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28話「千を超える魔物」



「カイさーん!魔物獲ってきましたー!」

「こっちも大量なのです!」

「ありがとうみんな。村の食料にしない分は全部洞窟の前に運んで置いてくれ」


 村のみんなや銀狼族にも協力してもらい、村周辺の魔物を連日狩り続けていた。そして食料にしない分の魔物や食べられない部位は、魔物の強化に使うと説明してすべて吸収させてもらい、俺自身の経験値と魔力にしている。


「想像していた以上に効率がいいな。スキルの回数が格段に増えた」


 生物の死体や魔物の魔石を吸収すれば魔力が回復するため、『生物生成』のスキルが普段よりも多く使えるのだ。お陰で、ダンジョン内はゴブリンとホーンウルフとクロウクローで溢れかえっている。


「我々が運んでおきましょう」

「ありがとうございます!」

「ありがとうなのです!」


 銀狼族はいつのまにか村に馴染んでいた。

 初めは急に襲ってきたり逃げ出したりしないかと少し警戒していたが、杞憂だったようだ。


「銀狼族は約束や誓いを絶対守るんですよ。リーダーのシルバが救出を手伝うと約束したんで、少なくとも救出作戦が終わるまではこちらに協力してくれると思いますぜ」

「なるほど」


 そして銀狼族は恩も絶対に忘れない義理堅い種族だともレオンが教えてくれた。


 そういえば、レオンは銀狼族のリーダーであるシルバと気が合うようで、最近は2人でよく談笑しているのを見かける。差別や迫害を受けてきた境遇が似ているためか、村のみんなと銀狼族も仲がいいようだ。

 作戦が終わったとしても彼らが村人たちを襲うことはなさそうだな。


「さてと、本体のレベルも上がったし、クロウクローも首都に到着した。準備は完了だな」


 忙しなく準備を進めているうちに予定していた10日が経った。

 この10日間で本体のレベルも1つ上がっている。お陰でダンジョン内の広さは東京ドーム4個分くらいだ。

 作戦に備えて生成した尋常じゃない数のゴブリンとホーンウルフとクロウクローも余裕で収容できている。


「シルバ、セレブロ、プラタ、来てくれ」


 銀狼族の中でも最も強い3人を呼んだ。ゼネラル首都や城の内部構造は分からないので、案内役としてこの3人にも救出作戦を手伝ってもらうのだ。


「予定通り救出作戦を実行する。段取りは大丈夫か?」

「大丈夫ですけど、本当にあんなことが可能なんですか?」

「申し訳ありませんが、私もそんな作戦が実行できるなんて信じられません」

「大丈夫だ。実行はできる」


 セレブロとプラタが心配そうに声をかけてきたが、自信を持ってそう答えた。

 実行はできる。成功するかはわからないけどな!


「我々を助ける理由などないのにカイ殿は協力してくれるのだ、文句を言うでない」

「いえ、文句ではないのですが……」

「本当に可能なのでしょうか?そんな技ができるサモンテイマーなんて聞いたこともありません」


 作戦の概要は何度も説明したのだが、規模がぶっ飛びすぎて本当に実行できるのか信じられないようだ。

 ちなみに、プラタがサモンテイマーと話していたが、現在の俺の職業は『サモンテイマー』というテイマーの上位職であるということになっている。

 銀狼族との戦闘で魔物の死体が消えて魔石が残るという現象を見られたのだが、『サモンテイマー』という職業は魔石を媒介にして魔物を作り出す術を使えるらしく、勝手にそれだと勘違いしてくれたので話を合わせているのだ。


「本当にできるかどうかは今から見せるよ。3人は洞窟の部屋に待機しててくれ」

「分かりました」

「了解です」


 俺の指示に従いながらも、セレブロとプラタは疑わしげな表情のままダンジョン内へと向かっていった。


「カイ殿。もしもこの作戦が失敗した場合は、私が殿を努めます」

「殿って、みんなを逃がすために囮になるって事か?」

「はい。お願いばかりで申し訳ないのですが、もしもの時はここにいる我が同胞達のこと、よろしくお願い致します」


 シルバの目は本気だった。


「わかった。そうはならないように全力を尽くすよ」


 シルバの覚悟に応えるためにも必ず成功させなければならないな。

 俺は気を引き締めて、ゼネラルの首都で待機しているクロウクローに魔力を注ぎ込んだ。







「ミスティー様!王都内に魔物が出現しました!」

「は?何ですって?」


 深夜。都市内に鳴り響く警告音で目覚めたミスティーは宰相の報告を聞き苛立ちを覚えていた。


「どうせ捕獲していた魔物が逃げ出したのでしょう。さっさと捕まえなさい」

「いえ、どうやら違うようです。冒険者ギルドや商業ギルドからはそういった報告がないため、おそらく外部からの侵入と思われます」

「チッ、周辺国のバカどもが、面倒な事をしてくれるわね」


 ゼネラルは強引な領土戦争を隣国へ何度も仕掛けていたため、周辺国家から嫌がらせのような妨害行為を受けることが多々あった。

 寝間着のまま宰相の話を聞いていたミスティはすぐにその事だと思い、怒りに身を震わせた。


「私の眠りを妨げるなんて絶対に許さないわ。必ずどこの国か突き止めて属国にしてやる。宰相!魔物の1匹や2匹さっさと始末しなさい!」

「それが、出現した数は1匹や2匹ではないのです。正確な数は不明ですが、総数は1000体を超えており今もなお増えているとのことでした」

「1000体!?」


 驚愕するミスティをよそに、宰相の報告は続く。


「幸いな事に、確認されている魔物はゴブリンやホーンウルフ、スライムやクロウクローといった低級の魔物ばかりです。現在は動ける兵士と冒険者総出で魔物を討伐しながら侵入経路を探っているところです」

「どうせ壁に穴でも空けたのでしょ。門番と壁の強化を担当した魔術師達には後できつい罰を与えないといけないわね」


 千を超える魔物を転移魔術で呼び出すには莫大な魔力を必要とする。それこそ数百人を超える高位の術師が必要となる。現実的には不可能だ。

 そのため、ミスティは首都を囲う巨大な壁に経路を作りそこから魔物を侵入させているのだと考えた。


「魔物はどこら辺から出現しているの?」

「それが……壁付近や商店街や住宅街、都市内の至る所から魔物が出現しているようです」

「はぁ!?」


 ミスティは都市の地下からの侵入を真っ先に疑ったがすぐにその考えを改めた。外敵による地下からの侵入を防ぐため、高レベルの魔術師達が定期的に地下へ向けて探知魔術を発動しているのである。


「チッ、ほんと面倒ね。ヒロシとケンジを向かわせなさい。すぐにこの事態を終息させるのよ」

「しかし、それでは陛下の護衛が……」

「私の護衛はショウタだけで充分よ。早くしなさい!」

「はっ!」


 ミスティの命令に従い、宰相は事態の終息へ向けてすぐさま動き出す。


 その様子を盗み見ていた1匹のコバエの存在に、2人は最後まで気づくことはなかった。




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