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31話「完全魅了!



「さぁ下僕くん、勇者と協力してあいつらを倒しなさい!」

「え、嫌ですけど……」

「!?」


 俺が拒否したことに驚いているようだが、素直に従うと思っていた方が驚きだ。何でこの魔王の命令を聞かなきゃならないんだ。意味がわからない。


「ふふっ、油断したわ。抵抗力が異常に強いみたいね。でもこれなら、えいっ」

「うわっ!」


 いきなりほっぺにキスされた。前世でもされたこと無いのに!


「さあ!あいつらを倒しなさい!」

「え、嫌ですけど……」

「!?」


 さっきからなんなんだこの人。そしてなんだこのやり取り。魔王がどれだけ偉いかは知らないが、素直に従うわけないだろうが。


「カイさん、大丈夫なんですか?」

「全然大丈夫。まだ何もされてないよ」


 レオンもシルバも心配そうな目でこちらを見てくるが、体に全く異常はない。

 っていうか、これって大チャンスじゃないか?


「『糸吐き』!『硬化粘液』!」

「きゃっ!」


 糸と粘液で魔王をガチガチに固めて拘束した。戦闘力がこの体と同程度だとすれば、絶対に抜け出せないはずだ。


「勇者、動くな!魔王がどうなってもいいのか!」


 魔王人質にして勇者脅すとか凄い状況だが、思惑通り勇者の動きが止まった。


「レオン、シルバ、早く影の中へ」


 レオンとシルバを先に行かせ、勇者と充分距離をとってから城の外にある召喚魔術のスクロールを魔物を介して発動する。


「ぜ、ぜっっったいに許さないわ!次会ったら絶対に服従させてやるんだから!」

「もう会わないように気をつけるよ」


 そう言い残し、魔王を置き去りにして城の外へと召喚された。


「よし、みんな撤退だ!」


 回収できそうな魔物は出来る限り回収し、また首都へいつでも来れるよう羽虫や小鳥を何匹かと召喚魔術のスクロールも何枚か隠しておく。


「回収できたのは100体くらいか、随分減らされたな……」


 街には千体以上の魔物を放ったのだが、そのほとんどが倒されたようだ。

 ゴブリンやホーンウルフといった低級の魔物ばかりだったので仕方ないか。街にいる冒険者や兵士達の大まかな強さも測れたし、今回の騒動で重傷者や死者も出ていないようなので良しとしよう。

 最後の魔物が影に入るのを見届け、俺も静かに影の中へと沈んでいった。





「一体……あいつは何者なの?」


 王城の中で最も堅固に造られた避難部屋。そこに設置された椅子に座りながら、ミスティは思案に耽っていた。


「男なのに私の『完全魅了(オッドチャーム)』が効かないなんて……状態異常に抵抗できるスキル?でも、私のスキルは並みの耐性じゃ抵抗できないはず。それこそ勇者や英雄でも無理だわ」


 部屋の入り口を守るようにして立つ3人の勇者を見やりながら、ミスティはそう呟いた。

 彼女はサキュバスの最上位個体であり、異性を従順な下僕にできる『完全魅了オッドチャーム』というスキルを有している。

 通常であれば目を合わせたり言葉を交わすだけで、対象をスキルの支配下に置くことができるが、高い耐性やレベル差のある相手に対しては親密な行動をとる必要がある。

 だが、その条件さえ満たしてしまえばどれほど格上の相手であっても支配下に置くことができる強力なスキルであった。


「この私が頬にキスまでしてあげたのに支配できなかったなんて……」


 先ほどの出来事を思い返し、ミスティは戸惑いと苛立ちを抑えきれずにいた。


「英雄でも龍種でも、私がキスすればすぐに下僕にできた……勇者なんて声をかけるだけで落とせた。なのに、なんなのよあいつは!」


 親密な行動。目を合わせる、声を掛ける、相手に触れる。そして、頬に口付けを行う。頬に口付けを行なっても支配できない相手はミスティにとってはじめての経験だったのである。

 そんな中、ミスティのもとへの宰相が訪れた。


「ミスティ様、今回の襲撃の経路が判明いたしました」

「どこよ。地下?それとも空?」

「いえ、魔物が出現したと思われる地点に残された魔力の痕跡から、大規模転移による侵入と思われます」

「は?大規模転移?」

「はい。恐らく、王都の壁の外側に待機させていた大量の魔物を転移魔術で王都内へ運んだものと思われます」


 ミスティは驚愕に目を見開く。

 大規模転移。それがどれほど莫大な魔力と技術が必要かは魔術知識に疎いミスティでも理解できたためだ。


「その上、転移させられた魔物は本物ではなく、全て召喚された魔物ばかりでした。大勢の魔術師だけでなく、それなりの実力を持った大勢のサモンテイマーも今回の作戦に関わっていると考えられます」

「それほど大規模な作戦なんて……」

「ええ、実行できる国は限られるでしょう。世界屈指の魔術学院を有する大国『ジーニアス』。勇者召喚に成功したスキル至上主義国家『ナロウ』。三大迷宮の1つを保有し、冒険者の聖地とされる迷宮都市『ラビリンス』。今のところは、この3ヶ所が有力だと思われます」

「……面倒ね」


 扉の前で待機する勇者を見ながら、ミスティはため息をつく。


「ジーニアスからは希少な魔道具を貢がせたし、ナロウからは勇者を誘惑したし、ラビリンスからも優秀な冒険者を何人か誘惑しちゃってるし……どこからも恨まれてるわね。はーあ、面倒くさっ。とりあえずこの場所の安全は確保できてるの?」

「王都を囲うように転移阻害の結界を張りました。これで今回のような襲撃は防げるはずです。他の主要都市にも随時同じ結界を展開していくよう手配はしてあります」


 面倒な事態に機嫌を悪くしていたミスティだったが、宰相の手際の良さに満足げな表情を浮かべた。


「私のコレクションがいくつか盗られちゃったけど、まぁいいわ。どうせすぐに集められるし。それよりも、これほどの魔物を召喚して転移させられるサモナーと魔術師の集団の方が気になるわね。それに、私に無礼を働いた白髪の少年……」


 宝物庫の宝を盗み出し、最後は転移による逃走を成功させた白髪の少年を思い浮かべながら、ミスティは不敵な笑みを浮かべた。


「必ず私の虜にして、死ぬまで服従させてやるわ!」


 ミスティはそう決意しながら、安全が確保された自身の寝室へと戻るのだった。

 

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