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17話「神人の種族能」



 ハーフのみんながダンジョンの入り口付近に住み始めてから5日が経った。


「小屋ってこんなに早く作れるんだな」


 俺の魔物達は食事も睡眠も必要ないため、休みなく働くことができる。魔物軍団の無尽蔵の労働力により、すでに立派な小屋が数軒立ち並んでいた。

 小屋には老人や子持ちの家族が優先的に住み、他のみんなはテント暮らしだ。だが、もうすぐ全員分完成するだろう。


「スライムの粘液とは凄いな。こんな使い方もあるのか」

「建築に使えるのは『硬化粘液』を出せるスライムだけだよ。でも、俺もこんな使い方があるとは思わなかった」


 ディエゴとそんな雑談を交わしながらせっせと働くスライムを見やる。

 家の建築に最も貢献した魔物は、力のあるホーンベアではなく『硬化粘液』を出せるスライムだった。硬化粘液は資材同士の接着剤としても使えるのだが、壁や屋根に薄く広げるように塗ると撥水性と耐久性向上の効果があるのだ。お陰で、木の骨組みと土壁でも丈夫な家が作れる。


「魔物とは、これほどの労働力になるのだな」

「魔物を労働力に使うテイマーはいないのか?」

「いたとしても、ランクDやEの魔物をこれだけ従えているテイマーはおらんわい。これほどの労働力を持ったテイマーはお主だけじゃ」


 ディエゴに驚き半分、呆れ半分といった表情でそう言われた。

 ディエゴとの話の中で知ったのだが、魔物にはランクがあるらしい。俺が作れる中で最も強いホーンベアとグンソウでも、ランクDなのだそうだ。ちなみに、ほかの魔物は最低ランクのEだ。

 てっきり、ホーンベアやグンソウはもっと強い魔物だと思っていた。異世界は広いな。


「カイさーん!」

「おっ、レオナ達か、戻ってきたんだな」


 建設を進めていると、レオナとともに族長であるレオンと若者衆が大きなイノシシを引きずりながら戻ってきた。


「いやー、カイさんのホーンウルフは凄いですね!こんなに早く大物を仕留められたのは初めてですぜ!がっはっは!」

「ちょっ、お父さん!カイさんをバシバシ叩かないで、失礼でしょ!」


 レオンに肩をバシバシ叩かれながらホーンウルフを褒められた。

 今の会話の通り、レオンはレオナの父親だ。そして、ハーフではなく純粋な獣人らしい。

 人間の女性との大恋愛の末にレオナが産まれ、ハーフの暮らす集落へと逃れてきたのだそうだ。人間だったレオナの母親は既に亡くなっているため、今はレオナとの2人暮らしらしい。


「レオン、そんなに動いて足は大丈夫なのか?」

「ん?あぁ、もう慣れてますからね。左腕で剣を振るのも慣れたもんですぜ」


 レオンは昔負った怪我が原因で右足が義足であり、利き腕だった右腕も麻痺が残っていて満足に動かせない。昔は名のある冒険者だったらしいが、仲間をかばってその怪我を負い、引退したのだそうだ。


「今日は疲れてないんで、訓練もたくさんできますぜ!」

「それはありがたい。よろしく頼む」


 レオンは格闘術だけでなく、剣術や槍術など様々な武術の心得がある。そのため、レオンには暇な時間に武術の指導をしてもらっているのだ。

 グンソウ戦では仲間を守るために全力を出せなかったようだが、右腕と右足が使えなくてもレオンは相当強い。神人の体を使っても一対一では勝てないと思う。


「カイさんは飲み込みが早いですからね。あっという間に俺なんか倒せるようになれますぜ!」


 レオンに褒められたが、自分でも凄い飲み込みの早さだと思う。

 というのも、神人の種族能である『吸収と理解』は技術や知識の習得が早くなるというという能力なのである。

 ダンジョンの『吸収と理解』とはその意味合いが異なるらしく、神人の体は前世の俺よりも物覚えや習得が異常に早いのでとても助かる。


「お父さん、今日は私もカイさんと一緒に訓練したい!」

「お?訓練嫌いのレオナが珍しいな。あ、そういう事か、なるほどな〜」

「べ、別に深い意味とかないから!」


 レオンにからかわれてレオナはどこかへ走り去っていった。

 レオナはミーナよりも少しだけ背の高い快活美少女だ。レオンと同じ橙色の髪色にショートカットで、細身だが歳相応に成長している部分は成長している。よく積極的に話しかけてくれる可愛い女の子だ。

 にしても、どこへ行ったんだろう?訓練するんじゃないのか?


「そういえば、この間の話は考えてくれたか?」

「役割に合わせた仕事の話でしたね。とても良いと思いますぜ。今日の狩でも感じましたが、ホーンウルフがいれば少ない人数で安全に狩りができる。残りの者は別の仕事に従事できる。むしろ、カイさんが良いならこちらからお願いしたいくらいです」

「よかった。俺の負担は全然無いから。出来るだけやりたい仕事ができるよう村のみんなの役割を調整してほしい」

「ありがとうございます。狩をしている男連中の中にも服作りや農業がしてみたいって奴は前から居たんですけど、人手不足で無理言って戦わせてたんですよ。あいつらも喜びますぜ。本当に、ありがとうございます」


 レオンに感謝されたが、こちらとしてもそうしてくれたほうが有り難い。

 生物をどれだけ作り出しても、自我があるのは結局俺1人だけ。労働力はたくさんあっても、考える力は1人分しかない

 なので、単純な労働は俺の魔物達が代わりに行い、みんなには自分に合った仕事をして新しい発想をどんどん養ってもらいたいのだ。


「さてと、それでは訓練といきますか」

「お願いします!」


 建築はディエゴと魔物達に任せつつ、この日は後から合流したレオナと共にレオンの特訓を受けたのだった。





 森の奥にある巨大な渓谷。その谷間には、全長10メートルを超える巨大蜘蛛が潜んでいた。


「……?」


 巨大蜘蛛は疑問に思う。数日前に狩へ出かけた子蜘蛛達がまだ戻らないことに。


「シャー……」


 喰いごたえのある獲物がいるかもしれない。そう考えた巨大蜘蛛は無数の子蜘蛛達を引き連れて、行方知れずとなった子蜘蛛達の向かった方向へと進軍を始めた。


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