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18話「抜き打ち野外訓練」



 以前から考えていた計画をミーナが作ってくれた弓矢のお陰でようやく実行できる。


「よし、行こう」

「行きましょう!」

「久しぶりの狩りね」

「怪我はせんようにな」


 住人達の中でも弓術の得意な3人とホーンウルフ数匹、小鳥部隊と昆虫部隊を引き連れて森の中へと向かった。


「カイさん、今日は何を狩るんですか?」

「今日の獲物は、あそこを飛んでる魔物だ」


 小人族と人間のハーフであるチックが話しかけてきたので、2kmほど先にある岩場の上空を指差しそう答えた。

 以前から考えていた計画とは、空を飛べる魔物の生体情報を手に入れる事である。

 小鳥部隊の編成直後から、索敵中にあの魔物どもに襲われた事が何度もあったのだ。そのため、制空権を獲得するためにもあの魔物どもを狩ることに決めたのである。


「ミーナの作ってくれたこの弓矢があれば奴らを狩れるはずだ」

「あの魔物、結構強いですよ?大丈夫なんですか?」


 チックに続いて、兎人族と人間のハーフの少女であるミミが話しかけてきた。

 ミミはチックととても仲が良く、幼い頃から2人でお手製の弓を作りよく狩りをしていたらしい。

 2人はまだ13歳らしいが、チックは背が低くミミはすらっと背が高いので、2人が並ぶと同い年には見えない。


「安心しなミミ。カイ殿とその魔物達のほうが遥かに強いさね。私らは落ち着いて狙い撃てばいいんだよ」


 答えたのはエルフと獣人族のハーフであるイサメ婆さんだ。

 鼠の獣人の血が流れているらしく、小さな耳が頭に付いている。だが、聴力は凄く高い。弓術も凄いため、目で捉えずとも足音だけで遠くの目標を撃ち抜けるらしい。

 チックとミミの弓術の先生でもあり、俺も何度か弓術を学んだのだが、神人の種族能を持ってしてもイサメ婆さんの実力に到達できる気が全然しない。規格外お婆さんだ。


「イサメ婆さんはあの魔物を知ってるのか?」

「あぁ、何度か狩ったことがあるよ。『クロウクロー』って名前の魔物さね。鋭い爪を武器にしてくるけど、1羽1羽は大した強さじゃないよ。頭がいいから群れで襲ってくるとちと面倒だね」


 年の功か。すでに戦闘経験があるらしい。

 聞くと、単体ではホーンウルフのほうが強いようなので、攻撃さえ通れば問題なく倒せそうだ。


「着いたな」


 クロウクローが根城にしている岩場へと到着した。

 岩場と森の境目に生えている木陰に隠れながら様子を伺う。


「ここからだとまだ距離があるな」

「でもいい練習になりそうさね。今は風もほとんど吹いてない。よし、ここから狙い撃ってみな」

「「「えっ?」」」


 イサメ婆さんの抜き打ち野外訓練が始まった。


「でも、外したら逃げられるんじゃないか?」

「大丈夫だよ。ほれ」


 イサメ婆さんが一番高いところを飛んでいるクロウクロー1羽を仕留めた。

 綺麗なヘッドショットでクロウクローは即死している。凄い腕前だ。


「ガー!」

「ガーガー!」

「ほれ見な。こちらを警戒してはいるけど逃げないだろ?群れの数が多いうちは逃げないんさね」


 イサメ婆さん曰く、まだ有利な状況だと思っている間は逃げようとしないらしい。なるほど、そういう生態なのか。


「ほれ、襲ってくるよ。撃ちな撃ちな」

「「「!?」」」


 岩場に隠れていた大量のクロウクローも飛び立ち、クロウクローの群れが一斉にこちらへ突っ込んできた。

 

「「「うわぁああああああああ!」」」


 チックとミミと共にとにかく矢を連射した。2人の腕前も相当高いので順調に当ててはいるが、あまりにも数が多過ぎる!


「ほれほれ、撃つのが遅いよ」

「「「ぎゃあああああああああ!!!」」」


 撃ち漏らしてこちらに接近してきたクロウクローはイサメ婆さんが全て撃ち抜いてくれる。なんやかんやで俺もチックもミミも無傷だ。

 恐ろしいほどの弓術だな。マジで規格外だ。


「ほれ、第2波がくるよ」

「「「ひいっ!」」」


 昆虫部隊や小鳥部隊を囮にした誘導作戦とかを考えていたのだが、全く実行できなかった。

 結果、俺とチックとミミがそれぞれ30羽ほど仕留め、イサメ婆さんは1人で100羽以上を一人で仕留めていた。化け物だ。


「クロウクローは結構美味しいよ。高級食材として売られていると聞いた事があるね」

「これ食べれるのか」


 仕留めたクロウクローは食べられるらしいので、残さず全て持ち帰ることにした。


「カイさん、空間魔術が使えるんですか!?」

「空間魔術というか、そんな感じのスキルかな。ここから魔物も出せるよ」

「すごっ、カイさんって何者?」

「森の奥で暮らしている普通の人だよ」

「「絶対嘘だ!」」


 チックとミミとそんな会話を繰り広げながら、『迷宮の影』を発動して仕留めたクロウクローをすべて収納する。

 流石に4人と連れてきたホーンウルフだけでは持ち帰れない量なため、『迷宮の影』を利用してクロウクローは持ち帰ることにしたのだ。

 ちなみに、『迷宮の影』を通してダンジョン内へクロウクローを移した際に3匹だけ吸収させてもらったため、生態情報も記憶もしっかり確保できている。


「しばらくはクロウクローの肉で暮らせますね!」

「イサメ婆、これってほんとに美味しいの?」

「普通の鳥よりも全然美味しいよ。通は心臓と脳みそも食べるね」

「俺は肉の部分だけでいいかな」


 そんな雑談を交わしつつ、4人で集落へと帰るのだった。

 ちなみに、クロウクローの肉は普通に美味しい上に脳みそと心臓も中々癖になる味だった。山菜と一緒に煮たクロウクローのつくね鍋も絶品だ。

 娯楽は少ないけど食事は最高だな。





 カイの本体がある森の中心部から南側に20㎞ほど進んだ場所。そこには、周辺警備にあたっていた1匹のホーンウルフがいた。


「ガル?」


 嗅いだことのない匂いを感じ取ったホーンウルフがその方向へ進むと、もぞもぞと動く巨大な何かを発見した。


「ガ……ギャン!」


 本体であるカイへ異常を知らせようとした直後、ホーンウルフを鋭い槍のような何かが貫き絶命させた。


「キシャア?」


 ホーンウルフを仕留めた巨大蜘蛛は疑問を感じた。なぜなら、仕留めた魔物の死体がそこに無いためだ。

 ダンジョンによって作られた魔物の死体は残らないのだが、巨大蜘蛛はその事実を知らないのである。


「キシャア……」


 疑問を感じた巨大蜘蛛は、そのホーンウルフが来たと思われる方向へ隠れていた子蜘蛛達と共に進軍を開始した。


「……」


 しかし、巨大蜘蛛も子蜘蛛の群れも、あまりに小さなその存在には気付くことができなかった。ホーンウルフの毛の中に隠れるように、カイの生成したコバエが数匹潜んでいたのである。

 コバエ達はすぐさま本体であるカイへとこの異常を報せたのだった。

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