15話「テイマー……」
テイマーと呼ばれる職業がある。魔物や動物を従えて偵察や戦闘を行う職業らしい。
「はい、テイマーです」
「凄いのです!カイさん自身もあれだけ強いのに、職業はテイマーなのですね!」
「上級のテイマーでも魔物を2〜3匹従えるのがやっとだと聞きましたけど……とんでもない数の魔物を従えているんですね。もしかして、相当高名なテイマーさんなんですか?」
「いえ、無名のテイマーです」
すみません、思いっきり嘘をついてます。
あの後、無事だったケモミミ達の元へ駆けつけて『この魔物達は俺のいう事を聞く害のない魔物です!』と説明した結果、俺はテイマーという事になった。
初めは警戒心むき出しだったが、『村長』と呼ばれているエルフっぽいお爺さんが『テイマー……』と呟いてくれたお陰でみんなも勘違いしてくれたのだ。
『俺はダンジョンで、これは俺が作り出した魔物です!』
と言っても絶対に信じてくれないと思うので、このままテイマーで通す事にした。
ちなみに、もう自己紹介は済ませているのでケモミミ達は既に俺の名前を知っている。
「そういえば、カイさんはどこに住んでいるんですか?」
「えっと、この辺に住んでるよ」
「「この森に1人でですか!?」なのです!?」
猫耳少女のレオナと兎耳少女のミーナに凄い驚かれた。聞くと、この森は魔物の出現率が高い『魔の森』と呼ばれる危険地帯らしい。さらに、この辺りは魔の森の中心付近らしく、普通ならば誰も踏み入ってこないような場所なのだそうだ。
「逆に、ミーナ達はどうしてこんなところまで来ているんだ?」
「それは……」
ミーナのかわりに猫耳少女のレオナが話してくれた。
彼らは皆他種族とのハーフであり、迫害や差別を受けて居場所のない存在なのだそうだ。
「ハーフは差別されているのか?」
「そうですよ?私は獣人と人間のハーフですが、獣人ほど身体能力も高くないですし人間ほど頭も良くないです。どちらの種族にも劣る存在として、ハーフは世界中で迫害を受けています」
最後に、「それがこの世界の常識ですよ」とレオナは呟いた。
何故そんな事も知らないのかと疑問に思われたが、常識知らずな点は森の奥で長く暮らしていたためだと誤魔化した。
「それにしても、酷い世界だな」
思わずそんな言葉を呟いてしまった。
どちらの種族にも劣ると言っていたが、それって人間よりは身体能力が高いし獣人よりは頭が良いって事じゃないか。見方を変えればどちらの種族よりも優れていると言える。
「この世界では純粋種が絶対とされているのです。ですが、ハーフは奴隷としてそれなりに価値があるので、常に他種族からその身を狙われているのです」
「私達のようなハーフは、人が踏み入ってこないような奥地で隠れながら暮らすか、奴隷として生涯を過ごす生き方のどちらかしか選べません」
なるほど、レオナ達は前者というわけだな。
「昔からこの森に住んでたの?」
「いえ、以前は森の外側に住んでいました。ですが、最近になって人間の奴隷狩りが現れるようになったので、村長の提案で森の奥地へと移動することになったんです。ここまでの安全な道も村長が教えてくれました」
「安全な道って、村長には探知能力でもあるのか?」
「それはわかりませんが、もしかすると予知能力に近いものを持っているのかも知れません。村長が言う事に従うといい方向に転がる事が多いので、みんな従うようにしているんです」
予知能力か。そういった種族能やスキルがあるのなら、凄い便利だな。
「予知能力があるんですか?」
「…………」
「村長は滅多に話さないので、聞いても答えてくれないと思うのです」
「あ、そうなんだ」
たしかに、蜘蛛からみんなを助けた際にレオナとミーナ以外の人達とも少し話をしたが、村長からは『テイマー……』という言葉しか聞いていない。無口な人なのかな。
「そういえば、みんなはこれからどうするんだ?」
先ほどの話を聞く限りだと、新しい移住先を探しにきた筈だ。どこに住む予定なのだろう?
「その、命を助けていただいた上にこのようなお願いは不躾だと思うのですが……カイさんの住処の近くにしばらく居させていただいてもよろしいでしょうか?」
「あまり長居はしないようにするのです。生活の邪魔も絶対にしないのです。お願いしますなのです!」
レオナとミーナに続き、ほかのみんなも頭を下げてきたがーーー
「ーーーえ、全然いいよ。というか、ずっと住んでくれていいよ。俺もその方が寂しくないし」
俺の返事に全員キョトンとしているが、そんなに驚く事だろうか?そもそも、ここって俺の土地でもないから許可を出すのもおかしな話だ。
「ありがとうございます!」
「ありがとうございますなのです!」
「「「ありがとうございます!!」」」
みんなに感謝されたあと、ここへ移動してくる間に取れた動物の肉や山菜を使って宴会が開かれた。
味付けは塩のみのシンプルなものだったが、久しぶりの食事は涙が出るほど美味しかった。
「あの、服とか要りますか?男物の服なら少し余りがあるので」
「え、いいの!?」
あと、レオナから服も貰った。嬉しいプレゼントだ。ありがたく使わせてもらおう。
◇
「……やっと、辿り着けた」
誰にも聞こえない声で、村長は静かにそう呟いた。




