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35話「想像構成」




「カイよ。頼まれていた設計図ができたぞ」

「おお!もう出来たのか、仕事早いな」


 宴の翌日。昨晩宴の席でディエゴに頼んでおいた設計図がもう出来上がったらしい。

 まだ半日も経っていないのだが、仕事早過ぎないか?


「それで問題はなさそうか?」

「これを半日で、すごいな。全然問題ないよ」


 ディエゴに頼んでいたのは家の設計図だ。

 すでに家は何軒も建てているのでノウハウはあるのだが、魔物達の力を使っても家の建築はそれなりに時間がかかる。普通の家で5日くらいだ。

 そのため、プレハブ住宅のように決まったパーツを作り、『道具生成』で量産して組み上げれば迅速に家が建てられると思い、設計をお願いしていたのである。


「早速一軒作ってみるか。上手く出来たら量産して次々建てていこう」

「そうじゃな、新しい仲間の家もさっさと建ててやらんといけねぇ」


 今回増えた村人達のほとんどは村長の家にある空き部屋に男女で分かれて住んでいる。例外的に、若い男勢は外に張ってある仮説テントで、ヒマリとシズカはミーナの家に泊まっているようだ。

 ちなみに、ミーナの家にはレオナとミミもよくお泊まりに行くので毎晩楽しげな女子会が開かれているらしい。


「まずは木の加工じゃな。ホーンベアを呼べるか?」

「大丈夫、もう呼んであるぞ。南側の木々を切り開いて材料にしよう」

「そうじゃな、見晴らしを良くするためにも周辺の木はある程度切っておいたほうがいいじゃろ」

「あ、お早うございます!何してるんですか?」

「ヒマリか、おはよう。今からみんなの家を建てようと思ってるんだ」


 ディエゴと作業を始めようとしていたら、何か仕事が無いかと散策していたヒマリに出会った。

 シズカは水属性魔術が使えるため、ワンドと一緒に村の端に作ってある貯水場へ水を溜めてくれているらしく、暇なのだそうだ。


「家づくりですか、それなら私も手伝います。物作りなら私のスキルが役立つと思うので」


 ヒマリのスキルか、少し気になるな。


「そのスキル見せてもらってもいいか?」

「いいですよ。『想像構成』」


 ヒマリが地面に手をかざすと土からガラスのチェス盤と駒が出来上がった。何だこれ!凄っ!


「私のスキル『想像構成』は、周囲にある物質をイメージ通りの形に加工できるんです」


 つまり、材料があれば想像通りの物が創り出せるという事か。

 本気を出せば巨大な城壁を作り出したり、相手の武器や防具を分解して破壊したりもできるそうだ。何このスキル、便利すぎないか?


「使いこなせればもっと凄いスキルなんですけど、私の想像力が足りなくて……複数の素材を組み合わせたり、複雑な構造のものを作ったりするのはまだ難しいんです」


 野営の時にはよくこのスキルを使ってクラスメイト達の家を作っていたらしい。だが、スキル発動中にイメージが崩れると歪な形になったり立て付けが悪くなったりしていたそうだ。

 戦闘にもサポートにも使える強力なスキルだが、使いこなすのはなかなか難しいみたいだな。


「カイの物を複製するスキルもとんでもないが、嬢ちゃんのスキルも相当だな!この設計図通りに正確に木材を加工できるか?」

「たぶん、できると思います。あ、窓ガラスも作れますよ」

「そりゃ凄いな。建築が捗るわい」

「本当に良いスキルだな。ヒマリが作った部品を俺が複製して魔物に組み立ててもらえば、新しい住人分の家もすぐ建つんじゃないか?」

「すぐ建つなんてもんじゃないぞ。まったく、ちょっと待っとれ、すぐに設計図を書き直してくるわい」


 すぐにディエゴが設計図を書き直して持ってきた。最初の設計図よりもだいぶ複雑だ。部屋数も増えて調理場やトイレもあり、窓もガラスになっている。


「どうじゃ?いけそうか?」

「パーツは多いですけど、一つ一つは単純な形なので素材があれば作れると思います」


 ヒマリの協力のもと、早速家づくりが始まった。

 試しに一軒分のパーツを作り組み上げ、調整しながら再度組み直す。そうして完成した家をもう一度バラし『道具生成』で複製、仮組みの家を参考に複製したパーツでも家を建ててズレがないかを確認する。


「カイ殿おはようございます!って、いつのまにか家が出来てる!」

「カイ殿、おはようございます。これは、とてつもない建築能力ですね」

「セレブロにシルバか、おはよう」


 早朝から狩りに出かけていたセレブロとシルバを筆頭に、銀狼族の面々が驚愕の表情を浮かべながら建築現場へとやってきた。ってか宴の翌朝から狩りって、凄い体力だな。


「あ、これは銀狼族達の家になるから、どの家に住むかは話し合っておいてくれ」

「「「「えっ?」」」」


 銀狼族の面々は驚いている。聞くと、昨日急遽用意した仮説テントが与えられた家だと思っていたらしい。

 そんな訳ないだろ。風呂は無いけど、キッチンとトイレ付きの家くらい用意しますとも。


「こんな立派な家を持てるなんて……ううっ、カイ様、一生お仕えします!」

「ありがとうございます、カイ様」

「ジル、大きくなったらカイ様をしっかりお守りするのよ」

「うん!カイ様好きー!」


 銀狼族のみんなからめちゃくちゃ感謝された。ディエゴとヒマリも感謝の言葉を受けて照れ臭そうにしている。


「カイ様、我々にも手伝わせてください。何か仕事は無いでしょうか?」

「ありがとう。そしたら、魔物達と地盤の整備を手伝ってもらってもいいか?魔物の仕事は大雑把だから、近くで指示出しをしてもらえるとありがたい」

「お任せください。我々も拠点設営で建築の経験はありますので、お役に立てると思います」


 シルバ達の手伝いもあり、作業は順調に進んだ。というか、順調すぎる。

 俺の作れる魔物で一番筋力があるのはホーンベアだが、シルバはその倍以上の筋力があるし動きは比較にならないほど早い。

 さらに、アルゲンというゴリマッチョ銀狼族は力も強く手先も器用なので、とても作業が捗る。


「何じゃこの素材は!?」

「コンクリートです。私達の居た国ではこれを基盤にして家を建てていたんです」

「なるほど、初めは液体だが固まると岩のようになる素材か。少し待っとれ、基礎部分の設計図を書き直す!」


 さらに、ヒマリがコンクリートと鉄骨を作れる事が分かり、家の基礎工事は鉄筋コンクリートで作る事が決定。

 針金やバールなど、工事に必要な道具もディエゴが設計しヒマリに作ってもらい、相当大掛かりな工事となってしまった。


「あ、あの、地盤整備なら私の土魔術も使えると思います」

「シズカは『魔導師』っていうスキルを持ってて、全ての属性の上級魔術を使えるんです」

「採用じゃ!」


 さらにさらに、シズカも途中から魔術を使って工事に参加。作業効率は格段に上がり、ついでとばかりに先に建てていた家も全て作り直した。


「結局、10日以上かかったな……」

「こんなに『想像構成』使ったの初めてです、いい経験になりましたけど、頭が重い……」

「で、でも、みんなでする作業って楽しかったです!」

「がっはっは!嬢ちゃんは物作りの才能があるのぅ。にしても、コンクリートとやらの扱いと排水管とやらの設置に時間がかかってしまったが、我ながらいい仕事ができたわい!」


 少し疲れ気味のヒマリと達成感で楽しそうなシズカ、満足げなディエゴの3人と共に村を見渡す。うん、見る角度によっては日本の住宅街とあまり変わらない光景だ。

 この短期間に浅い建築の知識でここまでできるとは、強力なスキルと魔術と圧倒的労働力とディエゴの経験値が合わさると、こんな事になるんだな。


「こんな立派な家、ゼネラルのお貴族様も持ってないですよ」

「す、凄いっす。こ、ここが俺達の家になるんですか?」

「ま、窓がガラスでできてる!?お城!?」


 村人も銀狼族も、みんな新しい家に大興奮なようだ。良かった良かった。

 ちなみに、布団や家具もヒマリに作ってもらったものを俺が複製したので、相当良いものになっている。

 

「カイさん、本当にありがとうございます。こんな生活ができるようになるなんて、思っても見ませんでした」

「カイ様、銀狼族を代表して感謝を。本当にありがとうございます!」


 レオンとシルバに改めてそう感謝された。村のみんなもディエゴとヒマリとシズカに改めて感謝を伝えている。

 みんな喜んでくれているようで本当に良かった。


「さてと、次は水道設備と村を囲う塀じゃ!」

「マジか……」

「わ、わかりました」

「えっ、が、頑張ります……!」


 ディエゴの言葉に若干頬を引きつらせながら、俺とヒマリとシズカは頷いた。

 とりあえず、次の工事はヒマリとシズカの魔力が回復してからという事になった。



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― 新着の感想 ―
[良い点] 発展していく様は楽しいですね。危険地帯での塀となると高くしないと駄目だけど、目立って他の勢力に発見されてしまいそうですね。魔法有りな世界ならば桁外れな幅と深さの堀が作れそう。自然破壊が更に…
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