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僕はみんなの傍に居たい。  作者: 一ノ元健茶樓
10/14

恋難

 


 翼たちは、朝食をとっていた。


「はい、美月。あんまりバター塗りすぎるなよ」


「はぁい!」

「きゃわん~!」


 三人、和やかに朝食を摂る風景。


(そうだよ!これだよこっれ!ああ、やっと俺達の平和が戻って来たぜ)


 その時だった。


 ピンポーン、ピンポンピンポンピンポピンピピピピピピッ!ドンドンッ!!


(絶対、開けねぇ!!)


「馬一さぁん!郵便ですぅ!!」


 その声は、あの夫婦のものでは無かった。


(ん?ほんとに郵便?でもウチ、オートロックなんだけど…)


 そう言って、玄関まで足音がたたないように行き、ドアの穴から外を覗く翼。


 すると

 外に居るのは、佐本急便の人だった。


「居ないのか…」


 そう言って帰ろうとする、佐本の人。

 翼は慌てて、ドアを開け、


「あ、すいません!居ますよー」


 と言った瞬間だった。


「…そりゃ、居るわよね…」


 と言って、ドアの影に隠れていた律子に、腕を掴まれる。


(ひいいいいいいぁっ!)


 そして忠義は、佐本の人に千円を渡していた。


「さ、美月ちゃん、食べてぇ。朝からパンなんてダメよ?スカスカじゃない。ねぇ~?」


 そう言って、翼を見る。


「そうだぞ、美月。朝はいっぱい食べても太りにくいんだ。食べるなら朝にしなさい、朝に!そして、ジャジャ馬でもいい、逞しく育って欲しい!」


 忠義は、なかなかに体格が良かったので、太らないに疑惑が残る。


(ハムの人かよ…)


「あ、あの…律子さん、忠義さん?朝から何故?」


「朝だからでしょ!可愛い美月ちゃんに、変なもの食べさしてるんじゃないかと思って来たのよ」


(朝から変なもの食わせる方が難しいだろ…)


「そうだそうだ」


 そう言いながら、忠義は腕を組み頷いている。


「ほらぁ~おじいちゃんですよォ?お小遣いあげるねぇ~」


 そう言って、美月に千円をチラつかせている。

 それを翼が取り上げる。


「やめいっ!!」


「あ、お前にはやらん!返せ!!」


「返さん!!!」


 そう言って、翼はパンツの中に千円札を入れる。


「うわぁ…親の顔が見てみたい…」

「そうね…苦労したでしょうね…育てるの」


(あんたらに言われたくねーよ!)


「って、てか…お父さん。仕事は、してるんですか?」


「え?あー、うん…」


(…怪しい)


「じゃぁ、なんで行ってないんですか?」


「そ、それはそのぉ…」


「この人、息子が旅に出てから仕事休んだまま、行こうとしないのよ…」


(…旅。まぁ、それはいい。なんで行かねぇんだ?)


「あ、こら律子!言うんじゃない!」


「なんか…休んだら、行きたくない。とか言って行こうとしないの…」


(夏休み明けの小学生かよ…)


「いや、忠義さん!ちゃんと仕事行ってください!じゃないと、1人減らな…いや、家族を守れないでしょ?!いつも家で何してるんですか?」


「ボトルシップを、作っている!!」


(デカい図体してんのに、趣味こまけぇ!!!)


「そして、ボトルシップ作りに飽きて、律子に何か食べるものを作ってもらおうと、家を探すが、いつも居なかったんだ」


(いや、ずっと見張っとけよ!!24時間セコムしててぇ?!)


「な、何なんですか…それ…」


「さ、ここは任せて、翼は仕事へ行って…!ふふ、アタシ達の事は…気に、しないで…」


 倒れる律子。


「り、律子?!だ、大丈夫か?ほら、これを飲むんだ…」


 そう言ってテーブルの上にある、牛乳が入ったグラスを律子に手渡す。


「ンクッ…ンクッ…さ、翼…行って…」


「これで闇に支配されていた、律子の身体は大丈夫だ!さぁ、行くがよい!翼よ!」


(なんなの…)


 しかし、時間を見ると出勤時間ギリギリだった。

 翼は慌てて用意をして、家を出ようとする。


「あ!翼、これ!」


 そう言って律子が、お弁当と思わしき包みを持って、走って来る。


「え、何これ?」


「見りゃ分かるでしょ!お弁当よ!さ、行ってらっしゃい」


「行って来い、翼!」


「パパ、いってらっしぁい」

「きゃっわ~ん」


「み、みんな…お、俺が無事に帰って来たら、みんなでお祝いしてくれよな!」


 そう言って、エレベーターの方へ走って行く翼。


(もうめんどくさいからノリに乗ったけど、めっちゃ恥ずかしい。ムリ)


 店の前へ行くと、あの夫婦の息子の友達と思わしき、女の人がいた。その隣りに居るのは、いつもの男ではなかった。


(美形だな…モテるんだろな…)


「…、;:^ったら、アタシ達を置いて、逝っちゃうなんて酷いわよね!あ、逝っちゃうって、そっちの意味じゃないからぁ」


(オネェなんだ…)


「マコッチ…今度、みんなで…」


 翼は、急いでいたので店に入った。

 すると事務所からロッシーちゃんが出て来て、こちらに来る。


(ん?あれ?ロッシーちゃん?何してんの、こんな時間に…)


「みんな、おはよぉ~」


 翼はみんなに、挨拶をする。


「ロッシーちゃん、店長に話があるみたいで、ずっと待ってたんですよ」


 と、山下くんが言う。


(え?!朝から待ってたの?!なんで?!)


「朝からじゃないですよ、店長なら勘違いしそうだから付け加えておきますね」


(山下くん。分かってんじゃん?俺のこと☆)


 翼は山下くんに、ウインクする。

 山下くんは、笑顔でウインクしてくれる。


(うーん!山下くぅん!!)


「あ、あの…店長。おはよおございます。店長って、遅く来て、早く帰るんですね。私、知らないくて、待っててすいませんでした!」


(あーん!ロッシーちゃぁん!!無邪気って怖い!)


「い、いや、こっちこそゴメンね。僕が悪かったよ。それで、なんで待ってたの?」


 ロッシーちゃんは、何故かモジモジしながら目を横に流す。


(え?ええ?!こ、これは…も、もしや?!告白か?!俺の事、好きなのか?!でも、こんな店の入口で?!いやいやいや、やりかねん。ロッシーちゃんならやりかねないぞぉ?)


「ロ、ロッシーちゃん!とりあえず事務所へ行こう!新しいママになるのは!その後だ!」


「え?ママ?あ、はい。それじゃ事務所行きましょう…」


 事務所へ入る2人。

 何故か、翼もモジモジし出す。

 もう気分は、伝説の木の下だ。


「そ、それで…話、って…」


(あー、ドキドキする、あー、ドキドキするぅ!)


「あの…店長…」


「は、はい!オッケーでえええっす!!!」


「え?オッケーですか?やった!良かった、これでニアちゃんの晩御飯作ってあげれる!ありがとうございました!お疲れ様です!あ、今日の夜は、私、休みなので、明後日、またシフトの相談お願いしますね!お疲れ様でした!」


 そう言って、ロッシーちゃんは事務所を出て行った。


「…ふぅ…寝よ…」


 そして、翼は眠りについた。


「なぁ、翼…お前、死んだんだよ?俺…寂しいよ。友達少ねぇのに、俺…」


 翼は、何か夢を見ていた気がしたが、目覚めると忘れてしまっていた。


 時計を、見ると10分しか経っていなかった。


(全然、寝てないじゃないか…んー、眠く無いし、仕事でもするか…)


 そう思って起き上がり、PCの電源をつける翼の横に、野村さんが立っていた。


「うわあああああああっ!!!」


 派手に椅子から転げ落ちる翼。


「な、何してんの?!野村さん!?いつからそこに?!」


「さっきです。昨日ですね。店長の事を占ったんですけど…」


(え、なんで俺の事、占ったの?!)


「なんと、恋難のお告げがありまして…私は、店長にそれを伝えるべく、ここに舞い降りたのです」


(いや、立って起きるの待ってたんだよね?店、暇なのかな?レジは?)


「こ、恋難って…俺、娘がいるし…再婚は…」


「何を言って居るんですか?!恋…それは、愛。愛、それは恋。交差する想いを好きに伝えて、男と男、女と女が、その想いをぶつけ合い、バトルする、ここはラブコロセウム、小宇宙を燃やし、今こそ放つのですっ!ペガッ…」


「はーい、そこまでぇ~!」


 翼は、何故か本能的に、止めなければならないと思った。


「でわ、そういう事ですので、お気をつけくださいね。店長…」


(だから、なんなの、あの子…。恋ねぇ…そーいや、恋なんて全然してな、ってか俺、結構してるし、全然覚えて無いけど奥さん死んで、ショック過ぎるのは俺の方なのかもな…セラピーでも行こうかな…)


 そう言って、来たばっかりなのに弁当を食べだす翼。

 開けるとメモが入っていた。


 《今日はキャラ弁よ 律子より》


(キャ、キャラ弁?!なんのキャラだろ…)


 そう思いつつ、弁当の蓋を開けると、弁当の3分の2を占める米の部分に、緑色のゼリーの様な物が乗っていて、目が2つと笑った口があった。


(やりやがったな…あのババア)


 とりあえず、食べてみる翼。


(ん、何かは分からんが、美味いな。あのオバサン、あんなだけど料理出来る人なんだな…)


 そんな時だった、事務所へ吉田さんが、事務所へ勢い良く入って来る。


「店長!皆さん、来てますよ!!」


 驚いた翼は、弁当を隠し、食べてた物を、一気に飲み込もうとする。


「ンッ!ングーッ!」


 何か良く分からない緑の物体が、翼の喉に詰まっている。


(み、水ぅ~!これが狙いか、あのババア!?)


 落ち着いた、翼と吉田さんは、事務所を出る。


(嫌な予感しかしない…事務所、出るの嫌だな…)


 そして案の定、店の前に、律子、忠義、美月にジョージが居た。


(今度は何なんだよ…もう面倒はやめてくれよ…ん?)


 みんなの後ろに2人、女の人と、男の人がいる。


(この2人って、さっき店の前に居た…)


 外へ出るなり、律子が叫ぶ。


「もう!翼!何してるの?!遅いじゃない!」


「わ、悪い…」


(あんたの作った、バブスラが喉に詰まってたんだよ!!)


「夏美ちゃん、誠ちゃん、私たちの息子よ。よろしくね!」


「こら!翼、友達にちゃんと挨拶しないか!」


 忠義が、畳み掛けてくる。


「あ、あの…=…、:;-君のお母さん。息子さんって、こ、この人なんですか?」


「あら、あたしタイプかもぉ!よろしくお願いしまぁす!誠でぇす!キラッ」


 そう言って、誠は翼の両手を握り、握手する。


「あ、ああ…どうも…」


 その時だった。

 店内から、山下くんが走って出て来た。


「ちょっと待ったああああああああぁぁぁっ!!!」


(え?え?何?どしたの山下くん?!)


「僕は、面接の時から、店長の事がタイプでした!よろしくお願いします!」


 そう言って、山下くんは翼に頭を下げて、両手を差し出す。


「おおおっと!?ここで乱入者だぁぁぁっ!翼はどうするのでしょうか?どう思いますか?忠義さん」


「そうですね、律子さん。これは、なかなかにイレギュラーな事態ですね。男の翼に、2人も男が言いよっていたとは、驚きです!!」


「おどろきー!」

「きゃうん~!」


 何故か、美月とジョージもノリノリだった。


(アイツらと一緒に居させ過ぎたかな…美月まで汚染されて来たんじゃ…てか、なんなんなの?!なんなのこのシチュ!?1人は分かるよ?!初登場からオネェだったもんね?!山下くん?!山下くんは何なの?!何なのぉぉぉぉっ~?!)


 翼の心の叫びは、全宇宙に響き渡った。


 ― 空間 ―


「キタキタキタキタキタキターッ!うっひょー突然のBL展開ですよ!ほら!ゼウス様!?」


「あ…ああ、BLってなんだ?あれは、男同士では無いのか?」


「ボーイズラブですよ!ボーイズ…んー、三十路過ぎたオジサン2人と、二十代半ばの青年1人ですけどね…」


「お前の問題は…そこなんだ…」


(コイツ、邪念が全くないぞ…ッ!!)



 ― 虹之町 ―


 果たして、3人の恋の行く末は…。



 続く!




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