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1話「洞窟に咲く一輪の花」



 人の死に方には様々ある。

 病死、事故死、溺死、老衰……だが、俺と同じ死に方はそう多くはないはずだ。


「ははっ。なんか、怖すぎて笑えてきた」


 腹部に感じる激しい衝撃と共に、俺の意識はそこで途切れた。







「どこだここ?」


 気がつくと、真っ白な世界にいた。

 本当にただ白いだけの空間だ。

 

『目が覚めたようですね』


 声のほうを向くと、長い緑色の髪を靡かせた美しい女性が立っていた。


『初めまして。私は生命を司る女神です。色々な名前があるのですが、ライフィアと読んで頂ければ幸いです』

「あ、はい。これはご丁寧にどうも。自分は一ノ瀬界(いちのせ かい)といいます」


 ライフィアと名乗る女神様に合わせ、こちらも名前を名乗る。ん?女神様?


『疑問に思うのも無理はありません。ここは死後の世界です。あなたは先程の爆発で死に、今は魂だけの存在となって私の前に存在しているのです』

「死後の世界って……ああ、そういえば俺、死んだんですね」


 ゆっくりと、死の間際の光景が蘇ってくる。


 ショッピングモールで買い物中に知らない外国人が突然叫び出し、手榴弾を人混みの中へと投げ込んだのだ。

 突然の出来事に固まる人々を押し退けて俺は手榴弾に覆いかぶさり、爆発の被害を抑えようとして……死んだのである。


 世界情勢が緊迫してとか、とある国が戦争状態に入ったとか、最近のニュースでやっていた気がする。きっと、それらの原因によるテロか何かに巻き込まれたのかもしれない。


 まぁ、死んだ今となってはどうでもいい事だけどな。


『あなたの勇気ある行動によって爆弾の周囲にいた人々は全員無事でした。死の運命にあった10名の人々が救われたのです』


 そうか……助かった人がいたのか。それを聞けただけでも、報われた気がする。


『あなたほど勇敢な方を死なせてしまうのは本当に悲しく思いますが、生き返らせる事は出来ません。この世界の理を変える事は出来ないのです』

「そうなんですね……」


 家族や数少ない友人達の顔を思い出す。あぁ……もうみんなには会えないと思うと、なんとも言えない悲しさがこみ上げてきた。


『代わりに、転生に関する要望があればお聞きいたしますよ?』

「転生?」

『はい。あなたはまだ輪廻の輪の中にいます。なので、別の生き物として転生する必要があるのです』

「なるほど。蘇生はダメですけど、転生はできるんですね?」

『その通りです。さらには、あなたの善行を加味して転生先の要望を出来うる範囲で叶えてあげますよ』

「転生先の要望ですか……」

『そうです。空を飛べる生き物や海を自由に泳げる生き物などですね。もちろん、人として転生する事も可能ですよ』


 鳥や魚か、それならまた人に転生したほうが……いやーーー


「ーーー最強の生物に転生とかは、ダメですか?」

『最強の生物ですか?』

「はい。爆発でも死なないような、最強の生物に転生してみたいです」


 次の人生こそは平穏に寿命をまっとうしたい。最強の生物なら、多少の事故や事件に巻き込まれても無事なはずだ。


『わかりました。私が管理する数多の世界の中で最強と謳われる生物へと転生させましょう。あなたが暮らしていた世界とは異なる世界なので、記憶も引き継いだ状態で転生させてあげますね』

「あ、ありがとうございます!」


 ん?異なる世界?

 その疑問について女神様に問いかける前に……俺の意識は途絶えたのだった。








 目覚めると、見知らぬ洞窟の中にいた。

 内側は土の壁で覆われており、目の前の入り口からは光が見える。


 先ほどの出来事が夢ではないのだとしたら、無事に最強の生物へ転生したはずだ。


『あれ?声が出ない。体も動かせない』


 視界は……動かせる。というより、視界だけは洞窟の中を自在に動かせるのだ。なんだこれ?変な感覚だ。

 とりあえず、ゆっくりと視線を動かして身体を確認してみる。


『なんだよ……これ』


 俺は……洞窟に咲く一輪の花になっていた。

 

 


 

 

 はじめましての方ははじめまして!作者のタンサンと申します。

 更新頻度は未定ですが、『なんか今やる事無いし、ちょっと暇潰したいなー』と思った時にでも読んでいただけると嬉しいです。

 よろしくお願いします!


 それと、『異世界転生……されてねぇ!』という作品も連載中です。よければそちらもチラ見していただけると嬉しいです。

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[一言] 最強の生物で思い浮かんだ人物、目からビームを出す女性のレスリング選手
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