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5話「ゴブリン!」



 さて、王道のファンタジー生物と聞かれて真っ先に思い浮かぶ生き物は何だろうか?


 ダンジョン!……と答える人は多分いないだろう。俺でも答えない。

 

 俺が真っ先に思い浮かぶ生き物、それはーーー


『本当にいた、ゴブリン!』


ーーーそう、ゴブリンだ。


 吸収した昆虫達の記憶から近くにゴブリンが生息していることを知り、実際に見るため周囲を探索していたのである。


『それにしても、探索はいいな。やっぱり外を動けた方が楽しい』


 本体であるダンジョン自体は動きまわれず、視界もダンジョンの中までしか移動できない。しかし!外の探索はとある方法で問題なく行えるのだ。


『さてと、次は別の虫に意識を繋げてみるかな。"接続"!』


 その方法とは、『生物生成』によって生み出した生物に意識を接続して操作する事である。

 生み出した生物には自我がなく、俺の命令にただ従って動くだけなのだが、代わりに俺の意識を接続して操作することができる。

 俺はいまその方法を使い、ツノだらけカブトムシに意識を接続してゴブリンの様子を伺っていた。


『凄い、本当に異世界なんだなぁ……』


 黒ずんだ緑色の肌、子供ほどしかない背丈、凶悪な面構え。ファンタジー作品でよく見るゴブリンそのまんまだ。


「ハラ、減った」

「ニンゲン、喰いたい」

「コロス」


 おぉぅ……『言葉ノ王』のおかげか、ゴブリンのバイオレンスな会話まで聞こえる。

 こいつら人間喰うのか。まぁ、そんなこいつらを喰おうとしている俺が言えた義理じゃないけどな。

 

『さてと、それじゃあ倒させてもらおう』


 異世界へ来た実感を噛み締めながら、ゴブリンを殲滅するとする。

 作戦は単純だ。

 土から引っこ抜いたオールフルフラワーをツノだらけカブトムシの体で運び、ゴブリンの近くで毒を振りまくだけである。


『ここら辺で大丈夫かな』


 たむろしている3匹のゴブリンのもとへ、運んできたオールフルフラワーを落とす。


「ギ?」


 ゴブリンの1匹が突然落ちてきた花に驚いているが、もう遅い。

 カブトムシ状態の俺はその場から離脱し、オールフルフラワーへ命令を下す。


『やれっ、オールフルフラワー』


 俺の命令に従い、オールフルフラワーは毒を散布。3匹のゴブリンは一瞬にして息絶えた。


『ごめんな。世の中弱肉強食なんだ』


 カブトムシの体で黙祷を捧げつつ、心の中でそう呟く。

 はやくレベルを上げなければ、身動きの取れない俺などいつ殺されてもおかしくないのだ。だからこそ、他の生き物を倒して経験値を稼ぎ、もっと立派なダンジョンにならなければいけない。


『さてと、ここからが大変だな……』


 ここからは少しグロいので、カブトムシとの接続は解除して命令を下しながら行う。

 事前に生成しておいたアリやらコバエやらバッタなどなどの昆虫部隊を総動員し、ゴブリンの死体を細かく刻みながら迷宮の中へ少しずつ運んでいく。


『がんばれ昆虫達!』


 傍に落ちているオールフルフラワーに意識を接続し、昆虫達を応援する。

 それから数時間後。


『やっと、回収できた』


 昆虫達の働きによってゴブリンの死体の半分くらいを回収できた。良かった。

 途中、野生の大型昆虫や鳥の襲撃を受けて昆虫部隊の数が減ったりゴブリンの死体を勝手に食べられてしまった時は焦ったが、無事に回収できて本当に良かった。


『とりあえず、これでゴブリンを理解できたな!』


 ゴブリンの体の半分を吸収すると、ゴブリンの生体情報を理解することができたのである。これでゴブリンを生成できる!

 今までは昆虫の死骸全てを吸収していたため分からなかったが、体の半分を吸収できればその生物を作り出すことが出来るようになるらしい。


『さてと、早速ゴブリンを生み出すとするかな。いでよゴブリン!』


 そう呟くと、体力的なものがごっそり削られる感覚に襲われた。おそらく魔力が減っているのだろう。昆虫達はどれだけ作ってもそんな感覚にはならなかったのだが、ゴブリンは別らしい。

 この感じだと1日に1体が限界かもしれない。やはり、強力な生物を作り出すには制限があるようだ。


『おっ、出てきた』


 しばらく待っていると、壁の中からモリモリとゴブリンが這い出てきた。壁の穴はすぐに塞がり、元どおりの状態だ。ちなみに、ゴブリンは素っ裸だ。


『気を取り直して、さっそくステータスを見てみるかな』


 ゴブリンをよくよく観察するとステータスが視界に浮かび上がる。


種族名:ゴブリン

種族能:繁殖

レベル:1

スキル

『悪食』


 レベル1か、どれくらいの強さなのか全然わからない。種族能の『繁殖』は、どんな種族との間にもゴブリンを産ませるという能力らしい。スキルの『悪食』は何を食べてもお腹を壊さないという能力のようだ。

 ダンジョンで生まれた生物には繁殖能力が無く食事の必要も無いのでどちらも意味のない能力だな。ちなみに、意識を接続すれば食事も楽しめるし生殖行為も行えるようになるが、ゴブリンの体では遠慮しておきたい。


「ニンゲン、コロス」


 命令に従うか確認するため、『何か話してみろ』と命令したのだが、第一声がなかなかバイオレンスだ。

 とりあえず、これで1日1体ゴブリンを生み出せる。

 さっそく生み出したゴブリンに未回収だったゴブリンの死体を運んでくるよう命令し、倒したゴブリンは残さず全て吸収した。


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