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こどくなシード 異世界転移者の帰還道  作者: 藤原 司
姿見せる三銃士
48/202

最低な名乗り

「……なんでお前がここにいる?」


「酷い言い草〜 久々なんだから笑顔で迎え入れてもいいんじゃなイ?」


 この世界に来て初めて出会った人物が突如現れた。


 何か知ってそうな口ぶりだったコイツに、いつか会わなくてはと思っていたが、まさかこんなところに現れるとは思ってもみなかった。


「観光客ってわけじゃないだろ? 見たところセレブでもなさそうだしな」


「失礼だネ! こう見えても教養はあると自負しているヨ!」


「顔も見せないでよく言うよ その耳障りな喋り方も何とかならんのか?」


「結構気に入ってるんだけどネ」


 こちらの言い分など聞く耳持たない。予想はできていたがやはり気に入らない。


「いい加減話せ 何しにここに来た?」


「会いに来てやったんだヨ この世界に放り出されて心折られてないかネ」


 ああそうだこういう奴なのだ。最初の出会いで、コイツは人の不幸が大好きな奴だと知っていた。


「まあその感じじゃ強く生きてらっしゃるようデ」


「お陰様で 最初に会った奴があんたのおかげで他の奴が数百倍良い人にに思えるよ」


「そいつは光栄ダ」


 そう言って黒フードの男は、船の柵の上を綱渡りをするかのように歩き出す。


 無性に突き落としたい衝動を抑えつつ、本題に入った。


「お前には聞きたいことがある」


「ン〜? 何かナ? 答えてあげないこともないヨ」


 一々癪に触る話し方をされるが、ぐっと堪える。何せコイツが一番の手がかりなのだから。


「お前知っていただろ? 俺の顔がこの世界の英雄ソックリだってこと」


「知ってタ」


「何で黙ってた?」


「面白そうだったかラ」


 駄目だ。まともに相手をしては駄目だと、一発で理解してしまう答えが返ってきた。


「……期待はしないが真面目に答えろ お前はこの世界のことをどれだけ知ってる」


「ン〜? 多分この世界で一番詳しいんじゃないかネ〜」


「それは真面目に答えてそれか?」


「ファイナルアンサ〜!」


 わからん。真面目なのかそうじゃないのかさっぱりわからん。まともに相手をしている自分が馬鹿みたいだ。


「……それが本当だと仮定して話を進めるぞ」


「ア〜!? 信用してない!」


「信用して欲しけりゃ態度を改めろ」


「イジワル」


「性悪に何も言われなくないな この世界に俺が呼ばれた理由はわかるか」


「知ってル」


 あっさり即答された。ここで「知らない」と言われた方がまだ信憑性があったのだが、逆にそう答えられると疑惑のほうが勝ってしまう。


「……本当か?」


「何そのジト目? 嘘なんて言ってないヨ アッでも半分知ってるのほうが適当かネ」


「半分?」


「ソ 誰がそうしたのかぐらいサ」


 それはもはや『核心』を知っていると言っているようなものだ。それを本当に知ってるのなら、帰る方法も解るかもしれない。


「誰なんだそいつは」


「さあてネ ダレデショウ?」


「……話す気がないなら最初からそう言え」


「だって面白くないじゃン?」


「俺は面白さを求めてない」


「そう怒んないデ 確信がないことだけド これなら教えたげル」


「何?」


 柵の上で悠々と歩くのを止め、こちらを振りむき黒フードの男が答える。


先ほどと、雰囲気が変わっていた。


「お前が此処にいる理由は『足りなかった』からだ」


「足りない?」


「そう だからアレ(・・)はお前を此処に捨てたんだ(・・・・・) もっともお前をまだ完全に捨てたわけじゃないんだろうが」


 その『足りなかった』とな何の事か。『アレ』とは何か。まだ捨てたわけじゃないとは。


 どの言葉も言葉足らずで、理解なんてできない。


 そして黒フードの雰囲気とともに口調が変わった。今までの口調がわざとなのは知っていたが、これが本当の話し方なのだろうか。


「聖剣使い 質問の対価だと思って答えろ」


「ロクな情報じゃないのに対価なんざ要求するのかよ」


「お前は理解できた(・・・・・)か?


「……?」


 教えられた情報も、質問された内容も全く理解できない。

この質問はなんのことを言ってるのだろうか?


「この世界に来てお前は強くなった 右も左もわからなかったお前は今この世界の何を『理解』した?」


「……生憎お前の言ってることが誰も理解できないんでな とりあえず答えは『NO』だ」


 黒フードに向けて火の聖剣『フレアディスペア』を突きつける。


 今一つだけ理解できることがあるとすれば、コイツとはわかり合えない存在だと言うことだ。


「……早すぎたか」


「その意味も答えないつもりだろ」


「その通りサ」


 再びいつもの口調へと戻る。また一つ理解したが、この口調の時はまともな答えが返ってこないということだ。


 もっともどっちにしろわからなかったが。


「サアサアそんな物騒なものはしまってちょうだいナ」


「まだ質問は終わってない お前この世界の核心については答える気ないだろ」


「大正解! よく出来ましタ〜!」


 パチパチと手を叩き、心にもない賞賛を贈られた。こんなにも嬉しくない正解は初めてだ。


「まあ良い それじゃそれ以外の質問に答えろ」


「質問責めカイ? こっちは会いに来ただけなのニィ」


「グールのキャプテンでエドって奴は知ってるか 知ってるのなら居場所を答えろ」


 無視して話を進める。


 話を一々聞いていてもラチがあかない。それなら聞きたいことだけ聞いておく。


「ああそいつなら確か……こんな顔だったかい?」


「なっ!?」


 今まで隠していた顔が明かされる。その顔は紛れもなく『キャプテン エド』だった。


「『久しぶりだなぁ聖剣使い! 元気にしてたかよぉ?』」


 リンは有無も言わずに斬りかかった。顔だけでなく声までもが、間違いなくエドと同じだった。


 切りかかったのはエドだからではなく、コイツの正体はエドではない(・・・・・・)とわかったからだ。


 そしてそれ以上に、生かしておいては危険だと『本能』がそう告げている。


「『良い反応だな聖剣使いィ!? それが見たかったぜ!』」


「お前は何者だ!?」


 聖剣がエドの顔を掠める。そこから少量だが血が流れるとエドの顔をした黒フードの男はニヤリと笑い、指にその血を付け振りまく。


 咄嗟のことで躱せず、リンの頬に血液が付着する。もしこの血もエドと同じものならば(・・・・・・・)、エドと同じ能力ならば。


「『血液爆破(ブラッディ・ボム)』」


「ガッ!?」


 頬に付着した血液が爆発する。幸い少量だったため軽傷だったが、その軽傷を負ったことで謎がまた増えてしまう。


「何故……お前がエドと同じ能力を持っている!? それにあいつの爆弾じゃ俺は傷なんて負わなかったはずだ!」


「『それはな……』もうエドの能力じゃないからサ」


 再びフードを被り直すと声も元の声に戻る。ケタケタと笑い余裕を見せつけるかのようにこちらに背中を向け話し出す。


「エドォ? とかいう奴は殺して差し上げましタ ジャンク品かと思ってたけド〜能力が面白そうだったからリサイクルしてみたヨ」


「……エド以外皆殺しにしたのは」


「ゴミ処理は大事だからネ」


「最後の質問だ……『お前は何者』だ?」


「オット!? そういえば自己紹介がまだだったネ!」


 クルリとこちらを向いたかと思うと、すぐに姿が見えなくなった。


 見失い辺りを見渡すと、いつのまにか先ほどの船の柵の上に立ち、態々丁寧に頭を下げながら名乗った。


「改めましてこんばんわ『二人目の聖剣使い』くん 今の自分は『アイン』 魔王三銃士が一人『奇術師アイン』と申します』


 そう言われて、むしろホッとした。


「……そうかい そう言われて驚くほどしっかりきて逆に驚かなかったよ」


 何故ならこれからはまったく遠慮せずに敵として戦えるからだ。


「それは残念 では今日は本当に挨拶に来ただけなのでそろそろお暇させてもらうとしよう」


「じゃあな黒ピエロ 次会ったらブチ殺してやる」


 最初の別れの時と同じように指を立ててアインにそう言い放つ。


 だがその時と違って、心には明確な殺意がアインに向けられていた。


「ならばピエロらしく演目を用意しておこう その方が楽しめるだろう?」


「だったらお前も演じきるんだな 口調が素に戻ってるぞ」


「オット失敬! これは我ながらとんだ凡ミスヲ」


 本当に気づいていなかったようで珍しく動揺するそぶりを見せる。少しだけ優位に立てた事に心の中で少しだけ喜んでいると、最後にこう言い残して闇に消えていった。


「教えてくれたお礼にとっておきの情報ヲ……『異世界からの眠り姫』が今『ド・ワーフ』に居る」


「何!?」


「それでは御機嫌ヨウ 良い異世界ライフヲ!」


 捕まえようとする前に、闇の中に完全に消える。


 理解しきれない情報を残したまま、再びアインと最低な別れをした。


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