少年  作者: ユウ
第Ⅱ部:最下層
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第7話:禁断魔法の創造

 

「いくぞクソ髑髏!」

『クハハ! いいぜ!』

「探索スキル発動……半径百キロの生物把握。黒色のマーク―――肉体の死者にターゲット。次いで念話……ターゲットに接続、成功」

「おいお前ら。聞こえるか? 死にたいなら殺してやる。応答して名前を述べろ! 名乗れないものは叫べ!―――― 確認した。家の外に出て待て!」

 春樹の声に、体の死せる者たちの多くが従った。

 名乗れないものはうめき声を上げて。なぜかみんな、天を仰いで涙を零している。

「おい。お前の出番だ」

 髑髏に爪を立てた春樹の周辺から、漆黒のオーラが立ち上る。

『クハハ! 力だ! 力を感じるぜ!』

 悪魔のような羽は二対四枚に増え、尻尾に八重歯、深紅の瞳に二本の角。禍々しさを増した春樹の姿が、そこにある。

 つまらなさそうに空中に放り投げたショートソードを、春樹(ディアブロ)は大きな口を開けて……再び飲みこんだ。

『春樹、五つまで行けるぜ?』

「三つでいい。力のコントロールが不安だからな」

『ケッ……ったくつまんねぇヤツだぜ。だが主の命令なら仕方ねぇな』

 ニヤニヤと笑いながらディアブロは右手を大地に突っ込む。

 瞬く間に黒く光り輝く髑髏型の陣が、地面に広がっていく。

 ジワジワと大地を侵食するように拡大を続けて―――

「見ろよ! すっぽりハマったぜ!!」

 半径百キロ、周囲の村や集落たちを飲みこんだ。

 第十層の約十分の一に、髑髏の陣が広がったことになる。

『ターゲットは補足できてるな?』

「なぁに、悪魔に抜かりはねぇさ。ところで、先に謝っとくぜ?」

『何がだよ?』

「うっかりイったらすまねぇな! 刺激が強ぇだろうからよぉ。 クハハハハ!」

『なっ⁉』

「いくぞ!」

 ニヤリと笑ったディアブロは、高らかに唄う。

「ひとつ―――悪魔が(わら)う。ふたつ―――悪魔が吠えて。みっつ―――大地を刈る」

 グニャリと大地から深紅の触手が生えて―――ターゲットを包み込んでいく。

 不気味な地鳴りと共に、一瞬で姿を消したのは髑髏の陣。そして、ターゲットたち。死んだ身体を持った死ねない者たちの救済が、今なされた。


「はぁ…… クッソ気持ちいぃ。この解放感―――たまんねぇっ」

 両手をワナワナと振るわせて。

 口の端から微かにヨダレを垂らしながら―――ディアブロは恍惚とした表情で天を見上げている。

『おい! さっさと代われ』

「っせーな。終わったら即用済みなんて最低だぞ?」

『うるせぇよ! さっさと代われって!』

「なら、わかってるだろ? 答えろ」

 ディアブロはニヤリと微笑みながら。

 まだ回答を得てない問いを指折り数えていく。

「で、どれに答える?」

 ケタケタと笑いながら、ディアブロは春樹の感情の起伏を味わいだす。

『―――でけぇ』

「は?」

『だからでけぇんだよ! 部活で一番でけぇって言われてた』

「クハハ! それはよかったじゃねぇか!だが、足りねぇな?」

『は?』

「感情の起伏が足りねぇ。さては、デケェのが恥ずかしいわけじゃねぇな?」

『……』

「このままでもいいのか?」

『馬並み、最終兵器。それに……オロチ丸ってあだ名がついてた』

「クハハハハ! いいぜ今の感情! お代はもらった!」

 満足そうに笑ったディアブロのオーラが静まっていく。そして、姿を現したのはもとの春樹だ。

『なぁ春樹。お前のオロチ丸、粗相してねぇか?』

「うるせぇ! するわけねぇだろ!」

 大声でキレながら、それでもそっと触って確かめる春樹を、ディアボロはケタケタ笑ってバカにする。

『早漏じゃなくて良かったな?』 

「黙れこのクサレ髑髏!」

『クハハ! ご命令承ったぜ。いや待てよ―――どうやら来やがったぜ?』

「あぁ」

 気が付けば無数の火の玉が、まるで小さな山のように連なって。春樹の眼前に立ち並んでいる。

「来い! 力を貸してくれ!」

 両手を広げた春樹の声に応えるように。

 青白い火の玉が流星のように空から降り注いで―――髑髏の紋様に飲みこまれていく。

『来た! 来やがったぞ! クハハハハ! 最高だ! 最高にうめぇ!』

「―――クッ」

 屈みこんだ春樹の脳裏に、またも情報が流れ込んでくる。

 ディアブロがどんどん、春樹に力を授けていく。

「身体ランクSSS突破、精神ランクSSS突破。各種スキルの射程距離、持続時間長化……」

『クハハ! いいぜいいぜ! 上がれ! もっとだ!』

「おい!ちょっと落ち着け!」

『そりゃ無理ってもんだ! ヤベェぞ。こっから先は未知の世界だぜ』

 テンションが上がりすぎた髑髏の紋様は、顎が外れそうなくらいケタケタと高笑いを続けている。

「おい! これで足りそうなのかよ?」

『あん? まだまだ足りねぇぞ?』

「なら範囲を拡大して、も一回やるぞ」

『何だ? 今回と同じ土地にも陣をはるのか?』

「あぁ。周囲の状況を見て、次は名乗り出るアンデッドがいるかもしれないしな」

『クハハハハ! 確かにな! 何回でも手伝ってやる! どんどん食わせろ!』

 



 +++




『で、上手くいきそうかよ』

「あぁ。動物のアンデッドで上手くいったんだし。大丈夫だろ」

 春樹は瞳を閉じて、脳裏に新たに刻まれた禁断魔法のページを捲っていく。 

「まず、禁断魔法コピペを発動。それから禁断魔法時間ふろしき、最後に禁断魔法オレの体はオレの嫁っと」

 春樹があっさり連続発動した魔用の効果で、平原にずらっと並んだ身体に複製された魂が宿っていく。

『クハハ! コイツは見物だな』

 まず春樹が使ったのは、【禁断魔法コピペ】。

 これで春樹は、ディアブロの中に宿った魂をコピペした。そしてコピーをディアブロの糧として留めておく。ディアブロの糧が減らないようにするためだ。

 次いで、【禁断魔法時間ふろしき】。

 これは朽ちた肉体を健康な状態に復元する魔法のようだ。陣を使った攻撃の際、ディアブロが回収した肉体を平原に並べて、この魔法で一斉に復元したわけである。春樹が言うには二十一世紀の青いロボの便利グッズを参考にしたとか。

 そして最後が、【禁断魔法オレの体はオレの嫁】。

 こちらは、復元された肉体に魂を返すための魔法らしい。


『やるじゃねぇか春樹! かつてこの世の理をここまで破ったバカはいねぇ!』

「だから知るかって。オレには関係ない」

 数千にも届きそうな肉体を前に、春樹はじっと、ただ一人を見つめている。

 ある魂が自分の肉体に辿り着き、スルリと内部に入っていく様を見て、春樹は安堵するように笑みを浮かべた。

 ピクリと、その体が動く。 

 気だるそうに上半身を起こして、周囲をキョロキョロと見渡す。

 それから春樹を見つけて、嬉しそうに笑顔を浮かべた。




今日もありがとうございました!


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