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猫15匹目 闘技大会

いろいろ考えすぎて時間がかかってしまいましたね

ま、ちょろちょろ忙しかったのもあるんですが

 たまみさんが示したビラにあったのは『第8回闘技大会開催のお知らせ』


 闘技大会とはもちろんPvPコンテンツ、つまりプレイヤー同士が戦う大会である。

 そして第8回ということは過去に7回、闘技大会が行われたということでもある。


 NEOにはPKこそ存在しているがそのデメリットは大きく、またスタートとなる国家も単一であるため、対人コンテンツは弱いとされている。

 対人コンテンツが活発だとそれに伴いNPCの犠牲が出るからだという噂が存在するが、それでも殺人や戦争でNPCが少なからず犠牲になるのがよりリアルなNPCを追求するNEOであるとも言える。


 そのような中で公式の対人イベントである闘技大会は対人好きなプレイヤーにとってはまたとない機会だった。


 もちろん決闘や普段の闘技場の利用などでデメリットのない対人戦闘は存在するが、デメリットがない上でさらにメリットがあり積極的に参加者が集まる対人となるとこの闘技大会しかない。


 ただし、そこはNEO、ただのPvP大会では終わらない。

 なんとこの闘技大会、NPCも参加してくるのである。

 そして参加してくるNPCも人数が少ない時のための数合わせなどではなく、NEO内で有数の高LvNPC冒険者や闘技場に積極的に参加しているNPCランカー達である。

 実際にNPCに優勝を持って行かれたこともあり、個人戦では第2回の優勝と、第4回の準優勝、団体戦では第3回と第4回の優勝をNPCに持って行かれている。


 もちろん、NPCに対人イベントの優勝を持っていかれることはプレイヤーにとっては屈辱である。


 打倒NPCの名のもとに徹底した対人戦闘訓練が行われ、レベルキャップに達したカンスト勢が徹底的に鍛え上げたその実力でここ最近はNPC達を蹴散らしていた。



「この闘技大会って今じゃカンストのガチ対人勢たちが集う場所ですよ? 2次転職もしてないのに乗り込むところじゃないですって。」

「にゃ~~~?」(そんなの、やってみないとわからないじゃない? と少し自信有りげに見える。)

「たまみちゃんなら結構いいところ行くんじゃないですか?」

「闘技大会に出てくる連中は物理攻撃が多いからな。普通の単体攻撃ならたまみさんに当てられないかもしれん。」

「ただ、連中は何回かNPCに優勝を持って行かれたせいでNPCを目の敵にしてるからな。どんな手を使ってくるかわからないぜ?」

「でも闘技場のステージが狭いせいで後衛職がでてけぇへんから、範囲攻撃を使ってもたかがしれてるんちゃう?」

「うーん、そう言われると、いけそうな気もしてきますが…」

「にゃーーー」(とにかく、出場するのよ と意気込んでいるように見える。)

「ま、それを決めるのはたまみさんなので、僕はその手続きを手伝うだけです。登録は闘技場の受付でやってるそうですよ。」

「にゃ!」(すぐ行くわよ と鼻息を荒くしているように見える。)

 たまみさんはさっと酒場を後にし颯爽とドライの街へと歩き出したが、目的地も知らないのに前を歩きたがり適当に進むのはよくあることだ。

「たまみさん、逆の方向ですよ。闘技大会の行われるコロシアムは街の南側にあるんです。」

 僕はそんなたまみさんの後を慌てて追いかけて方向修正するのもよくあることだった。


「ようこそグランド王国、国立コロシアムへ。ただいま第8回闘技大会の参加受付中です。」

 なかなか美人の受付のお姉さんが爽やかな挨拶を僕にプレゼントしてくれた。

 ちなみに、普段はいかつい兵士っぽいおっさんが、闘技場への参加を受け付けてくれるだけである。

「すいません、代理で闘技大会への受付をしたいんですが。」

「代理、ですか?」

 受付のカウンターの上にたまみさんがひらりと飛び乗る。

「にゃ~」(あたしが参加するのよ と説明してるように見える。)

 だがもちろん、受付のお姉さんにはたまみさんの言葉はわからない。

 NEOのシステム上配置されてるNPCならあるいはわかるか?とも思ったが、いまのところたまみさんの言葉を直接理解できた人間のNPCは一人も存在しない。

 街中に存在する猫や犬のNPCには通じている感じはするが、今度は僕がそっちの言葉がわからないので通じている気がするだけかもしれない。

「この黒猫のたまみさんが参加する受付を、僕が代わりにしたいんですよ。たまみさんは字が書けないので。」

「こ、この猫ちゃんがですか? 参加には最低限の資格が必要ですが…」

「冒険者ギルドのEランクで良かったですよね? ほら、たまみさん、お姉さんに冒険者カードを見せてあげてください。」

「なぁー」(仕方ないわね とめんどくさそうに見える。)

 そして、提示された冒険者カードをまじまじと見る受付嬢。

「た、確かにEランクになっていますね。参加資格は満たしていることになります。…猫をEランク昇格試験にパスさせるなんて、一体どこのギルド職員かしら…」

「試験の相手はセカンの街の冒険者ギルドのマスターでした。ま、後で照会してみてもいいですが、この冒険者カードは本物なので受付はお願いしますね。」

「はぁ、偽造できないことは分かっているので、本物なのでしょう。仕方ありません、受付いたします。」

 戸惑ってる受付のお姉さんが少し可哀想な気もする。

 それと同時にこの自然な戸惑い具合がNEOのNPCだよなと感心したりもする。

「たまみさんは個人戦に出場でいいんですよね?」

「なぁー」(そうよ と頷いてるように見える。)

「といことで個人戦に登録でお願いします。ちなみに僕は出場しないので。」

「はぁ、では参加者の氏名の記入と参加費の方をお願いします。」

 帳簿にたまみさんの氏名を記入し、一人分の参加費を収める。

 ちなみに、僕は闘技大会に参加したことはない。

 ここは最前線組でもない器用貧乏なプレイヤーが参加する場所ではないのだ。

「さすがに初参加でしょうから予選からとなります。予選の形式はバトルロイヤルで組み分けは前日に発表されます。予選開始30分前までにコロシアム控え室に集合してください。」

「僕も直前まで付き添いますが、控え室まではいけませんし、たまみさんを召喚するようなことはできませんからね? 忘れてフィールドに出たりしないでくださいね?」

「にゃにゃにゃ~~~」(わかってる、せっかく人間を狩る機会なんだから、忘れないわ と物騒なことを言ってる気がする。)

 たまみさんは、敵対する犬猫はもちろん、人間を引っ掻くのも大好きである。

 ただ、理由もなしに引っ掻くと周りが大騒ぎするのは理解しているので、普段は我慢しているだけなのだ。

 ま、この様子なら忘れずに集合時間には来てくれそうだと思う。



 闘技大会は次の土日に行われる。


 受付が開催の三日前までだったので、ちょうど良くドライの街に来たと言える。

 土曜が予選、日曜が決勝。

 それまでに対策として仕込めるものは仕込み、たまみさんもできる限りレベルを上げた。

 普通なら、ここに装備の更新が入るのだが、たまみさんは防具も武器も装備できないので出来ることは限られてくる。

 アクセサリは多少装備できるようだが、首輪はもう気に入ったものを装備しているので、たとえその首輪に追加の効果がなくても変更不能。

 また、前足に付けるものは攻撃の感覚が変わるからと却下され、なんとか後ろ足に一つ足輪をはめることを了承してもらったくらいだ。

「さて、出来ることはこんなところですかね。」

「にゃ~~~」(そんなに心配しなくてもなんとかなるわよ と気楽に考えてるように見える。)

「いっそのこと、マントつけさせたり、甲冑着させたりしたらいいんちゃう? そういうんを見た覚えがあるやろ。」

「あれは飼い主が面白がって着させてるだけよぉ~。じっとしてるならともかく、動き回るときは嫌がるとと思うなぁ。」

「たまみさんは賢いので、ああいうのは受け入れてくれません。」

「可愛いと思うんやけどなぁw」

「LILICAの妄想はともかく、ほかに対策というと対戦相手の情報か?」

「トールもそうだろうけど、俺たちも闘技大会には出てないからよく知らないんだよなぁ。」

「あたいは参加はしとらんけど、観戦は毎回行っとるで。なんといっても、賭けがあるからな。勝つためには、情報が命や。」

「ってことは、情報はあてにしていいのか?」

「ま、闘技大会上位は基本的に近接物理職が多いから、対策いうてもたかが知れとる。当たらなければどうということはないちゅうやっちゃな。今のところの大本命は”高速盾”アラミスと”斬馬刀”魏魏丸やけど、たまみさんにとっては予選の方が問題やろうな。やっぱり範囲攻撃のある魔法使いが予選グループにおるかが問題や。」

「予選の相手については、その前日にならないとわかりませんからね…」

 そんな我々の心配をどこ吹く風と、たまみさんはのんびり餌をカリカリと食べているのであった。



 そしてあっという間に時は過ぎ、第8回闘技大会予選を迎えた。


 NEOの闘技大会では、前回大会の成績と常設闘技場のランクによって予選が免除されたシード選手が存在する。

 決勝は16名によるトーナメント形式で行われるが、前回大会のベスト8の選手、及び闘技場ランクの上位3名がシード権を得る。

 予選は5枠だけ?と思うかもしれないが、実際には前回大会の参加者から欠席する選手が現れたり、ベスト8の選手と闘技場ランカーが被っていたりして、だいたいシード選手が7~9人に収まる。

 今大会について言えば、前回ベスト8から欠席者が1名、闘技場ランカーの1位と3位が重複していたため、シード選手は8名となった。

 つまり、予選から通過するのは8名。

 それに合わせてそれぞれのグループの人数が決まり、くじ引きによりグループ分けが行われた。


「たまみさんは第3グループ、お昼前くらいの組ですか。頑張ってくださいね。」

「にゃ~~」(あたしの勇姿をしっかり見ときなさい とやる気満々に見える。)

「たまみさんのグループには”破城鎚”バイバラがおるな。周りの連中も警戒するやろうから、まずはそいつらを噛み合わせて、数が減ってから最後にかっさらうのがええで?」

「第3グループは20人か。ほかのグループもそのくらいのようだが、本当に強い人なら一人で全部倒しきっても不思議ではない人数かな?」

「まぁ、たまみちゃんにとってはその他大勢の中に魔法使いがいるかが問題よね。流れ魔法に巻き込まれないように気をつけてくださいね。」

 たまみさんは任せておけとばかりにフンスと鼻を鳴らし、悠々と予選会場に向かった。

 僕たちは観客席の方へと回る。



「おいおい、まさかこの猫も参加者なのか?」

 予選第3グループが会場に入り開始の合図を待っている時に、一人の軽薄そうな盗賊系の若者がたまみさんに気づいて驚きの声を上げた。

「ここにいるってことはそうなんだろうさ。ま、猫でもひと枠だって考えれば俺は大歓迎だぜ。」

「はっはっは、ライバルは弱いほうがいいってな。」

 観客席からもその様子が見て取れ、数名のバカ達がたまみさんが同じグループでよかったと喜んでいる。

 僕から見れば、そこでたまみさんを怒らせないでくれとも思ったが観客席からそいつらに忠告するのは不可能だった。

「ふははは、猫であろうと全力で叩き潰すのみ。わがハンマーのシミにしてくれようぞ。」

 バイバラもほかのものたちと一緒になってたまみさんを煽っていた。


 それがこの予選グループの運命を決めたとも言う。


 開始の合図とともに、一陣の黒い風がコロシアムを吹き抜けた。


 あらかじめ我々が入れ知恵していた作戦などはもう関係なかった。

 たまみさんはまず”破城鎚”バイバラの後ろにシャドウステップで現れると、延髄に強烈な猫パンチを4連撃で叩き込み、その硬い防御を無視するかのようなクリティカルで一気に沈める。

 そしてそのまま軽口を叩いていた盗賊系の若者たちに一気に迫り、あっという間に爪の錆にした。

 そこからやっと魔法使い系を先に狙いましょうというアドバイスを思い出してさくっと三枚におろし、突然の展開に振りそそぐ大量のダメージパーティクルの中で右往左往する者たちを次々と屠っていった。


 気付いたときには予選第3グループの他の19人をたまみさん一匹で倒していた。


 あまりの展開に司会も観客も声を上げることもできず、最後の一人が消え行く光の中で悠々とたまみさんがヒゲの掃除を始めたところでやっと大歓声が沸き起こった。


 それと同時に大量のハズレ券が宙を舞う。


「しっしっし、予定とは違う展開やったけど、結果オーライや。稼がせてもろたでぇ。」

 LILICAはたまみさん一点掛けをしていたのだろう、ホクホク顔で掛札を換金しに行く。

「ま、僕もご祝儀とはとても言えない金額をたまみさんに賭けさせられたんですがね。」

 元はたまみさんのお金なので、賭けろと言われると断ることはできない。

 もっとも、僕個人のお金もたまみさんに賭けてはいたのだが…。

「破城鎚のいるグループで初出場の猫に賭けるやつなんてそうはおらんやろうからな。これだけ実力がはっきりしとるのに倍率が高いのもそうはあらへん。ただ、うちら以外にもたまみさんの強さを知っとるもんがおったようで、思ったよりも倍率が伸びひんかったけどな。」

「そこは仕方ないだろう。たまみさんも掲示板じゃ結構話題になってるようだしな。」

「それにしても、さすがたまみちゃん。全く危なげがなかったですね。」

「まだまだ決勝でも稼がせて貰うでぇ。」



 守銭奴と化したLILICAの下衆な笑い顔を横目で見ながら、僕は闘技場のど真ん中でドヤ顔を決めているたまみさんを見下ろしていた。

「あまり目立つと相手も本気になるから、ほどほどにして欲しいんですがねぇ…」


 そんな僕の心配をよそに、第8回闘技大会予選はたまみさんの話題一色に染まっていくのであった…。



まずは軽く予選をw

決勝も、さくっと書き上げてしまいたいところですね…


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