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4話「オールフルフラワー、エグいな……」



 とある国の魔術学園では、植物に関する講義が行われていた。


「この性質から、『フルフラワー』はA級の万能ポーションの材料となる植物なのです。加工せずとも、その花から滴る蜜にはB級の万能ポーションに匹敵する効果があると言われています」


 講師の言葉を忘れないよう、生徒たちは必至にメモを取る。


「そんな驚異的効果を持つフルフラワーですが、栽培ができないという大きな欠点が存在します。自生している数も少ない上に栽培ができないからこそ、A級の万能ポーションは市場に出回っている数が驚くほど少ない……というのが常識ですが、実はフルフラワーの採取量が少ない理由はもう1つあります。それが何かわかる人はいますか?」

「はい!」


 講師の質問に、1人の生徒が答える。


「フルフラワーは、あらゆる状態異常を起こす毒を放つからです」

「正解です、よく勉強していますね。フルフラワーは周囲の環境や栄養状態に合わせて種類の異なる揮発性の毒を放ちます。フルフラワーを偶然見つけた冒険者がそれを知らずに状態異常を引き起こし、死に至る場合があるため採取量がとても少ないのです」


 講師の言葉に生徒たちは聞き入る。そんな中、1人の生徒が質問を飛ばした。


「先生!フルフラワーの上位種である『オールフルフラワー』はどういった花なんですか?」

「オールフルフラワーですか……」


 講師は生徒の質問に答え始めた。


「オールフルフラワーは、単純にフルフラワーの上位の効果を持っています。その蜜はA級の万能ポーションに、加工すれば伝承上の存在であるS級万能ポーションとなります」


 講師の話を聞いた生徒たちは伝承上のS級万能ポーションに思いを馳せ、感嘆の声を漏らす。


「ですが、その毒もフルフラワーより遥かに強力なものとなっています。あらゆる耐性スキルを有した龍種でさえ昏倒させたという記録が残っているほどです。道端に生えていたら、我々人族などひとたまりもありませんね」


 続けざまに放たれた講師の言葉に、教室は一瞬にして静まり返った。


「まぁ、オールフルフラワーの存在は千年以上確認されていないので大丈夫ですけどね。それでは次のページを開いてください」


 安心する生徒たちを見やりながら、講師は講義を続けるのだった。




 



 ダンジョンに転生してから数日、狩りは滞りなく順調だった。というのもーーー


『オールフルフラワー、エグいな……』


ーーーライフィア様が与えてくださったオールフルフラワーの効力が凄すぎるのだ。

 オールフルフラワーの生体情報から強力な毒を放てることは理解していたが、実際に目の当たりにするととんでもない威力である。

 洞窟に入ってくる昆虫が一瞬にして息絶えるのだ。どんな殺虫剤よりも強力だ。

 さらに、毒は大気中なら数分で効力を失うため環境にも優しい。


『これで昆虫部隊が作れるな』


 前世でも見た事のあるコバエやアリンコから、この世界特有と思われるツノだらけのカブトムシや6本の足全部が強靭なバッタまで、様々な昆虫の生体情報を手に入れた。

 これで『生物生成』によって昆虫も作り出すことができるのだが、今のところオールフルフラワーしか作っていない。

 なぜなら、昆虫を作り出してもオールフルフラワーの毒を浴びると死んでしまうのだ。

 ダンジョン内で生まれた生物は動植物関係なく俺の命令に従うため、殺しあったりはしない。だが、互いの攻撃には巻き込まれる。

 そのため、オールフルフラワーの周囲にほかの生き物を住まわせることは危険なのである。


『お陰でダンジョン内はお花畑だ』


 ちなみに、ダンジョン内の生物は死んでも死体が残らない。魔物は魔石が残り、死んだ生物の希少部位が稀にアイテムとして残る場合もあるが、基本的に死体は消滅するのだ。

 さらに、ダンジョン内で生まれた生物はダンジョンの外に出ると1日で消えてしまう。中にいれば食事の必要もなく寿命も無いのだが、外では1日しか活動できないのである。

 1日以内にダンジョン内へ戻ってこればセーフだ。


『それにしても、全然レベル上がらないな……』


 この世界では貴重な経験をすると経験値というエネルギーを獲得でき、それを蓄える事で自身のレベルを上げることができる。

 新しい知識を得たり貴重な体験をしても経験値を得られるが、強い生物を倒した方が経験値は高い。

 その上、俺は吸収した生物の生態情報や記憶といった知識を得られるため、それに伴う経験値も得られる。生物を倒して吸収した方が効率が良いのだ。


『でも、昆虫相手じゃいくら倒しても経験値が少ないし……そもそも、ダンジョンって言う生物自体がレベルアップに必要な経験値を多く必要な生物なのかも』


 オールフルフラワーのポイズンアタックは強力だが、毒の効かない動物や魔物が攻め込んできたらひとたまりもない。

 色々と対策を考えた方がいいかもしれないな……。


『よし!迷宮の構造を変えつつ、もっと大きな獲物を狙うとしよう』


 迷宮内は俺の意思で構造を変えられる。今は花がいっぱい咲いているただの細長い洞窟だが、昆虫とオールフルフラワーが共存できるように小部屋をいくつか作りつつ、ダンジョンコアを守るために入り組んだ構造にしよう。

 それと戦力アップ。この2つが当面の課題だな。

 

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