取材活動
被災して5日目位だったと思います、親父は朝から家の片付けに、私は子供の相手をしながら車の手配や各種手続きを行うために走り回っていました、そんなこんなで昼頃に休憩しようと一息ついた時に携帯電話に着信が……。
「親父どうしたの?」
「おう、今から来れるか?」
「来れるって家に? もう昼やし道路も橋も大渋滞で身動きとれんじゃろ?」
この頃家の片付けをするために避難所から被災地に入る方や工事に入る業者さんが沢山いましたが、豪雨の影響で道が寸断されていたりで侵入するルートが限定、元々そこまで広くない道に交通が集中し渋滞を引き起こしており、早朝であれば出入りは簡単なのですが昼ともなると身動きが取れないほどの大渋滞となっていました。
「いや、今テレビ局から取材の依頼受けてな、お前が救助されるとこを映してたからその流れで取材したいんじゃと」
「いや、渋滞きついし外あっついし……断っといて」
「昼2時にまた来るって言ってどっか行ったわ、OK言うてしもうたからはようきてや、頼んだぞ」
「ちょ……もしもし? もしも~し!」
という流れで無理矢理に取材を受けることに……とはいえ道はほぼ停車してるのと変わらない大渋滞、一応出発したものの確実に時間までに辿り着けません、仕方なく駅前の駐車場に車を止めて家までの5キロの道を徒歩です、折しも梅雨明け宣言がなされた空はとびっ切りの快晴、刺すような陽射しが容赦なく体力を奪っていきます、ふらふらと歩きながら眺める町は数日前と違いあちこちにうずたかくゴミが積まれており、誰も彼もが黙々と片付けを続ける中を幽霊のような定まらぬ足取りで歩きようやく家に到着致しました。
家の前には既にリポーターとカメラマンさんが待機しており、挨拶を交わした後に取材開始、陽射しに浮かされ回らぬ頭で2階へと案内を始めた私の背筋に冷たい何かが伝いました、おかしい、私は何かを見落としている、このまま案内するのは危険だと私の脳の奥底の何かが全力で警鐘を鳴らしている……その時、1階から聞き覚えのある声が響き、取材陣がそちらを注視しました、私の全神経は、筋肉は、今までに無かったであろう速度で脳の指令を伝達し、2階へと私の体を導きます、手近にあったクッションを手に私が向けた視線の先には……。
賢明な皆様はお気づきでしょう、そう、流出したベッド下のお宝『魅惑の巨乳』です、救助時に加えてまたも私を悩ませる、罪な女です全く……
親父との挨拶を終えた取材陣が部屋に到着する前にそれらをクッションの下に隠し、何とか全てを隠蔽することができました……こうしてピンチを切り抜け取材を終えた私は、きっとそれ以前より1回り大きい男になれたと思います、男子3日会わざれば刮目して見よ、私は大いなる達成感と共に大きく成長した自分を感じていました。
取材の内容はその日の夕方のニュースで流れたのですが、顔を知らないはずのネトゲ仲間から身バレの連絡が来たのはいいオチになったと思います(´Д`;)
ちなみに今回の災害でテレビやら新聞やら一生分の取材を受けたと思います、被災地に立ち入っての取材ってのも大変なもんですなぁ……。




