風雲級
次の日、翼は昼と夕方のメンバー全員を集め、話をした。
「えー、ええっとぉ…えー、ええっとぉ。ええっとぉ…」
「あの…私、今日、用事あるんで、早く言ってください!何なんですか?!」
吉田さんが、少し怒っている。
それもそのはず、帰りしな話があると翼に止められ、もうかれこれ、これが10分続いてるのである。
「お、俺も…そろそろ。誠さんとデートあるんで…」
「私も…占いのイベントが…」
「レ、レジしながら、そっちに耳傾けとくの大変なんすけど!」
「僕もです…品出しあるし…」
みんな、今日に限って忙しい。ちなみに、最後に喋ったのが佐藤くんである。
「ええっとぉ、そのぉ…じ、実は…」
「あ!やっと進んだ!」
「実は?!」
「なんですか?」
「お弁当あたためますか?!」
「あ、それ品切れです、すいません」
「実は、今月末で…店を…閉めることになりました…」
「ええ?!」
「は?」
「なんで?」
「お箸何本ですか?!」
「ええ!コーヒー牛乳ですか?!」
翼は、遂に言ってしまった。
と言う様な顔をしていた。
「よく頑張ったね、翼。ここからは俺が話すよ…」
そう言って、棚の影から出てきたのは、シオンだった。
「え、誰?!」
「誰だ?!」
「ん?この匂いは…」
「ええ!潰れるってマジですか?!」
「ちょ、聞いてないですよそんなの?!」
接客していた2人は少し、タイムラグがある。
「みんな、落ち着いて聞いてくれてまえ。僕は昨日、翼と支部の人が電話してるのを、電話線を分配して、しっかりと聞いていたんだ…」
(それ、盗聴ですよ…)
「ここの土地が、何者かに買い取られ、来月からマンションの建設が始まる。なので、ここでの営業は今月が最後なのだ。そうだね?翼…」
「…う、うん」
(こいつ…めっちゃ役に立つじゃん!)
「そういう訳だから、みんな…残念だけど…」
みんなは、悲しそうな顔をしていた。
しかし、自分たちに何か出来る気もせず。
3人は帰り、2人は黙々と仕事をしている。
(はぁ、ロッシーちゃんと、朝の人にも言わないと…気が重い。それに…)
「おかえり~パパ~」
「きゃわーん!」
「お帰りなさい。あなた!」
「おかえり~」
「おかえり~」
(コイツらにも言わないと…てか、俺、無職になっちゃうじゃん。どーしよーぉ?)
「言えそうにないなら、俺から言おうか?翼」
「うわっ!!な、なんで着いて来てんだよ!全然気づかなかった…い、いや、俺から言うよ…やっぱり家族には、自分の口から言わないとな…」
翼は寝れないでいた。
あの後、夕飯の時も話だそうとした。
風呂上がり、寝る前、夫婦が帰る前。亜美ちゃんが帰る前。美月とジョージが寝る前。
タイミングは沢山あったが、全く言える気配がなかった。
そんな日を繰り返して3日。
「ええー!ここ、潰れちゃうんですか?!私、何処で働けば…」
翼はやっと、ロッシーちゃんに報告した。
「ええ!店長、ロッシーちゃんにまだ言ってなかったんですか?!」
吉田さんも驚いている。
「て、てか、みんなでそんな話しないの?」
山下くんが答える。
「あ、いや、な、なんか、みんな…暗黙の了解で、その話避けてたってか…土地、マンション、潰れる…みたいなの避けてて…」
「まぁ、なかなか燃えるシチュエーションではありますけどね。破壊される秘密コンビニ!絶対絶命のコンビニスタッフ!!しかし、謎の悪の組織の魔の手は迫るのだ!戦え!コンビニスタッフ!負けるな!コンビニスタッフゥ~!!!」
「ノ、ノムッチ、落ち着いて…。土地絡みじゃ、アタシ達、戦えないし。まぁ、間違ってはないけど…」
野村さんを抑える吉田さんだったが、いつもの元気はなかった。
「はぁ、ニアちゃんになんて言おうかなぁ…」
とぼとぼと、レジへと入ってくロッシーちゃん。
事務所に1人残って、ボーッとする翼。
机に項垂れる。
「こんな事なら…カーペット、変えときゃ良かったかな…ねぇ、ジョージ…」
そして、翼は寝てしまっていた。
「パパ、起きて、パパ…」
「きゃわーん」
(ん、美月とジョージ?え?夢かな?大丈夫?これ目ぇ開けたら、オレンジ色の液体にパシャッてなったりしない?大丈夫?)
そんな事を考えながら、翼は目を開ける。
すると、机の上に美月とジョージが居た。
「うわ!なんで上に乗ってんの?!」
翼はビックリして、椅子から転げ落ちる。そして、天井を見るとシオンが居る。
「すまない翼。上から降ろしたら、机の上になってしまった」
「いや、そういう事だろうけど…」
(ふぅ…まぁ、いいや…)
「それで?何?」
翼は椅子に座り直す。
「悪魔~!」
「きゃわーん!」
「え?」
翼は、天井を睨む。
「ち、違う!美月ちゃんの話を聞いてくれたまえ!」
「美月の、話?って…」
そう言って美月を見ると、目の前には美月はもう居なかった。
「うええええっ…んぐ、んご…」
天井を見ると、目から涙を流し、手に十字架を持っているシオンの姿があった。
そして、翼の口を抑えているのは、見知らぬ少女。キラキラ光っていて、頭の上には輪っかがある。そして、背中には羽が生えていた。
ジョージを抱えている。
「驚かせて、ごめんなさぁい、私は天使ミツキエル。あなたを守る為に、ずっとお傍におりましたぁ」
「え?」
「ですが事態は急変しようとしていまぁす。私を守る事で、あなたのスーパーパゥワァを覚醒させ、来る悪魔軍との戦いに備えるつもりだったんですけどぉ。悪魔軍よりもっと凄いのが、ここに来る予定でぇす!」
そう言って、ラッパを取り出すミツキエル。
「これぇ、世界の終わりを告げるラッパなんですぅ。ラファエルさんから預かって来たんですけどぉ。吹きますか?」
「なんでだよ!吹かねぇよ!」
「んで、翼さん。お願いがあるんですぅ!」
「な、何…」
「おおっ!神よ!我が親友を守りたまえっ!!」
「え?!な、何?!怖いんだけど?!」
「翼さん!また、死んでもらっていいですかぁ?!」
「え?んで、また?って、どゆこと?」
― 空間 ―
「あっちゃー、アイツぶっちゃけちゃったぞ…アルテア…どういう教育しとるんだね、君は…しかも大事なラッパ、持ち出してるし…」
「え、えっとぉ…私の、せいになるんですか?あれ?」
「あのアホアホ天使の上司だろぉ?君があ!ちゃんと指導しとかないから、こんな事にだねぇ…」
「は、はい…すいません…」
(アイツ、帰って来たら地獄に落として堕天さしたるからな!!)
「アルテア…」
「は、はい…なんですか?ゼウス様」
「最近、堕天多いの、お前のせいじゃないだろうな?」
「な、何のことでしょう~オホホホ」
「…。」
風雲級を告げる、HISON 虹之町店!
店の運命は、翼の運命は、そして、みんなの、いや、この世界の終わりはやって来るのか?!
次回、最終回!!!
虹の涙に、君は涙する。




