魔法
「彼氏ができますように。彼氏ができますように。彼氏が……」
「ちょっとハルカ、必死すぎ」
ケラケラと楽しそうに笑う声が聞こえてきて、強く瞑っていた目を開けた。
マイさん、あなた、昨日一緒に見たクラスメイトお薦めの動画よりも笑っていますよ?
「そんなに怖い顔でお願いされたら、神様も怯えて言うこと聞いてくれないんじゃないの?」
笑いが止まらないマイを睨みつけながら、後ろで待つ人たちへ順番を譲る。人の波に乗って、石段の右側にあるおみくじへと流れる。
「そりゃ、彼氏持ちのマイには笑い事かもしれないけどさ、もう私には神頼みくらいしか当てがないんだから!」
地域で一番大きな神社であるここの夏まつりは、毎年ローカル局でテレビ放送されるくらいには盛大だ。だから人出だってすごいし、ご利益だってそれなりにあるって信じている。
だけど私の言い分なんて全然興味がないマイは、出てきたおみくじを険しい顔で眺めるだけ。
「あー、末吉だって。末吉って小吉より下? 上?」
不本意そうなマイの言葉を聞き流して、私もおみくじを開いた。
「え、嘘……」
目に飛び込んできた『大吉』の文字。十六年間生きてきて、初めての経験。
「いいなー。これはもしかして、本当に彼氏ができるんじゃない?」
完全に茶化している様子のマイの言葉に、素っ気なく「だといいですねー」と返事をしながらも、心の中は期待感が膨らんでしまう。
早く来い、来い。私の出会い。
「ねえ、ハルカ。私、おみくじ結びたいんだけど」
敬虔という言葉とは無縁のマイにしては意外な発言だと少し驚きつつも、適当な木を探すために本殿に背を向けて歩き出す。
それにしても、思ったより恋人同士が少なくてちょっと気が楽になったな。ほら、あそこのヨーヨー釣りなんて、男ばかりで集まってるし。同い年くらいに見えるけど、誰が一番多く釣れるかなんて、子どもみたいな勝負をしている。
そうだよ。恋人なんていなくても、全然平気。この世に何人、人間がいると思ってるの。みんながみんな、恋人持ちな訳ないもんね。
「ハルカ?」
気分上々で辺りを見回していると、懐かしい声に呼びかけられた。
「ハルカだよね? うわー、久しぶり。全然変わってないじゃん」
浴衣姿で抱きついてきたのは、中学時代に吹奏楽部で一緒だった二つ上のアイカ先輩。嬉しい再会に、思わず私も名前を叫んでしまっていた。
アイカ先輩と私、部活動自体は一年(厳密に言えば半年くらい)しか被ってないけれど、親同士の職場が同じだったことで小学生の頃から親しくしていた。私が吹奏楽部に入ったのは、ほとんどアイカ先輩を追いかけてのことだと言ってもいいくらい。
それでも先輩が中学を卒業してから、会うのはこれが初めてだ。
吹奏楽部に入る前は「アイカちゃん」なんて馴れ馴れしく呼んでいたのに、先輩と後輩の関係性が確立されてからは、以前の姉妹のような間柄にはなれなかったし、同時に距離も少しずつ開いていった。
そして私と違って頭のいい先輩は進学校へ行き、そのまま県外の大学へ入学したと母親から聞いていた。「大学なんて、あんたには夢のまた夢だね」という嫌味付きで。
「先輩、帰ってきていたんですね」
親からどう見られていようと、いくら先輩後輩という隔たりがあろうと、アイカ先輩は私の憧れで大好きなお姉さんであることに変わりはなくて。
だから私の声は、先輩に負けないくらい弾んでいた。
そんな私の勢いが急激に萎んだのは、先輩の後ろから現れた一人の男性を見た瞬間。
「おい、こんな所にいたのかよ。はぐれるぞ」
ため息をつきながらアイカ先輩の肩に手を置いたのは、私より二十センチくらい背が高くて、細身で、でも風に吹かれてもびくともしないような、変な安心感がある人だった。
顔は……、正直めちゃめちゃかっこいい。少し冷めたように見える目とか、美形の塩顔とか。さすが、アイカ先輩だなって思う。と同時に、先輩がこの人を選んだことが意外な気もした。
でも何より思うのは、こんな美男美女カップルを見たら『あー、やっぱり彼氏と来たかったな』なんて本音が抑えきれなくなってしまう、ってこと。
「先輩、デートだったんですね。お邪魔しちゃってすみません」
てへっ、と可愛らしく笑ってみせる。隣でマイが「うわっ」と気持ち悪いと言いたげな声を出したけど、華麗にスルー。
するとアイカ先輩は一瞬キョトンとして、それから大きな声で笑い出した。
「ちょっと、冗談きついよ、ハルカ。こんなやつと付き合うなんて、私がそんなチャレンジャーに見える?」
素敵カップルにしか見えない二人のどこに、チャレンジャーなる要素があるのかは分からなかったけれど、そこは追求しないでおくことにした。
「こいつは高校の同級生。プチ同級会みたいな感じで十人くらい集まってるんだ。そういう訳だから、またね、ハルカ」
「はい。また」
アイカ先輩に手を振る。ちらりと塩顔の同級生さんを盗み見る。やっぱり、かっこいい。
見惚れていると、目が合った。トクン、と私の心臓が跳ねる。けれど同級生さんはすぐにアイカ先輩へ視線を移し、私はそっと息を吐いた。
「ハルカ、あーゆーの好きだよね」
マイがニヤニヤと笑うから、悔しくなって「そんなことないし!」と唇を尖らせる。
でも、本当は図星。
「私のことはいいから、さっさとおみくじ結んできなよ。早く冷たいラムネ、飲みたいんだから」
額から頬へ流れる汗が浴衣に滲む様子を想像すると、一刻も早く冷たい氷水の中に沈んでいるラムネに触れたくなった。そしてそれを飲み干したら、同級生さんのことも一緒に飲み込んで喉の奥へ追いやれるような気がする。
「はい、はい」と気怠そうに返事をしながら、マイがゆっくりとした手つきでおみくじを木の枝に括り付ける。声とは不釣り合いな真剣な眼差ししちゃって、私よりよっぽど神様に怖がられそうじゃない。
それにしても、マイの願い事って、一体どんなことなんだろう。
「これでよし、と。じゃ、冷たいもの、飲みに行こう……か…………」
笑っていたはずのマイの顔が徐々に強ばっていくことに気付いて、「どうしたの?」と聞かずにはいられなかった。
「あ、ううん。ごめん、何でもないよ。それより喉乾いた!」
明らかなカラ元気を見せつけられては、それ以上問いただす訳にもいかない。何も言わずに、一番近くにあるラムネ屋さんを目指すことにする。
マイとふたりでいて、無言になることは珍しかった。
やっぱり、もう一度聞いてみよう。
そう心に決めたとき。
「ねえ、ハルカ。あれって……」
急に陽気さを取り戻した声が聞こえて、私はマイの視線を追った。
「あ……」
思わず私の口からも声が漏れる。
たくさんの人で見え隠れするラムネ屋さんの露店の前にいるのは、ついさっき別れたばかりのアイカ先輩だ。周りには一緒に来たという先輩の友達がいる。
そしてもちろん、同級生さんも。
「なんか、運命感じちゃうねー」
明らかに面白がっている顔を私に向けたマイは、軽い足取りで前へ進んでいく。
心の中では、『そんな訳ないじゃん!』って大声で叫んでいるのに言葉にならなくて、少し俯いたままマイの後をついていった。
「あれ、また会ったね」
私たちに気付いたアイカ先輩が、楽しそうに話しかけてくれる。
周りの友達、特に男性陣が「誰?」とか「可愛いじゃん」とかって、ひそひそ話をしながら私たちに注目しているのが分かる。
うわぁ。同級生さんも、こっち見てる……。
トクトクとペースを速めた心臓を意識したら、私はますます前を見られなくなった。
いや、まあ、みんなマイに注目してるんだろうけど。
友達の贔屓目なしでも、マイは美少女だ。口を開かなければもっとモテるのにな、と思ったのは一回や二回じゃない。
「私の後輩のハルカと、その友達の……」
「マイです」
ニッコリと完璧な笑顔で首を傾げるマイは、猫を被ることに大成功。その可愛さを見た男性陣の空気がざわめいたように感じたのは、気のせいじゃないはずだ。
その証拠に一人の男性が「せっかくだから、一緒に回ろうぜ」と、上擦った声を出しながらマイの手を引いた。
あーあ、可哀想に。マイは彼氏に一途だから、きっと断られる――。
「お邪魔じゃなければ、ぜひ」
「え!?」
自分の耳を疑った。そしてふたりで人混みに消えていく後ろ姿を見送っている自分の目も。
「独り占めはダメだろ! 俺も行く!」
三人の男性がマイたちを追いかけ、アイカ先輩が「ホントにどうしようもないんだから」とため息をついた。
「お友達、大丈夫? まあ、私の知り合いに変なことはしないとは思うけど……。可愛い子見ると、すぐこれなんだから。ごめんね、ハルカ」
アイカ先輩に可愛いって言われるマイは、本当に可愛いんだな、なんて、分かりきっていたことがなぜか今日は胸に刺さる。
一緒にいても、声をかけられるのはいつだってマイ。私はマイのおまけ。
「なあ、アイカ。俺も抜けていい?」
陰鬱な気分の私の近くで、同級生さんの声が響いた。
はあ、同級生さんもマイを追いかけるのか。
人知れず唇を噛んでいると、ふいに手を掴まれた。
「え?」
顔を上げると、そこには同級生さん。
「えっ!?」
状況が飲み込めなくて、整った顔を見上げることしかできない。
同級生さんはアイカ先輩の返事を待たずに、私を引っ張ってラムネ屋さんから離れていく。
「ちょっと、ハルキ! 待ちなさーい!」
アイカ先輩の叫び声が聞こえたけど、私の心の中はそれどころじゃない。
ハルキさん、っていうんだ……。
偶然知った同級生さんの名前と繋がれた手に、ドキドキが止まらない。
初めて会った人が、それもこんなにかっこいい人が、私を気に入ることなんてあり得ないって分かってる。でもあんなに手を合わせたんだもの。神様が私のお願いを叶えてくれたって、期待してもいいかな。
振り返ってもアイカ先輩たちの姿が見えなくなったところで、ハルキさんはようやく私の手を離した。
「突然連れ出しちゃって、悪かったな」
フルフルと首を振った私に、ハルキさんがふっと目を細めた。
うわっ、笑った……!
あまりに色っぽい微笑みに、思わず見惚れてしまう。
「名前、似てるよな、俺たち」
神様! これは、今まで彼氏なしで耐えてきた私へのご褒美ですか!?
ドギマギしながら小さく頷くと、ハルキさんはまた私の手を取った。
「嫌じゃ、ない?」
もう一度フルフルと首を振る。
「可愛いな、おまえ」
嘘だ! こんなの、夢以外にありえない……。
経験値が足りなすぎる私は何も言葉を見つけられなくて、ただ信じられない思いで繋がれた手を見つめるだけ。
空いている片手で、頬をつねってみる。
痛い。
「何してんの、ハルカ」
笑いながら名前を呼ばれて、胃のあたりがキュウと甘く締め付けられた。
「現実だって、確かめたくて……」
ボソボソと答えた私にまたひとつ笑顔を見せてから、ハルキさんは足を止めた。
「なあ、ちょっと絵馬とか書いてみない?」
見かけによらず、信心深いのかな。そんなところも、なんだか素敵だ。
絵馬を受け取ったハルキさんは少し悩んだ後で、おみくじを結んでいたマイと同じくらい真剣な眼差しでペンを走らせる。
私は……。私の今の願いは……。
息を小さく吸って、私も絵馬に文字を書き込んだ。
絵馬かけには私、ハルキさんの順で吊り下げた。偶然なのか意図的なのか、ハルキさんの字は一ミリも見えない。
でも、やっぱり気になる!
絵馬から離れて歩き始めたタイミングで「何を書いたんですか?」と尋ねてみた。
「うーん……」
人差し指で頬を掻く仕草は、今日一番可愛らしい。
「いつか話すよ。うん、話せればいいな、って思う」
明日より先が約束されたみたいで、素直に嬉しかった。だから私は、その『いつか』を待とう。そう思えた。
「そろそろアイカがキレる頃だから、みんなと合流しようか」
ハルキさんはそう言って、スマートフォンを差し出した。
「連絡先、教えて。またすぐ会いたい」
できすぎ。
自分でもそう思うけど、キュンキュンと胸が高鳴ってしかたない。
あー、絵馬にもっと気の利いたこと、書けば良かったな。
なぜか急にそんな後悔が浮かんだ。
**********
「噂によると、ハルカもあの顔面どタイプくんと消えたんだって?」
夏まつりからの帰り道、神社の境内からずいぶんと離れた川辺のベンチで、かき氷を突きながらマイが笑う。
「うん、あのね……」
ハルキさんとの夢のような時間をマイに話さなくちゃ。
そう思ったのに、私よりも先にマイが口を開いた。
「でもやめときな、あの人は。いろいろ聞いちゃったよ、あの人のこと」
こんなに空気は熱を帯びているのに、指先から変な冷たさが体中へ広がっていく。
嫌だ。聞きたくない。でも、聞きたい。
マイは申し訳なさそうに俯いた。
「あの人、あんたの大好きなアイカ先輩に何度も告っては断られてるらしいよ。今日もアイカ先輩目的で来たんだろう、ってみんな言ってた」
寒気は増して、胸はチクチクと痛むのに、自分でも驚くほど冷静だった。
なんだ。やっぱりアイカ先輩が好きだったんだ。
たぶん、ハルキさんを初めて見たときから分かっていたこと。
「ま、アイカ先輩は、あんなモテそうなやつと付き合う気はしないって、相手にもしてなかったらしいけど」
そういえば、昔からアイカ先輩は好きになる人の趣味がちょっと変わっていたような記憶がある。
そっか、そういう意味での『チャレンジャー』。そして、先輩がハルキさんと付き合っていると勘違いしたときの違和感の正体。
「あんたを連れ出したのも、アイカ先輩の気を引きたいからだったんじゃないかな」
うん、それが私にお似合いの役目だ。
「確かに外見はかっこいいと思うけど、そんな話聞いちゃったらオススメできないよ」
バカだな。見た目があまりにタイプだからって、浮かれちゃってさ。
「ねえ、まさかもう本気になってる、なんてことないよね?」
心配そうに私の顔を覗き込んだマイに、力なく笑ってみせる。
「そんな訳ないじゃん」
絶対に上手く笑えていない自信がある。だから、マイは悲しそうに首を傾げた。
「男なんてさ、つくづくどうしようもないよね」
投げやりに吐き出されたその言葉の中に、マイが真剣におみくじを結んだ理由と、アイカ先輩の友達についていった理由が隠れている。そんな気がして、私はマイの言葉を待つ。
「実はさ、彼氏に他に好きな人がいるみたいなんだよね」
「そんな……」
だって、あんなに仲良しだったのに。
「夏休みに入った頃からかな。急に会えないって言われるようになったの。でもやっぱり好きだから、きっと忙しいだけだって、自分に言い聞かせてた。前みたいに戻りたいって願ってたから、そりゃおみくじにも必死になるよ」
今度はマイの笑顔がぎこちない。
「でもね、見ちゃったんだ。おみくじ結んだ後に、知らない女と手を繋いでる彼氏を。ってか、あいつもバカだよね。私が彼氏以外とはおまつり行かないとでも思ってたのかな」
月明かりに照らされて、マイの頬が濡れているのが分かる。
「ありがとう、マイ。そんなにつらいことがあったのに、私のことまで心配してくれて」
私はマイを抱きしめた。やっぱり、持つべきものは友だちだ。こんなときこそ、友だち同士だ。
「ハルカには、私と同じ思いを味わってほしくないから」
肩を震わせるマイの声は、完全な泣き声になっている。
今の今まで、泣きたいのを我慢していたんだろうな。
マイのそういうところ、本当に大好き。
「もっといい男、捕まえてやるー」
ヒックヒックとしゃくり上げながら叫ぶ親友に、「そうだー!」と同じテンションで声を張り上げた。
**********
ふたり同時に失恋したあの夜から一年、今年も夏まつりがやって来た。
あの夜、ハルキさんは連絡をくれた。その次の日も、そのまた次の日も。
だけど私が応えることはなかった。
できれば、アイカ先輩と付き合ってくれればいいな。
そんなことを願いながら、私はハルキさんの連絡先を削除した。
「志望大学に合格できますように、と」
マイの声で、たった一夜の幻から現実へと意識を戻す。
「ほら、ハルカも早く書きなよ」
ペンを渡され、ついさっきのマイの言葉と同じ文字を絵馬に書いた。
「で、どこに吊るすんだっけ?」
そう言って辺りをキョロキョロするマイを連れて、絵馬かけの前に立った。
「うわっ。すごい量だね」
去年はそれどころじゃなくて気が付かなったけれど、確かに圧倒されるほどの数。
「何年前まであるんだろう」
吊り下げられた絵馬を捲り始めたマイの手の先に、見慣れた文字が出てきた。
「それ、去年の……」
私の字だ。
それじゃあ、このひとつ前は……。
マイの手に収まっている絵馬に書かれた文字を、無意識のうちに目で追っていた。
『生まれて初めて一目惚れした一文字違いの名前の彼女と、いつまでも一緒にいられますように』
「えっ……」
息が止まるかと思うほど、心臓がドクンと鳴った。
嘘だ。だってハルキさんはアイカ先輩のことを――。
今見えた文字が信じられなくて立ち尽くす私の前で、マイが一年前の私の絵馬を捲り、私の願い事が姿を現す。
『夢が醒めませんように』
「ふっ、ふ、ふ……」
涙をこぼしながら、なぜか笑えた。
だって、結局私は、アイカ先輩とのことを聞く前から、ハルキさんのことを信じていなかったんだから。
いや、それもちょっと違う。私は自分が信じられなかったのだ。自分なんかに、こんな出会いがあるはずはない。自分なんかに、こんな素敵な人が好意を抱いてくれるはずがない。自分なんかに……。
これじゃあ、たとえあのときアイカ先輩の話を知らなくても、私は今と同じ結末を迎えていたに決まっている。
「どうしたの、ハルカ?」
泣き笑いの私に気付いたマイが、慌てて私の肩を抱いた。
「ちゃんと自分のことを可愛がってあげなきゃいけないな、って思っただけ」
一瞬不思議そうに目を大きくしたマイだったけれど、すぐに大きな笑顔をその可愛らしい顔に戻した。
「それでも落ち込んだときは、私がハルカの分もハルカを可愛がってあげるから安心しな」
思いがけない温かな言葉に、ますます涙があふれる。
「ありがとう」
マイと、そして自分を信じることができなかった私を好きになってくれたハルキさんへ、ありったけの感謝を込めて。
涙を拭った。
私を大切に想ってくれた人がこの世に存在していること、絶対に忘れずにいよう。
そう思えたのは、きっとこの神社がかけた夏の魔法のせい。