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僕はみんなの傍に居たい。  作者: 一ノ元健茶樓
6/14

トンネル

 



 朝の何気ない会話から、始めます。


「なぁ、美月。ジョージの散歩って行ってるのか?」


「ううん。まだ行ってないー」


「いや、今日じゃなくて…」


「昨日も行ってないー」


「へぇ、ジョージ散歩したいか?」


「きゃわん!」


「したいってよ」


「じゃ!するー!」


(かんわいー)


 そんな会話をした、その日の昼過ぎだった。美月が、翼の働くコンビニへ来たのは。


(えーっと…これが、ここで…ここがこーで、これが…ここ?あれ?こっちかな?ん?あれ?あー?)


 翼が、みんなに任せていた、パソコンの処理を、暇な自分が引き受けると言い、何だかんだで、翼はやっていた。


(ダメだ。わからん。山下くんに教えてもらおうかな…でも…)


 そう言って、店内を除く翼。


(みんな、忙しそーだなぁ…)


 すると吉田さんというスタッフが、こちらに向かって来ている。


(ん?事務所に用事かな?なんだろ?)


「店長、美月ちゃんが、ジョージちゃんを連れて来てますよ!」


「え?!」


 翼は慌てて、店の外に出る。


(美月、美月は…あ、居た!)


 コンビニの駐車場の奥に、木が植えてあり、その下に居る。そして、隣には見知らぬオバサンが居た。


 俺は、ゆっくり歩きながら、何を話しているのか聞き耳をたてる。


「あら、お嬢ちゃん、子犬と散歩かしら?1人なの?」


「うん!」


「へぇ、1人だと危ないから、すぐにおウチへ帰りなさいね」


「でもパパ待ってるから」

「きゃわん!きゃわん!」


 ジョージが、こちらを見て吠えている。

 翼は、その女性に挨拶をする。


「あ、どうも。こんにち…」


「何考えてるのよ!!アンタ!!!」


「ええ!?」


「こんな子供1人で歩かせて!!!しかも犬と一緒に!!!」


(犬は別にいいだろ…てか、なんだこのオバサン…めっちゃ怒ってる。コンビニって、変な人、多いもんな…)


「こんなのが居るから!!:Ж→|↑<…は…」


(ん?今なんて…)


「今、なんて言ったの?オバちゃん?」


(あ、良かった、美月にも聞こえてないみたい。噛んだのかな…。とりあえず、そっとしとこ…)


「美月、こっちおいで…」


「待ちなさいよ!その子を家に届けるまで、見届けるわ!!」


(え…怖…なんなの、このオバサン…)


「ほら!早くしなさいよ!!」


 そう言って見知らぬ女性は、翼の手を掴んで来る。


「ちょ…やめてください」


 そう言って翼は、掴まれた手を離す為に、手を軽くふる。

 すると女性の手は、翼の腕から離される。

 そして次の瞬間、女性は倒れる。


(…え!な、なに?!)


「殴られたわああああっ!!!この人に殴られましたぁぁぁっ!!!誰か!誰か助けてえええええっ!!!この小さい子供と犬を連れた男よおおおおおっ!!!」


 それはコンビニの中まで、聞こえていたらしい。

 山下くんと、吉田さんが、外に飛び出して来る。


 中に居たお客さんも、外に居る人も見ている。


「ええ!ちょ!な、なんなんだよ!あんた!!殴ってなんかないだろ?!」


 吉田さんが、走って来て、美月とジョージを抱え、どこかへ走って行く。

 そして山下くんが、翼に耳打ちする。


(この人、犬の散歩とか、小さな子供見ると、その親に絡むんすよ。相手しないでください…)


(え?!そなの…ど、どうしよう?)


(とりあえず、家に避難しててください)


(ええ?!)


 その間も、女性は倒れたまま、叫び続けていた。


 翼は、とりあえず、その場を山下くんに任せて、家へと猛ダッシュする。

 するとマンションの下に、吉田さんが居た。泣いている美月の頭を撫でてくれていた。


「よ、吉田さん!ありがとう!俺、知らなくて…」


「え?!し、知らなかったんですか?!こないだ店長、警察に連れてかれたのに?!」


「えええっ!!!なんで!!!」


「お客さんが、あんな感じで絡まれてて、見に行った店長が参考人として、連れてかれてましたよ」


(それ、連れてかれたって言うの?)


「それで、その時は、な、何だったの?」


「うちの店の近くで、事故あったの知ってますよね?男の人が、子犬と少女を何からか、良く分からないんですけど…守ってあげて。でも、3人とも亡くなったらしいんですよ。その男の人の、お母さんらしくて…って、これ店長から聞いた話なんですけど…」


(そーいや、なんか、こないだも…そんな話を…)


「そ、そうなんだ。とりあえず、ありがとう。あ!お茶でも飲んでく?」


「いえ!私は勤務中なので戻ります!野村さん1人に、任せて出て来ちゃったし…それでは!」


 そう言って吉田さんは、走って行ってしまった。


(あの子…コンビニじゃなくて、警察官とかになった方が良いんじゃないか…)


「お~よしよし!怖かったなぁ美月!俺も怖かったよぉ~だから泣かないで~ぇ~」

「きゃうん…」


 そんな事を言いながら、エレベーターを待ってた時だった。

 エレベーターに、男の人が乗っていた。


(あ、誰か乗ってる…)


 ドアが開くと、こちらをチラッと見て、走ってエントランスを出て行く。


(どうしたんだろ…)


 翼たちは、部屋のソファに座って、パピコを黙って啜っていた。

 ジョージは、下で水を飲んでいる。


「ああああああ!!!俺!!店長だった!!!!何みんなに任せて和んでるんだよ!!!!美月!絶対、家に居ろよ!絶対だからな!絶対、家に居るんだぞ!!あ、これ、振りとかじゃなくてマジなやつな!!」


「ちゅー…ふり、ってなぁに?」

「きゃうん?」


 美月は、意外と呑気していた。

 ジョージもだった。


(フッ…子供って…)


「んじゃ!ちゃんと、お留守番しててな!!鍵!閉めといて!」


 そう言って、パピコ片手に家を飛び出して行く翼。


(ちょっと時間経ったし、もう落ち着いてるかな…?)


 そんな事を考えながら走っていると、いつも見る、花束の場所へと辿り着く。


(ここか…)


 そんな事を思って

 コンビニまで戻ると、人は増えていた。

 しかも警察まで居る。


「律子!何やってんだ!やめないか!」


(ん、あの人…どっかで…)


 翼は、先程エレベーターですれ違った人物を思い出す。


(あ!あの急いでた人だ!ってか…どーなってんの、これ…営業妨害なんですけど…)


「;$:、―/^!!!!;”^:-、!!!!」


(な、なんか叫んでる…聞き取れないな…)


「やめなさい!もう>”;-、:は帰って来ないんだ!もう…」


 先程の急いでいた男も、泣き出す。


(な、何なの…)


「あ、店長!美月ちゃん、大丈夫でしたか?」


「あ、うん。ありがとう山下くん。ところで、これ…」


「あの人の旦那さんみたいです。誰かが警察呼んだみたいで…なんか大事に…」


「なるほど、分かった!」


(ここはビシィッ!っと店長として…)


「あ!アイツだわ!アイツが私を殴ったんです!忠義!おまわりさん!」


「えええ!殴ってないだろ!そっちが手を握って来たんじゃないか!!」


 そしてコンビニの前は、静かになった。

 翼はよろよろとしながら、コンビニへ帰って来る。


「あ!店長!大丈夫でしたか?」


「え…あ、あれ?みんなまだ居たの?!」


 山下くんと、吉田さん野村さんは、バイトが終わってる時間なのに、私服で待っててくれていたみたいだった。


 みんな事務所に集まっている。


 レジには、田所くんと、ロッシーちゃんが居た。翼が事務所へ向かう途中、2人とも心配してくれたが、疲れていて手で挨拶しただけだった。


「それで、どうでしたか?」


 吉田さんが翼に聞いた。


「ん、いや…やっぱり1週間前の事故以来、あんな感じで、なんだか何回も警察のお世話になってるみたい…」


「うちでも2回目ですもんね。あの人…店長と同じマンションらしいですよ?」


「えええっ!!!嘘でしょ?!あ…」


 その時、エレベーターの事を思い出す。


(だから旦那さんが、うちの…)


「それにしたって、やり過ぎじゃないか?あんな…」


 その時、急に野村さんが立ち上がり、狭い事務所を動き回りながら、喋り出す。


「何を言ってるんですか!店長!!私には分かります!母親の子への愛!愛する我が子を失った悲しみにより、ダークサイドへ落ちて行ってしまう、そして阿鼻叫喚するんですよ!!!しかし…夫の愛により…その悲しみを乗り越えた2人は、汽車に乗って…トンネルを抜けると…そこは、雪国だった…」


(な、なんなの、この子…)


「ノ、ノムッチ落ち着いて!」


 野村さんを吉田さんが、なだめている。


「はーい、よーしよしよしよし、よーしよしよし…」

「ふにゃふにゃ…」


 翼と、山下くんは、それを見なかった事にした。


「確かに、俺も気持ちは分かりますけど、あんな風にされると…」


「同情ってよりも、どーじよー?って感じだよな!」


 みんなの白い目が、翼を突き刺す。


「カ…かいっかん♡」


 みんなの目が、ハテナに変わる。


「対策を練らないと、なぁ…このままじゃ、美月も危なそうだし…」


 翼は悩む。

 この間から、翼は考えていた。


「まぁ、店長が無事に帰って来て良かったです。お疲れ様でした」


「店長も早く帰ってあげてくださいね」


「ああ…くわばら、くわばら…」


(だから、なんなの、この子…)


 そして翼は、事務所を出る。


 帰り際、田所くんと、ロッシーちゃんに挨拶をした時だった。

 店の前に、昨日の男女が居る事に気づく。


(あ、昨日の…今日は泣いてないけど…なんか…)


 店を出る翼。


「^、-=;のお母さん、今日もだって…」


「みたいだな…」


「私たちで、何とか出来ないかな?美久とか、誠とかも呼んで…みんなで、なんか…」


(あ!分かった、この子達…友達なのか…今日、母親の息子の…)


 そう思って、また翼は家へと帰る。


 ― 空間 ―


「だ、大丈夫かしら…翼さん…ちゃんと美月ちゃんの事、守れるかしら…スーパーパゥワァが、何だか全然発動してないけれど…かしら…」


「アルテア…少し、かしら。が多いぞ…」


「ゼ、ゼウス様っ?!何故ここに…」


(げ!?も、もしかして私の査定に来たんじゃ…)


「ん、少し用事があってな…」


(嘘よ!嘘!絶対、私を査定しに来たんだわ!騙されない、アルテアっぜーったいに騙されないんだからっ!!)


「…アルテア…」


「…はい、なんでございましょう…」


「聞こえてる」


「え?」


「ワシ、お前の上位ってか、全知全能のだから、聞こえてる」


「きききいいいあえええええ!!!!」



 ― 虹之町 ―


 翼はマンションの自室の扉を開ける。

 リビングの電気がついてる事に、ホッとする。


「ただいま~美月~」


「おかえりなさい」


「きゃううん」


 リビングには、昼間の女性と、縛られ口にガムテープを貼られた、美月が居た。




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