表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
6/6

〜山菜採りマスターになろう〜


じいさんの言葉は無視無視。取り合ってたら先に進めない。

「得物がないなら、山菜採りはいけないなぁ」

「大丈夫じゃ!儂らが付いておる」

あえて取りに行けないって言ったのに!このじじい全部大丈夫って言いやがって。このままじゃ、山菜採りに行かされることになる!!

「いや、俺ほら、レベル2だから、敵うはずないでしょ?」

「儂らがいるから大丈夫じゃよ!」

このクソじじい!!だから、なんでクソじじいがいれば大丈夫みたいになってんだよ!俺だけ死んじゃうだろう!聖女様もルビーさんもなんか言ってくれよ!

「じゃぁ、お願いしますね!」

「しっかりやれよー」

「なんでだ!?」

聖女様は俺に渡した台布巾を取りにっこりと微笑んで山菜採りをお願いしてきた!?なんでだ!?この会話の中で俺が行ける要素なんてじいさんぐらいしかないだろ!

ルビーさんも手をひらひら振って厨房に戻って行った。

ルビーさんにまで見放されて俺、やるしかないのか?

「小僧!早速行く準備はできとるか!?」

「心の準備がまだだよ…………」

「よし大丈夫そうじゃな!」

「だから、まだだって言ってんだろ!」

じいさんは俺の話を聞いてはくれなかった。よぼよぼの体引きずって、ばあさんのところに行く。ばあさんはじいさんに手を引かれ、あらあらと、言いながら、編み物をやめて立ち上がった。

あ、今回はばあさんも行くのか。このまま、アレフじいさんのところへ行ってワープして、目的地まで行くわけだな。

仕方ない。死んでもばあさんがいれば生き返られるし、俺も行くか。

じいさんとばあさんについて行くと、アレフじいさんのところには行かない。あれと、思ったらそのまま入り口に立った。

「おい、小僧、防寒耐性持っとるよな?」

「いやないけど。なんで?」

防寒耐性なんて強いバフ、レベル2の俺が持っているわけない。

「それじゃぁ、行けんなぁ。ちょっとアレフじいさんにまたワープしてもらうしかないかのぉ」

「なんで?」

「お主は馬鹿か?ここの外が吹雪なの忘れてるのかのぉ?」

じいさんは少し扉を開ける。その瞬間、凄まじい風と雪が室内に入り込んできた。

さっ、寒い。忘れてた!外は猛吹雪だったんだ。でもなんで縁側はあんなに天気いいんだ?

「縁側は吹雪とか、一切ないだろ?なんでだ?」

わからないことは直接聞くのが早い。正直、このじいさん達なら雲とか雪とか吹っ飛ばせるとか言い始めるかも知れないけど。

「ん?アレフじいさんが結界はってるんじゃ」

「ああ、そう」

ほらやっぱり、このじいさんたちの、せいだった。もう何をしててもおかしくないな。じいさんたちチートすぎるもん。

「てか、なんでグリーンタートル倒さなきゃ行けないわけ?アレフじいさんに頼めば安全に山菜採りに行けるだろ」

そもそも山菜採りにモンスターが出てくる方が変なのだ。しかもそのモンスターがレベル68とかおかしいだろ。ルビーさんたちもきっと、ここに来る前に採ってた山菜って普通の山菜だろうに。何故、今日に限ってモンスターと闘いに行かなきゃいけないんだ。

「決まっておるだろ。グリーンタートルの背中に生える山菜の方が、美味いからじゃ」

「なんだよそれ」

食の恨みはなんとかって言うけど、美味いからって命掛けなくてもいいだろう。じいさんは普通の山菜食ってろ。

てか、聖女様もよくこんなわがままに付き合ってあげてるよな。

わざわざグリーンタートルの背中の山菜採りに行こうとしてたんだから。

「それに、アレフじいさんがおらんかったらこの辺じゃグリーンタートルの背中ぐらいにしか山菜なんてないぞ」

わがままじゃなかった!聖女様たちは自分たちだけで今、山菜採りに行くとなればグリーンタートル倒さなきゃいけない状態だったんだ!アレフじいさん、便利かよ!

「じゃ、アレフじいさん、よろしく頼むぞ」

トモゾウじいさんがアレフじいさんの肩を叩く。しかしアレフじいさんは微動だにしない。どうした?

「アレフじいさん?」

俺も呼びかけてみる。しかし、やはりアレフじいさんは微動だにしない。無視して寝続けている。

「あらあら〜アレフちゃん、疲れちゃったのねぇ〜」

ばあさんが微笑む。

どうゆうことだ。疲れたってさっきのホームセンターだけで?たい焼き食って寝ながらついてきただけだろ。疲れることなんてしてないぞ!実際、あんだけ、はしゃいでいたトモゾウじいさんは、ピンピンしてるし。

「しょうがないのぉ。わしらも年には勝てないってことじゃ」

「じいさんは元気じゃないか」

「まぁのぉ。しかし、これじゃこの吹雪の中、小僧は山菜採りに行かなきゃならんことになったの」

「はぁ!?」

そんなことしたら死んじゃうよ!俺、耐性とか何にもないんだ!

「俺!死んじゃうから!山菜採り自体やめようよ!」

「だ、大丈夫じゃ!お主にはこれがある!」

じいさんが懐から取り出したのはホカ◯ン。

「はい、却下」

じいさんに聞いたのが悪かった。じいさんなんかに期待したって意味なかった。

「ね、小僧、ね。なんか冷たくない?ね?別に冗談とかのつもりないよ?儂」

「ねぇばあさん、山菜採り行かないほうがいいよね」

俺はじいさんを無視してばあさんに意見を求めた。ボケてるじいさんなんて無視だ無視。

「そうねぇ。温包とかはどうかしら?」

「はい、だめぇ」

ばあさんもボケてるみたいだ。温包ってなんだよ。ただの入浴剤だろうが。お風呂に入ってから行けってか?そんなことしたら湯冷めしちゃうよ!逆効果だよ。風邪引くだろう!

ダメだ。話が通じない。そもそも山菜採り自体無謀なんだ!じいさん達だけで行けばいい。俺はここの職員じゃないんだし、じいさん達の面倒を見るのはルビーさんとかの仕事だろ。

でも、俺のせいで山菜採りの難易度上がっちゃったんだよなぁ。

俺がグダグダ考えてると、突然、適当なところにホカ◯ンを一つつけられて突き飛ばされた。勢いそのまま、俺は入り口を転がりながら抜けた。シャリっと雪の感覚がする。猛吹雪を体全体にくらった。

「え!?」

突然ほっぽり出されてグリーンタートル倒さなきゃいけなくなっちゃった。てか、寒い!やっぱりホカ◯ンじゃ無理だったんだよ!薄着の長袖一枚とズボンだけじゃ防寒としては弱すぎる。

「じいさん!こんなの無理だって!」

俺は寒さで体を震わせながら叫んだ。だが、じいさんの返事はない。え、じいさんも見えないし、もしかしてまた一人で出て来ちゃった?え、死ぬの?俺。

「じいーさーんー!」

猛吹雪の中、俺のじいさんを呼ぶ声はかき消えていった。あんまり声出し過ぎると前回みたいにヤバイモンスターに見つかっちゃうかもしれない。じいさんを呼ぶのはこれで最後にしよう。

「じーいーさーんー!」

「なんじゃい。うるさいのぉ」

「じいさん!」

じいさんは透明な四角い空間から出てきた。なぁーんだ、俺を脅かしていたのか。これなら死なずに済みそうだ。

じいさんはいつも通りに杖ついて腰にホカ◯ンつけて俺の前に現れた。

って、じいさん耐寒耐性持ってんのになんでホカ◯ンつけてるんだ!?

「じいさん、ホカ◯ンなんでつけてんの?」

「腰が痛いときは冷感刺激もいいんじゃが、温めて血行を良くするのもまた気持ちいいんじゃよ。ほれまだあるから小僧にも貼っつけてやろうか?」

「お、おう?よくわかんないけどお願いするわ」

じいさんから6枚ほどホカ◯ンをもらい、身体中に貼り付けていく。先程適当に貼り付けられたホカ◯ンは背中だったので、手の届かない背中には貼らずにすんだ。

「てか!俺を突き飛ばしたのってじいさんだろ!なんでそんなことしたんだよ!?」

「小僧がウジウジしてるのが悪いんだもん!」

「もんじゃねぇよ!」

でも、一人じゃなくて本当に良かった。一人なら確実に死んでた。

ホカ◯ンはあったかい。肌に直に貼りたいとこだが、貼ったら火傷すると書いてあったので洋服の上から貼っている。両方の太もも、脇腹、二の腕に1枚ずつ。あーあったかい。

「トモゾウちゃん、どいてちょうだい」

じいさんが、俺の右側に避難する。するとばあさんが、さっきじいさんが出てきた空間から出てきた。俺の左側だ。この不思議な空間はどうなってるんだ。チラッと中を覗くと、普通のコミュニティセンターの中と繋がっていた。これもワープみたいに、空間魔法かなんかなんだろうか?俺は知らない魔法の一種なんだろうか?

じっくり見たかったが、ばあさんが出てきて扉を閉める仕草をするとその空間は消えてしまった。

「それじゃいくぞい!」

「わかったよ、死にたくないしついていくよ」

こんなところで、ばあん無しに一人で行動なんてしてみろ。すぐに死んじまう。仕方ないから、俺はじいさんについていく。

「風が強いわねぇ」

「そりゃ、ここどこか知らないけど物凄い猛吹雪の中だもん。仕方ないんじゃないか」

ばあさんがスカートを抑えながらついてくる。大丈夫だ、ばあさん。誰もばあさんのパンツなんて見たくないから。見ても目が腐っちゃうだけだから。

「あら、今、何か悪い事考えなかったかしら?」

「い、いや!なんにも思ってないよ!」

テレパシーとか感知系の魔法でも使ってるのかばあさん。一応、テレパシーは個人情報保護の為、国で禁止されてる魔法だぞ。

とりあえず、ばあさんには気をつけよう。

グリーンタートルは緑の巨大な亀で背中に木を生やしている。その木の麓に山菜があるらしい。グリーンタートルの大きさはコミュニティセンター3個分ぐらい、足だけでも俺の身長は超えている。背中の甲羅には苔が覆い、一本の木がその強大な甲羅を覆い尽くすほどの大きさに成長するみたいだ。俺は実際に見たことはないが、小さいときに、モンスター博物館でグリーンタートルの甲羅の一部を見た事がある。一部だけでもコミュニティセンターの机3つ分はあった。

猛吹雪の中、じいさん、俺、ばあさんの順で歩く。さ、寒い。でもホカ◯ンはあったかかった。雪山をギリギリじいさんが見えるぐらいの距離を保って歩く。坂道でしかも雪で身動きが取りにくいんだ。それなのにじいさんはいつもと同じぐらいのスピードで歩いていく。付いていくのが大変だ。

この前はコミュニティセンターから出た瞬間、モンスターに襲われたのに、今回はモンスターの影すら見えない。じいさんが怖いのか。それともばあさんが怖いのか。

ある程度斜面を登ったところでじいさんが止まった。じいさんが急に止まるからバランス崩して倒れそうになる俺。なんとか体制を立て直すと、じいさんは斜面の上の方を指差した。

「あそこにグリーンタートルがおるぞ!」

グリーンタートルはでかい。だからすぐに見つけられるのだが、この猛吹雪の中で見つけるなんて、じいさんさすが。俺には微塵も見えない。

「ちょいと行って来るから待っておれ」

「へいへい」

じいさんが先にグリーンタートルを倒してくれるらしい。ラッキー。俺は死んだグリーンタートルの背中から山菜をむしり取るだけだ。寒いけど楽な仕事だったな。


ドカーン!


どっかで爆発音が聞こえた。その直後、じいさんが帰ってきた。まさかあの音はグリーンタートルを倒した音か!?さすが巨大モンスター。倒すときも派手だな。

「グリーンタートルはこっちじゃ。今、落としたから山菜も取りやすくなっとるはずじゃぞ」

「落とした?」

あ、倒したの間違いか。じいさんたら、ボケちゃって、しょうがないなー。じいさんの案内でグリーンタートルのところまで行く。俺一人じゃグリーンタートルが近くまで行かなきゃ見えない。

グリーンタートルの近くに到着した。俺でも見えるぐらい近い。グリーンタートルは甲羅から下をすっぽり地面に落とし、尻尾と頭だけがバタバタもがいていた。

死んでない!むしろ元気!?

「じいさん、これ、めっちゃ元気じゃん!」

「そうじゃな。尻尾に気おつけるんじゃぞ」

いや、そうじゃなくって!俺これじゃ近く事も怖くて出来そうにないんだけど!

「ほれ、山菜採りに行ってきな」

「無理だよ!暴れてるじゃん!」

「足は埋めたから動かんと思うぞ?ちょちょいと取りに行くだけじゃ。簡単じゃろ」

「簡単なわけあるか!」

「情けないのぉ。ほれ、行ってこい」

「うわぁあ!」

じいさんの杖に背中を押されて尻尾の手前に来てしまった。ブンブンと振り回される尻尾に、一発でも当たったらアウトだ。こうなったら仕方ない。一気に行くぞ。

凶悪な尻尾に吹っ飛ばされて俺は死んだ。

「きもちよ〜」

ここ何日かで何回かの気持ちで俺は復活を遂げた。

「じいさん!やっぱり死んじゃったじゃないか!」

「うるさい!小僧が軟弱なのが悪いんじゃ!」

「だから、俺はレベル2なんだよ」

「関係ないのぉ。仕方ない。ちゃんと見ておくんじゃぞ」

ぴょんぴょんとじいさんは甲羅を登っていく。尻尾なんてお茶の子さいさいによけて、甲羅に生える一本の木の麓の山菜をむしり取る。すると、グリーンタートルはより一層暴れているように見えた。

おい、じいさん、足腰悪いんじゃないのか?

「こうやってやるんじゃ!やってみぃ!」

「いや、やれるわけないだろ」

じいさんが山菜採りやってくれるなら俺やる必要ないじゃん。なんだ、俺は引率するだけか。寒いけどまぁ、引率だけならやれる。

「小僧!はよこい!」

「だから、行かないって」

「行かないってなんじゃ!」

じいさんは山菜を少し採っただけでグリーンタートルの甲羅から降りてきた。

「これじゃ少ないよ、じいさん。早く採ってこいよ」

「なんじゃその命令形は!小僧が行くんじゃよ!早くいってこい!」

「俺は行かないよ。じいさん簡単に採れるんだからじいさんが行けばいいだろ?」

「お主、勇者になるんじゃろが!そんなんじゃ勇者になれんぞ!」

と、言われても俺より適任がいるなら適任に任せるのが筋だろ。俺は黙って見てるよ。

「ちゃんと行かなきゃダメよぉ〜」

ばあさんが俺に行けと言う。いや、ばあさん、だから、適任がいるんだからそっちに任せればいいんだよ。

「そうじゃ!人任せはいかんぞ!」

「適任に任せるべきだろ。出来る奴がやるべきじゃないか?」

俺は鼻くそほじくりながら暇そうにグリーンタートルを見た。俺になんとか出来るような気がしない。やっぱりじいさんが山菜採りに行くべきだろ。

「小僧が行かなきゃ、意味ないじゃろ!」

「いや、俺は見てるよ。じいさん行ってこいよ」

何度このやり取りを繰り返すつもりなんだ。もういいから、じいさん行ってこいってば。

「………こりゃダメじゃな。ばあさん、頼むぞ」

「あらあら〜。ユキムラちゃんが山菜採り頑張ったってサファイアちゃんに私から伝えてあげるわよ?」

「え、聖女様に!?」

俺は勢いよくばあさんの方に振り返った。モテるなら話は別だ。

「そしたらサファイアに喜んでもらえるわねぇ」

「ま、じ、か」

「そしたらサファイアからモテてしまうなぁ」

「ま…じ…か!」

行くしかねぇ。これは行くしかねぇ。グリーンタートルはデカイし怖いけど行くしかねぇ。

聖女様に喜んでもらえて好きになってもらえるならやるしかねぇ。

俺はポケットからトンカチを取り出し、グリーンタートルへ走り出した。トンカチを取り出した理由?なんとなく強くなれる気がしたからだ。

「ぐはっ」

しかし、結果は残酷で俺はグリーンタートルの尻尾にあたって死んだ。

「きもちよ〜」

ばあさんの魔法だか、気持ちなのかわからない方法で蘇った俺は飛び起きて、すぐまたグリーンタートルに向かった。

俺はモテるためなら勇者にだってなろうとした男だ。何度死のうとばあさんがいる限り何度でも挑戦できる!それなら早くグリーンタートルの甲羅から山菜をむしり取って聖女様に褒めてもらいたい!時間がもったいない。

何度死んだのかわからないが、ようやくグリーンタートルの尻尾もなんとか、偶然にもかわし、俺は甲羅に張り付いた。トンカチを甲羅のデコボコに引っ掛けてゆっくり登って行く。

そしてグリーンタートルの背中の頂上付近に辿り着いた。そこには不思議と雪が積もってなくて、苔の生えた甲羅の上に根っこを張っているのか山菜がわんさか生えていた。吹雪もここにはなく自然と寒さも和らいだ気がしてくる。

やっと俺はこのデカイ山を乗り越えたんだ!聖女様に認められる!

一本木の下にたくさん生えている山菜を根こそぎ奪って行く。そしてトンカチが入っていたポケットに詰め込んだ。

よくやった俺!これで聖女様にもたくさん褒めてもらえる。この勇気を称えて惚れられてしまうかもしれないぞ!うほっ!この甲羅から降りてとっとと帰らなければ!俺のステキな聖女様が待っている!

頂上から下を覗く。

うわー、帰れる気がしない。この高さじゃ3階建ての家から飛び降りるようなもんだ。よくじいさんはひょいひょい上り下り出来たな。

俺は甲羅のデコボコに足をかけてゆっくりと下って行く。トンカチ邪魔だな。登るときはトンカチの柄の部分をデコボコに引っ掛けて登ってきたのだが、下るとなるとトンカチの用途がなくて邪魔なだけだった。仕方ないからトンカチを口に挟んで下ることにする。こんなトンカチでも一応15ゴールドはしたんだ。使う用途は違えどちゃんと大事にしてやらなきゃな。

ゆっくりゆっくり下って行くが、時々手が滑ってザザザーっと下に急落下する時があった。そんなときは足で踏ん張るしかない。下に行くにつれ、また寒さが帰ってきた。でも俺には頼りないがホカ◯ンがある。まだ暖かいし大丈夫だ。

やっとの事で雪の上に降り立ったわけだが、ここからは運に頼るしかない。尻尾をどうやって上手く躱すかだ。大丈夫、これは縄跳びと一緒だ。上手くタイミングさえ合えば躱せる!

口に挟んでいたトンカチを手で握り、タイミングを見計らって、いざ!

「ぐはっ」

俺は勢いよく走って勢いよく尻尾に吹っ飛ばされて死んだ。

「きもちよ〜」

何度目かわからないばあさんの力で復活を遂げた俺は、空に向かってトンカチを掲げた。

俺は何度も死んだが、両ポケットいっぱいに山菜を採ったぞ!

やりきった!その気持ちが俺の中で一杯になった。

早く、早く聖女様にこの山菜を!

俺は起き上がり、じいさんににじり寄った。

「じいさん!早く帰ろうぜ!」

「わ、わかっとるわい」

「帰り道はこっちよ〜」

俺、じいさん、ばあさんは見事、山菜採りのミッションを終えてコミュニティセンターに帰った。

その後、山菜は和え物として昼食に出されたが、今まで食べたどの山菜よりもシャキシャキと歯ごたえがよく美味かった。

聖女様にはたくさん褒めてもらって俺は上機嫌で昼食をいただいた。



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ