徳レベル10
HISON 虹之町店は、一瞬にして薔薇の花園となっていた。
「店長!俺は、ここへ買い物に来た時、あなたに一目惚れし、ここへバイトに来たんです。でもノンケだし、結婚してるし、お邪魔にならないよう、お力になれればと思ってここで働いてましたああああっ!だから、こんな変な奴と付き合うなら、僕と付き合ってください!!」
(何が、だからなの…?)
それを聞いた誠は、顔つきが変わる。
「ふふ、アタシに戦いを挑んで来るとは、身の程知らずもいい所ねっ!ちょっと若いからって調子にのらないでちょーだいっ!店長…まだアタシ達、会って数分しか経ってないけど…これって、運命の出逢いよね?分かってたわ…あなたが私の事、一万二千年前から、愛してたってこと。いいわ、付き合いましょう!私と!!」
(なんで俺が愛してた事になってんだよ…)
ここで律子と忠義の、後ろで見ていた、夏美という子が前へ出て来る。
「もう、誠!場をややこしくしないのっ!ただでさえ、ややこしい存在なんだから、店員の男の子に譲ってあげなさいよ…ね?お母さん?」
そう言って、律子の肩にそっと手を置く。
(何が、ね?お母さん?なの?モーニング娘なの?)
「そうねぇ…私は、別にぃどっちでもいいんだけど…二人とも翼には、勿体ないくらいイケメンだし…ねぇ、あなた?」
そう言って、律子は忠義の肩にそっと手を置く。
「う、うう~ん。理解はし難いが、愛の形は千差万別、十人十色…。認めざる負えんな!ねぇ~?美月ちゃん?」
そう言って忠義は、しゃがんで美月の肩にそっと手を置く。
「らぶらぶらぶ~!」
「きゃわ~ん!」
(コイツら…。ど、どうしよう。このオネェはいいとして、山下くんの気持ちが痛い。ちゃ、ちゃんと俺の気持ち伝えないと…)
「あ、あのぉ…山下くん…?お、俺はね…」
そう言った時だった。
「夏美?誠も何やってんだ?お前らも、;:…、-のオバサンとこ行こうとしてたのか?」
いつも店前で、夏美と呼ばれる子と一緒に居る男と、見知らぬ女の子が1人居た。
それを見た夏美が、声をかける。
「あら?陸に、亜美ちゃん…。あなた達も、今日行くつもりだったの?仕事だと思って、誠と一緒に叔母様の所、訪ねたら…新しい息子さんを紹介されて、誠とバイトの男の子が、ねるとん紅鯨団なのよ…」
「な、なんだそりゃ…」
すると陸の隣りに居た、亜美という子が翼の元に走って来る。
「ちょっとまったあああああああっ!!!」
「わ!亜美ちゃん?!どしたの?!」
隣で叫んで走り出す亜美を見て、陸が驚く。
「わ、私!;―-…:君の元彼女なんですけど!:…-*'君が死んでから色々と!思い出してて!なんで、別れちゃったんだろうって…だ、だから!”*-…=君のお母さんの新しい息子さんなら、*:^'…君と同じだし!私と付き合ってください!お願いしまああああああああああっす!!!」
「喜んでぇ!!!!」
翼は、食い気味に返答する。
「ええ!返事早っ!!」
一同は、驚く。
「僕は…君を妻に迎えるよ…亜美ちゃん…」
「えっと…名前知らないけど、あ、店長って書いてる。えーと、馬一 翼さんっ!!私を波の数だけ抱きしめて!銀河の果てまで!!」
「か、母さん…」
「あなた…」
忠義と律子は、寄り添い合い、涙を流している。
「ふふっ、残念だったわね…でも、あなたの気持ち…愛だったわよ…坊や…」
誠は、膝と手を着いて、ガッカリしてる山下くんに向かって、手を差し伸べる。
「…ふっ、あんたも年の割りには、なかなかだったぜ…えーと、名前は?」
誠の手を握る、山下くん。
「誠よ…よろしくね!」
「山下…です。あの…誠さん!」
誠は人差し指を、山下くんの唇に当てる。
「そーゆー所が、坊やだってば…」
「ま、誠さん…」
何故だか2人は、抱き合って居た。
律子と忠義、誠と山下くん、翼と亜美ちゃん、ついでに美月とジョージは、コンビニの前で抱き合っていた。
「え、えーと…陸…」
「お、おう…な、夏美!」
余った2人も、とりあえず抱きついた。
しかし、2人は思っていた。
(私…)(俺…)(既に結婚してるしな…)
コンビニの中では、それを吉田さんと、野村さんが見ていた。
「ありがとうございまあああああああああすっ!!!」
と言って、吉田さんは倒れ。
ノムッチは、
「恋難には、こういうタイプのモノもあるのね…メモメモ…」
と、1人でレジを担当する事になっていた。
― 数分後 ―
翼は事務所で、寝ていた。
隣では、何故か亜美ちゃんが事務処理をしている。
PC操作などは得意なようだ。
亜美ちゃんは、一段落したのか眼鏡を外して翼を見る。
ボヤける視界、何故か胸が熱くなる亜美。
「;='…*:…」
そう言って、亜美はハッとする。
「や、やだ…アタシ、何言って…」
目に涙が、溢れて来る。
1人、翼を見ながら泣く亜美。
翼が、目を覚まそうとする。
「泣いてちゃダメだよね…」
そう言って、泣き止む亜美。
「ん…うわぁ!だ、誰?!あ…そ、そうだ。あんた…」
「もう!あんたじゃないでしょ?亜美って呼んでよね。ダーリン!」
「え?ダーリン?てか…あれ、本気じゃないでしょ?」
「…え?本気じゃないの?私は…本気…よ?」
(ど、どうしよう。あの場を丸く収めるには、この子の申し出を、受けるのが1番だと思っただけで…)
「そ、そっかぁ…アハハハハ…」
「あ、そうそう。これ書いて、婚姻届。さっき、あなたのお母さん達が持って来てくれたの」
(あのクソ夫婦…!)
「い、いや、落ち着いて…亜美ちゃん。僕ら会ったばっかりだし、僕は子持ちSHISHAMOだよ?それにあのババアが姑になるんだよ?良く考えて?」
「おば様達には、何回も会ってるから大丈夫です。個性が少し有りすぎるだけですよ。それに私、女の子欲しかったし、ワンちゃんも大好きだし…それに…」
「そ、それに…?」
「恋に時間は関係ないと思うんです!!」
「いや!あるでしょ!!!」
その時だった。
事務所のドアが開き、ロッシーちゃんが入って来る。
「おはよぉございます!店長!…と、誰ですか?はじめまして、私、ロッシーです。よろしくお願いします!」
「…」
「…」
その後ろから、田所くんが来る。
「え?!ロッシー何やってんだよ!今日、お前、休みだぞ!」
「…え?」
「なんかシフトを、変えるとか言って…ん?あの人、誰だ?ロッシー…」
(そう言って、ロッシーと田所くんがゴニョゴニョ話している)
「お二人共、申し遅れました。私、馬一 亜美と申します。本日付けで、翼の嫁となりました。以後、お見知りおきを…」
「ええ?!店長の奥さん?!す、すいません。気づかなくて…よろしくお願いします!」
「店長の奥さんなんだ!よろしくお願いしまぁす!!フゥー!ラブラブゥ!」
田所くんと、ロッシーちゃんは、お辞儀をする。
「いやいやいや!二人とも早まらないで?!まだ、決定したわけじゃ…」
そこへ、聞き慣れた声がする。
「パパー、バァバが早く帰って来いって…」
「うぇ!?!美月?!あれ?ジョージは?」
指差す先を見ると、山下くんが外でジョージと走り回っていた。
「ふぅ…じゃ、あとよろしくね。田所くん。あ、佐藤くんも来るんだよね、今日は。何かあったら連絡してね。あとロッシーちゃん、今日休みだよね?ウチ来る?どうせ、呼びに来るくらいだから、またバカみたいに豪勢な料理作ってると思うんだよ、あの早とちりババァ…」
「あ、す、すいません。私、ニアちゃんが待ってるんで、家、帰りますね!お疲れ様でした!」
そう言って、走って行ってしまった。
(走るの速ぇ…)
「じゃ、帰るか美月!」
そう言って、美月を抱きかかえる。
「美月ちゃんって、言うんだ…よろしくお願いします。亜美って言います!今日からママって呼んでねぇ~」
「ママー!」
「お、おい、美月…」
― 空間 ―
「なんだか、トントン拍子に話が進むな…」
「うーん、BL展開、イマイチでしたね…新カプは出来上がりましたけど…」
(そこなんだ…)
「ところで…徳レベルが10になっとる。アレが起きる前に、何とかするんだぞ、アルテア…」
「こっちとこっちのカプの方が…私的には…ゼウス様、え?!あ!?この人なんですか?!先に言っといてくださいよ!」
「いや、資料渡してただろ…」
(やっば、読んでなかった…)
「あー、アレですよね!アレぇ~?!」
(アルテアよ…逆に、そんなんで良くこの地位まで昇って来たな…逆に凄い。逆に凄いから、ゼウス何も言わない…)
― 翼宅 ―
「さ、レッツパリナーイ!」
「かんぱーい!」
「かんぱい!」
「かんぱーい!」
「きゃわーん!」
「…」
翼、以外はとても楽しそうにしていた。
(冷静に考えろ俺。ノリに流されやすい俺でも、この状況はおかしいと思えるぞ!いや、常軌を逸してるだろ…)
そう言って、新しく加わった亜美を眺める。とても楽しくしている。
(今日、コンビニの前に来た時の顔…なんか、暗かったのにな…)
そう思った翼は、もう考えるのをやめた。
「みんなぁ!!!もっかい乾杯しようぜぇ!!!」
「ヒュー!そう来なくちゃ!」
「よく言った!翼!」
「ダーリン♡」
「パパー!」
「きゃわーん!」
「かんぱーーーーいっ!!!」
こうして、また、家族が増えた翼だった。




