21話「『影の支配』?」
「そういえば、蜘蛛とか苦手だったけど全然気持ち悪くないな。嫌悪感が湧かない」
前世では蜘蛛だけでなく昆虫も爬虫類も少し苦手だったが、ダンジョンに転生してからはあまり嫌悪感が湧かない。
昆虫を吸収したり生成したりする必要があるため、ダンジョンは本能的に他の生物に対する嫌悪感を感じない生物なのかもしれないな。
「それにしても、強いな」
力も強く、動きも素早くて甲殻は硬い。グンソウとは比較にならない強さだ。
「おっと、糸か」
接近戦は不利なので距離をとったのだが、すかさず糸を放ってきた。
ってか、糸というより槍だな。糸の硬度を限界まであげて射出しているのだろうが、見た目も硬度も鋭い鉄パイプだ。
「やっぱり、ランクDは絶対に超えてる」
これでホーンベアやグンソウより一つ上のランクC魔物だとしたら、ランクAはとんでもない化け物と言う事になる。
そんな化け物に攻め込まれる前に、もっとダンジョンを強化しておく必要があるな。
「そのためにも、お前を狩らせてもらうぞ」
『毒液生成』によって作り出した毒を剣に纏わせる。
ここからが本番だ。
◇
「すごい……!」
木陰からカイの戦闘を見ていたレオナは驚愕に目を見開いていた。
魔物の軍勢を従えながら、自身も達人の如き剣術でランクCの魔物を圧倒しているカイの戦闘力。
(強い。お父さんとは違う剣術も使ってる?)
レオナがそんな考えを抱いている最中も、カイは巨大蜘蛛の硬い甲殻を避け、見事な剣術で関節のみを斬り裂いていく。
(本当にすごい。お父さんの剣術だけじゃなくて、別の剣術も掛け合わせてるのね)
父親であるレオンの剣術を共に学んでいるレオナは、カイの使う剣術がそれとは異なるものであるとすぐに見破った。
事実、カイはレオンから学んだ剣術に塚原から得た剣術の知識を掛け合わせて使用しているのである。
(あれだけの力があって、私たちを助けてくれて、差別なく受け入れてくれた……カイさんは、一体何者なんだろう?)
レオナはそんな疑問を抱きながら、静かにカイの戦闘を見守るのだった。
◇
「うん、いい感じだ」
巨大蜘蛛は確かに強い。ステータスのみの戦闘力は確実に負けている。
だが、レオンから学んだ剣術と塚原さんの記憶から学んだ剣術を使えば僅かに俺の方が強い。
「動きもだいぶ鈍ってきたみたいだな」
どうやら、この巨大蜘蛛は毒粘液が効かないようだ。100回以上関節を斬りつけながら傷口へ各種毒粘液を浴びせ続けたのだが、麻痺も睡眠もする気配がなかった。
単純に関節へのダメージ溜まって動きが鈍ってきているだけだ。毒に耐性でもあるのだろうか?なかなかしぶとい魔物だ。
「周りの戦いも終わったし、そろそろこちらも終わりにしよう」
周囲を見やると、巨大蜘蛛が引き連れていたスモールグンソウとグンソウの大群は一匹残らず倒れている。魔物達の戦いはすでに終わったようだ。
「キシャアアアア!!」
「うぉおおおおおおお!!!」
『威嚇咆哮』で巨大蜘蛛のステータスを下げる。先程よりも少しだけ動きが鈍くなった。威嚇咆哮は効いているようだな。
「くらえ、『自爆』」
「キシャ!?」
少しだけ切った髪の毛を巨大蜘蛛の眼前で破裂させた。破壊威力はないが、発生した閃光によって巨大蜘蛛は怯んでいる。
『自爆』は体の一部も爆発させることができるため、こういった使い方もできるのだ。
「終わりだ」
巨大蜘蛛が怯んだ隙を逃さず、眼球に剣を突き刺した。
眼球も硬いが、甲殻ほどではない。
「ギ……ジャ……」
剣先は脳まで到達していたようで、巨大蜘蛛はそのまま絶命した。
「ふぅ、終わったな」
魔物達を見渡すと2割ほど数が減っている。だが、あの数相手にその程度の被害で済むとは思わなかった。予想以上の結果だ。
「ん?」
神人の体にもダンジョンである本体にも、力が漲っていくのを感じた。
「おっ、レベルが上がったみたいだな。『状態確認』」
種族名:ダンジョン
種族能:吸収と理解
レベル:6
スキル
『迷宮操作』
『生物生成』
『道具生成』
『言葉ノ王』
よし!上がりづらい本体のレベルが上がっている。というか、これで上がっていなかったら流石に辛い。
レベルが上がったことでサブ入り口の最大個数が5個になり、半径12km圏内に出現させられるようになった。
さらに、ダンジョン内の広さも倍になった。これで東京ドームほぼ一個分の大きさだ!
「よし、神人の体も確認してみるか」
種族名:神人
種族能:吸収と理解
レベル:10
スキル
『影の支配』
『迷宮の影』
(迷宮の影による使用可能スキル)
『悪食』『嗅覚向上』『毒液生成』『酸液生成』『硬化粘液』『威嚇咆哮』『自爆』『糸吐き』『夜目』
なんと、神人の体は一気にレベル10まで上がっている。ん?
「『影の支配』?」
新しいスキルまで手に入っている。レベルの上がりづらい本体とは違い、神人ボディの成長は著しいな。




