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僕はみんなの傍に居たい。  作者: 一ノ元健茶樓
9/14

お役所

 


 翼は、事務所で寝ていた。

 すると吉田さんが、事務所へ入って来るなり叫ぶ。


「て、店長!!あの人が!あの人が!!」


 その叫び声で、翼は起立しようとしたが、足がグニッとなり、椅子から転げ落ちる。


「い、痛い…え?あの人?って誰?」


「い、良いから!早く!」


 そう言って、転がってる翼の手を引いて、引きずりながら、事務所を出ようとする吉田さん。


(す、すげぇ腕力!)


 自らのチカラで、立ち上がった翼は、店の外に居た。


「な、何やってんだよ!あんた!!」


「あら、母さんに向かってアンタとは何?はい、これ…お弁当よ。ちゃんと栄養とってるの?顔色、悪いわよ?」


(テメェが昨日、俺をモスラにしたからだろーが!!)


 そこには白いワンピースを着て、しっかりと化粧をし、涼しげに笑う律子。と、美月とジョージが居た。


「おべんとー!」

「きゃわん!」


(か、かわいい…って、な、何なんだよ…オバハン何か、企んでやがるのか…?)


 とりあえず弁当を受け取る翼。


「な、何しに来たんですか?」


「え?お弁当、届けに来ただけよ?」


(絶対ウソだ!ぜええええっとぅあいに嘘!!騙されねぇぞ!!!)


 そう言って、手を掴まれないよう両手を後ろに回す翼。


「ふふふ…だって印象が良くないと、この子たち、うちの養子に来ないじゃない、きゃはっ!」


(…キツイ)


「だから諦めろって!美月は俺の子だし、ジョージは俺の子犬だ!」


「分かってるわよ…そんなの。でもね、何だか、この子達、少し変なのよ…」


(1番変なのはアンタだけどなっ!!)


「昔の事…ていうか、母親の事は覚えて無いって言うし、あなたの事も知らないオジサンだ、って言うの…」


「う、そ、それは…」


(俺にも分からん…)


「ご近所さんにも聞いたんだけど、この子の母親、あ、あなたの奥さんね。2年前に、亡くなったんですってね。そのせいかしら?何か…精神的なショックで…あなた、気づいてなかったの?」


(あ、そういう事だったのか…うっ、あ、あんなに明るく振る舞ってたのに、こ、心の中では…そ、そんな…くぅぅっ!な、泣ける!!)


「み、美月!そうなのか?!ど、どうなんだ?!パパにお話してくれるか?美月の、本当の気持ちを…」


 美月はキョトンとした表情から、笑顔になり、


「おべんとー!」

「きゃわん!」


 と言っただけだった。


(あ、こりゃ違うな。俺の子だもん。アホなんだよきっと)


 それを見た律子が、突然泣き出す。


「み、美月ちゃん…こんな男の為に、そこまで…」


(なんなの、あんたがセラピー受けた方が良いって…)


 その時だった。


「り、律子!またここに…探したんだぞ!!」


「あ、オジサン~。こっちこっち!早くこの人持って帰ってぇ~」


 翼は一気に笑顔となり、忠義に向かって手を振る。

 それを見た忠義は、翼に向かって急いで走って来る。


 そして、忠義は翼を殴った。


「…ぶふぉっ!!!」


 そう言って翼は、吹っ飛び倒れる。


「あ、あなた!?何するの!」


「律子!こんな男の何処が良いんだ!俺とコイツ!どっちを取るかハッキリしろよ!!」


 忠義は激怒していた。


(あー、はいはいはい。面倒臭いのが、もう1匹来ましたよ。はいはいはい。分かりますよ。この奥さんの旦那さんだもんねぇ。そりゃ普通の人じゃないよねぇ…誤算!!!)


 よろよろと起き上がる翼。

 美月とジョージが寄って来る。


「パパ…大丈夫?」

「きゃうん…」


 そう言って、殴られた箇所を撫でてくれる。


(か、かわいい…)


「いたいの、いたいの、飛んでけー!」

「きゃわーん!」


 回避不能、エリアルコンボであった。


(し、死ぬ。キュン死するぅっ!)


 しかし、その視界の奥には地獄が広がっていた。


「ご近所で噂になってたぞ!お前が、若い男の家に出入りしてるってな!!」


(い、いや、ご近所さん…どんだけ話盛るのよ…)


「あ、あのぉ…僕と、その人は、無関係です…」


 そして忠義は、もう一度、翼を殴る。


「…フンボッフ!」


 せっかく起き上がった翼は、また倒れる。


「貴様っ!我が嫁を、遊びだったと申すのか?!」


(…もう嫌…起きたくない。ツッコミたくない…)


「いたいの、いたいの、飛んでけー!」

「きゃうんきゃうん!」


 翼のHPとMPはフル回復した。


(そ、そうだ。ここでちゃんと話し合えば、このオバサンから解放される!諦めるな翼!希望の光は見えてるぞ!!)


「あ、あのですね…」


 と、言った時だった。

 人だかりが出来てる事に気付く翼。


「とりあえず…中、入りましょう…」


 3人は、事務所へ居た。

 ジョージを連れている美月は、外で吉田さんが見てくれていた。

 2人でパピコを食べている。

 そして事務所の前では、山下くんが聞き耳をたてていた。


「えー、では、これから話し合いを開始します。よろしくお願いします。私、馬一 翼と申します」


「私は、$:;…”-忠義だ。許さんぞ、貴様!」


(その、貴様ってやつなんなの、あと許して、もう…)


「私は、、^:”…律子です。私は美月ちゃんのおばあちゃんです」


(うん、違うよね?)


「えー、それじゃ、まず誤解を解きましょう。僕と律子さんは、無関係、昨日が初対面です」


 そう言うと、忠義はいきなり立ち上がり、叫ぶ。


「まだ、そんな事を!お前は打首だ!!」


「や、やめて!彼は悪く無いのよ!悪いのは私よ…私が…彼の…」


(その言い方だと、余計に話がややこしくなるだろーが!ちゃんと詳しく話せよ!kwsk!!!)


 その時だった。

 事務所の扉が開き、山下くんが顔を出す。


「声、抑えて下さい」


 そして事務所の扉が閉まる。


 忠義は座り直す。


「一体これはどーゆー事なんだ律子!こないだまで、ヤケクソの様に叫んでたと思ったら、次は男か?!」


「いや、別にこの男はどーでもいいんだけどぉ、美月ちゃんとジョージがねぇ」


「ああ、さっき居た女の子と子犬か、それがどうした」


「可愛いのぉ!」


(このオバサン、初めてまともな事言ったな。同意!)


「いや、それは分かるが、ま、まさか?!お前とコイツの子供じゃないだろうな!!!」


 忠義はまた、勢い良く立ち上がり叫ぶ。


「…声」


 と、だけ言って山下くんは扉を締める。

 忠義は、また座りなおす。


(ねぇ、山下くんが、話してくれない?)


「私の…子供じゃないの。孫よ…」


「ま、孫ぉ?!;:、-”の隠し子かなんかか?!あ、アイツ…やるじゃん…へへ」


(…)


「だから、2人で、育てて行きましょう…あなた…」


「そうだな。それは育てるしか無いな…」


(コイツもアホだったあああああああっ!!!!)


「待て待て待てえい!!!美月は俺のむ・す・め!!俺の子じゃあいっ!!」


 2人は立ち上がる翼を眺めている。


「店長…」


 山下くんからの注意だった。


 翼は座り直す。

 これまでの、経緯を忠義に話す翼。


「そうかぁ…そんな事が…じゃ、孫で決定だな。いやぁ…嬉しい、うっ…うう…」


「もう、ほんと涙脆いんだから、これだから嫌ねぇ、はい、ハンカチ。…-;、:もそう思うでしょぉ?」


 と、言われた翼も。

 と、言った律子も。

 固まっている。


「い、いやぁだぁ!あたしったら!あはは!」

「もう、君!ウチの養子になりなさい!」


「は?」


「だって美月ちゃんが孫なんだったら、君は息子だろ?」


「は?いや、まぁ、そうだけど…」


「さ、さっそく市役所へ行こう!!」


「そうね!(私はこの男はどうでもいいけど)」


「ねぇ、今なんかボソッと言いましたよね?」


「だいたい、君が律子の息子になるって提案したんだろ?なんで君がいやがるんだ?」


「…う」


(し、しまったぁ!!あの場を切り抜ける為に言ったのが間違いだったぁ!!オウンゴール決めてたぁ!!!)


 そして、三人は市役所へ行き。

 晴れて家族となった。


(ねぇ、なんで役所も止めないの?)


「さぁ、翼!私をお父さんと呼びなさい!」


「美月ちゃん!今日の晩御飯なに食べようかぁ?!」


 そして、みんなは帰宅する為に翼の前を歩いて行く。

 その風景を見て翼の目からは、何故か涙が零れていた。


「ま、いいか…」


 そう言って翼も、みんなの元へ歩き出していた。



(てか、俺…全然働いてねええええええええっ!!!!!)






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