13話「神人、生成!」
レベルが上がってホーンベアが作れるようになったが、他にも成長した点がある。
まず1つ目は、ダンジョン内の広さだ。
細い道や横穴や小部屋を作ったりして誤魔化していたが、レベル1の時は体育館くらいの広さしかなかった。しかし、今はその時の16倍くらいの広さになっている。東京ドームの半分いかないくらいだ。結構広い!
おそらく、レベルが1上がるごとに広さが2倍になっていくのだろう。
もしそうだとすれば、レベル11の時点で広さがえげつない事になる。このままだとこの森の地下が穴だらけになってしまう。
『まさか、地盤沈下でダンジョン崩壊とか無いよな?』
そう思い、とある実験のために魔物たちにダンジョンの入り口の横を掘ってもらった。ダンジョンの内部へ向けてせっせと掘り進めてもらったのだが、結果、ダンジョン内へ横穴を開通させることはできなかった。
どういうことかと言うと、ダンジョンの入り口は確かに地上に存在しているのだが、ダンジョンの内部は異空間になっているようなのだ。そのため、ダンジョンへは入り口からしか内部に入ることができず、ダンジョンがどれだけ大きくなろうとも地上への影響は一切ないのである。
安心した、地盤沈下でダンジョン生終了なんてマジで笑えない。
そして、もう一つ成長した点がある。
それは入り口の数を増やせる事だ。レベル1の時は一つしか作れなかったが、今は最大で5つまで入り口を増やせるのである。
『あれ?入り口増やしても侵入されるリスクが増えるだけじゃね?』
と最初は思ったのだが、この能力はとても便利だった。
最初からあるメイン入り口は固定だが、2つ目以降のサブ入り口は出現させたり消したりする事が可能なのである。そのため、魔物の巣にサブ入り口を出現させて奇襲なんて事もできるのだ。
さらに、メイン入り口から半径10km圏内で情景を把握している場所であれば好きなところに出現させられるため、1日以内に戻ってこれなそうな魔物がいても入り口を出現させて迎えに行くことができる。
『でも、獲物はもうほとんど居ないなぁ……』
サブ入り口で行動範囲が10kmも広がったが、それでも狩りは不調続きだ。
最近は毒キノコや破裂する木の実など、戦いに使えそうな植物の採取に没頭している。
光る苔やキノコなんかも見つけた。おかげでダンジョン内はとても明るい。
『それにしても、"神人"の生成はまだまだできそうに無いなぁ……』
『神人』。人族がある一定の条件を満たす事でのみ進化できる種族であり、超人的な身体能力と生命力を保有する存在だ。
『神人』の生体情報は既に手に入っているのだが、全然作れる気配がない。ホーンベアの時は『もう少しで作れそう!』という感じがしたのだが、神人はどれだけレベルを上げても作れる気が全くしない。レベル100でも無理な気がする。
『これは、ライフィア様の特権を使う時かもしれないな……』
ライフィア様から与えられている『一体だけどんな強力な生物でも生成できる権利』。ドラゴンや伝説の聖獣など、ファンタジー世界に居るであろう強力な生物生成のためにとっておこうとも思ったが、そもそもそういった生物の生体情報を得られる前に塚原さんクラスの敵に攻め込まれたらひとたまりもない。
『やっぱり、戦力アップの面から神人は作っておいたほうが良いよなぁ。あと、人の体で動きたい』
ダンジョンとなってからもうすぐ1ヶ月半が経つ。ダンジョンとしての体にはだいぶ慣れたが、やはり人の体の方が落ち着く。ゴブリンも形は似ているが、やはり人の体がいい。
それに、今後人型の種族と交流する際には人型の体があった方が何かと便利なはずだ。
『よし。神人、生成!』
神人を生成したいと強く願う。すると特権が発動したのか、いつものように魔力が減る感覚は無かった。
そして、壁の中からモリモリと神人の体が出現してくる。
なんか神々しいな。あれ?
『見た目、俺に似てね?』
気のせい、ではないな。生前の俺は20歳を超えていたが、作り出した神人は15歳くらいの頃の俺にそっくりだ。でも髪は白い。
『まぁいいか。違和感なく動かせそうだし、むしろ有り難い』
ちなみにステータスはというとーーー
種族名:神人
種族能:吸収と理解
レベル:1
スキル
『迷宮の影』
ーーーナンジャコリャ。種族能がダンジョンと同じだ。さらに、変なスキルが付与されている。
『迷宮の影』。影が迷宮と繋がっており、迷宮と繋がる全ての生物のスキルを使用できる。
『うわぉ、めっちゃチート』
つまり、ゴブリンの『悪食』、ホーンウルフの『嗅覚向上』、スライムの『毒液生成』、『酸液生成』、『硬化粘液』、ホーンベアの『威嚇咆哮』などなどが全て使えるらしい。今後作れる魔物が増えれば使えるスキルも増えていくということか、マジチートやんけ。
『塚原さんもこうだった訳ないよな?』
本体がダンジョンである俺はともかくとして、塚原さんがこういったスキルを所有している可能性は低い。もしかすると、『神人』の種族能やスキルは初めから決まっているわけではなく、周囲の環境や成長の仕方によって変わるものなのかもしれない。
だからこそ、この神人はダンジョンに関する能力を得て生まれてきたのかもしれないな。
『とりあえず、接続!』
さっそく神人の体を使ってみることにした。もうワクワクが止まらない。
「うおぉ、体が軽い!ジャンプ力も凄……痛い!」
軽く飛び跳ねただけなのだが、3メートル近くある天井に頭をぶつけてしまった。
「痛ててっ。凄い身体能力だな。ホーンベア、俺と力比べしてくれ」
「ガウッ」
とりあえず腕力を確かめてみようと思い、ホーンベアと力比べをしてみる。
5倍くらいの体格差があるホーンベアにグイグイと押されるがビクともしない。それどころか、少し力を入れて押し返すと600kg以上あるホーンベアが簡単に転がってしまった。
「わぉ……ゴブリン、俺を狙って矢を放ってくれ」
「ワカッダ」
俺の命令に従い、ゴブリンが矢を放ってきた。若木で作った不恰好な弓矢だが、それなりの速度と威力が出る。しかし、集中すると緩やかに投げられたボールくらいの速度にしか感じられない。何本か矢を放ってもらったが、すべて簡単にキャッチできた。
「ジャンプ力だけじゃなくて、腕力も動体視力も桁外れだな。凄い身体能力だ。しかもまだレベル1」
将来性がありすぎる。
「よし。今日は外も晴れてるし、魔物たちと一緒にハンティングでも行こうかな。ん?」
そんな事を呟いていると、外を索敵していた小鳥から異常の報せを感じた。
小鳥と視界を共有すると、2人の女の子が見える。
「ひ、人だ!」
ダンジョンから5キロほど先で猫耳と兎耳の少女が森を駆けているのが見えた。
あの耳って本物だよな?凄い、本当にファンタジーだ!
なんか緊張してきた。どうしよう、話に行こうかな。でも何話せばいいんだろう。この世界のケモミミ少女が食いつく話題って何だ?タピオカとか知らないよな?
「ん?何かに……追われてる!」
よくよく見ると、ホーンベアと同じくらいのサイズの大蜘蛛がケモミミ少女達を追いかけている。
あれから逃げていたのか、早く助けねば!
「『迷宮操作』!」
ケモミミ少女が逃げている付近にダンジョンの入り口を出現させる。
「よし、今行く……あ、『道具生成』」
慌ててボロ布のマントを作り出し、腰に巻いた。そういえば、ずっと素っ裸だったのだ。
「これで準備完了だ!よし、今行くぞ!」
神人に接続した俺は勢いよくダンジョンのサブ入り口から飛び出した。




