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25話「魔力操作」



「『召喚』」


 スクロールに魔力を流し込むと、遠くに待機させていたホーンベアが目の前に出現した。


「やった!成功だ!」

「まさか、1日で習得できるなんて……」


 ワンドの指導を受けた結果、『魔力操作』のスキルはわずか1日で習得する事が出来た。

 というより、『生物生成』や『道具生成』のスキルを使用する際に魔力の流れは感じていたため、ほぼ習得できているような状態だったらしい。

 ちなみに習得したのは本体であるダンジョンのほうだ。神人ボディは『魔力操作』のスキルを持っていないが、『言葉ノ王』と同じで本体であるダンジョンが習得していればその効果を得られるらしい。


「何か感じる気がします。モヤモヤしてる感じ、もう少しで何か掴めそうです……」

「私はまだ無理なのです。でも、魔道具技師は魔力操作のスキルが必須だと聞いた事があるので頑張るのです」


 途中からレオナとミーナも訓練に混ざってきたので一緒に練習していたのだが、2人は難航しているみたいだ。

 それでも、レオナはもう少しで習得できそうだな。才能があるのかもしれない。

 ミーナはまだ時間がかかりそうだが、最近になって魔道具技師になるという夢ができたので絶対に習得したいらしい。魔道具には俺も興味があるので頑張って習得してもらいたいな。


「……ん?」


 周辺を警備させていたクロウクローが異常を知らせてきた。森の東側から獣人の一団が接近してきているようだ。

 全員銀髪で狼みたいな耳をしている。レオン達の知り合いかな?


「銀髪で狼みたいな耳をした獣人に知り合いとかいる?」

「いえ、知りませんね。少なくとも、森の外側に住んでいた時はそんな種族と交流した事はないです」

「私も知らないのです」

「僕も知りませんね」


 レオナもミーナもワンドも知らないらしい。という事は、敵の可能性があるな。

 何かを探すようにしてこちらへ向かってきているため、ここが見つかるまではあと1日はかかるはずだ。


「まだ距離は遠いけど、銀髪の獣人達がここに向かってきてるみたいだ。レオンに報告してくるよ」

「私も行きます」

「私も行くのです!」

「え、じゃあ僕も」


 全員の返事を聞きながら、レオナ達と共にレオンと村長がいつも居る集会所のような建物へと向かった。







「シルバ隊長……」

「あぁ、気づいている。どうやら囲まれているな」


 周囲の異常にいち早く気がついたセレブロとシルバは、すぐさま臨戦態勢へと移行する。

 その2人の様子に気づいた他の銀狼族も次々と臨戦態勢へ移行した。


(この匂いは……ゴブリンにホーンウルフ、ホーンベアにグンソウまで居るのか。種族の違う魔物同士が群れをなしている。一体どういう事だ?)


 シルバは冷静に周囲の状況を分析しながら疑問を感じていた。

 通常であれば種族の違う魔物同士が群れを作る事はない。だが、そんな魔物達が群れを形成しているだけでなく、統率のとれた行動までとっている。


(数は約100体か。魔物のランクは低いが、囮の可能性が高いな。背後に高ランクの魔物が別働隊として控えている可能性もある。負けはしないだろうが、できれば戦闘は避けたいところだ)


 そんなことを考えていたシルバの前に、一体のゴブリンが白旗を掲げながら近づいてきた。


「待ってクレ、敵意はナイ。話をシタイ」

「「「「!?」」」」

「ゴブリンが、言葉を話しただと?」


 驚く銀狼族をよそに、ゴブリンは言葉を続ける。


「あなた方はどこからキタ?目的はナンダ?」

「ふむ、我々は森の東にある連合国家ゼネラルから来た。目的はこの森の探索だ」

「ナルホド。何故この森を探索シテイル?」

「待ってくれ。その問いに答える前に、こちらからも質問をしたい」


 ゴブリンの質問に答えたあと、シルバはそう提案した。

 敵の戦力が不明な状況では目の前のゴブリンを刺激しないようにする事が最善ではあるが、一方的に情報を引き出されるのも悪手である。

 そのため、交互に質問を繰り出せるようシルバは交渉を持ちかけたのであった。

 

「ワカッタ。そちらの質問にも答エヨウ」

「まず、何故普通のゴブリンが我々の言葉を話せる?お前は何者だ?」

「本体は別の場所ダ。スキルの力でゴブリンを介して話してイル。このゴブリンはオレが操っているダケダ、オレ自身ではナイ」

「なるほど、そのようなスキルがあるのか……」

「次はコチラの質問に答エテもらオウ」

「この森を探索する理由だったな。それは我々が所属する国の王の命令によるものだ。何らかの異常が森に起きている可能性があると聞いたが、詳しい理由は知らない」

「そうカ」


 交互に質問を繰り返していく中で、シルバはゴブリンを操る存在への警戒を強めていた。


(周囲を取り囲む魔物の統率が乱れる気配はない。これだけの種類の魔物を完全に掌握できるほどの存在か……恐ろしい相手だな)


 魔物を操るスキルや魔術は確かに存在する。だが、これほどの数の魔物を完全に操作し、魔物を介して会話を行えるスキルや魔術の存在をシルバは知らなかった。

 そのため、勇者や魔王クラスが持つ特殊スキルや龍種等の希少な種族が持つ種族能であるとシルバは考えていた。


「魔物を操り言葉を話せるというスキルは聞いたことが無い。お前は何者だ?まさか、魔王なのか?」

「魔王?多分、チガウ。本体はテイマーだ。ダから魔物を操レル」

「なるほどな」

 

 シルバ少し考え込んだあと、決断を下した。


「3時の方向へ離脱!そちらは包囲が甘い!」

「「「「了解!」」」」

「え、ナンデ!?グハッ」


 シルバはカイの接続していたゴブリンを腰に携えていた片手剣で斬り倒し、そのまま包囲網の穴へ向けて駆け出した。


(テイマーなどと嘘をついて油断を誘うとは、やはり警戒すべき相手のようだな)


 テイマーはパートナーである生物を育て、戦闘に連れて行けるよう躾けなければいけない。その性質上、テイマーは他の職種よりも手間と費用がかかるため、一流のテイマーでも低級の魔物数匹を操ることしか出来ないのだ。また、魔術により魔物を作り出して使役するサモンテイマーであっても、同時に数匹を操作するのが限界である。

 それを知っていたシルバは目の前のゴブリンの言葉がこちらの油断を誘うための嘘であると判断し、包囲網を抜けて撤退することを決断したのだ。


「包囲していたゴブリンとホーンウルフは倒しました!こちらです!」

「なっ!?隊長!包囲を抜けた先に罠の気配があります!」

「まさか、誘い込まれて……」


 包囲網を抜けた先に張られた罠の存在に気づき、銀狼族の全員が足を止めた瞬間。

 足元に突如巨大な穴が出現し、全員が吸い込まれるようにして落ちていった。


『仕方ない。全員を無力化してから、ゆっくり話を聞くとするかな』


 獣人の一団が自身の中へ入った事を確認したカイは、静かにそう呟いたのだった。






 鈍足更新で申し訳ございません。

 相当久しぶりの投稿です。


 ストックを貯めておりますので、しばらくは定期更新ができるかと思います!

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