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こどくなシード 異世界転移者の帰還道  作者: 藤原 司
大海の海賊たち
22/202

絶望の先

 降り注がれる触手の槍。これまでかと諦める。


「大丈夫か!?」


 だが触手は直撃することはなかった。間一髪のところで、クレアたちによって爆破されのだ。


「お〜お〜思ったよりも破壊力あるなこの爆弾 エドの船からくすねといて正解だったな」


「そうだな 代わりにそのせいで死ぬかと思ったよ」


 思ったよりも爆風の反動が大きい。助かりはしたが、もう少し配慮がほしかった。


「まあまあ 皮肉言う元気があるならそれでよし ヤロウども! 怪物退治の始まりだぁ! 気を抜いたら承知しないよ!」


「「「オオオオオオォォォ!!!!」


 クレアは海賊たちを奮い立たせる。もう正体を知ってしまったが、こちらの姿も本物なのだろう。


 根は確かな女性らしさを持っているが、この男気溢れて気高い海賊の姿は、その血がさせるものか。


「ごめん姉ちゃん……ダメだったよ」


「気にすんな お前らはよく耐えてくれたよ」


 気を落とすレイの頭を、軽く撫でて元気づける。


「気をつけろ 奴の再生力は侮れん」


「任せな! お前らが休んでる間に片付けるからさ!」


「船長! 指示をお願いしやす!」


「小型船の準備もオーケーっすよ!」


 一緒に戦う選択肢もあるが、体力がもう無い。


 後を任せてしまうのら不安であるが、今の状態では足を引っ張ってしまう。戦力になり得ない。


「ヤロウども! ありったけの火器を小型船に詰めたら化けイカの横か後ろに周ってそっからブチ込みな! 多方向からの攻撃で誘導するんだよ!」


「「ヘイ!!」」


「それから大砲を今のうちに詰めときな 誘導に成功したらすぐにぶっ放せるようにしとけ!」


「それじゃあ早速詰めてきやす!」


「頼んだよ!」


 的確な指示を部下達に行う。この姿を見たら男か女かなんて関係ない、彼女は立派な『船長』だ。


「元々隠す必要もないじゃないのか?」


「どうだかねぇ……まあ今はこれでいいんだよ」


「リン! とりあえずお前は船の中に入っとけ! オレ様が戦況は通信機で報告するからよ!」


「いたのかチビル」


「いたわい!」


 旅の同行者の存在を、頭からすっぽりと抜けてしまっていた。


「じゃあオレが中に連れてく 連れてったらすぐ戻るけどな」


「頼んだよ レイ」


「うん……」


「さあて それじゃあ派手に行きますかねぇ!」


 クレアは銃とカットラスという剣を構えて突撃する。


 その光景を見ると、ますます自分の不甲斐なさを痛感させられる。


「それじゃあオレは戻るから」


 船内の部屋へと連れられた。


 外からは戦いの音。なのに自分は何も出来ない。


「戻ってやってくれ……今は一人でも多く必要だ」


「オレなんか戻っても変わらねえと思うけどな」


 そう言い残してレイは部屋を出ていった。さっきの戦いが堪えているのだろう。辛そうな表情で、目に見えて様子が変だった。


「こんな時に何やってんだ……クソッ」


 ベッドの上に横たわり、目を腕で覆い隠して不甲斐なさを呟く。


 この感覚はサンサイドでの城の中を思い出す。


 何かをしたい、けど足手まといになってしまう。それがよくわかるからこそ、何もできないでいる自分が嫌になる。


「ほんと 自惚れすぎだな俺は」


 力を手に入れて、おかげで今まで無茶をしていても戦ってるうちはなんとかなった。


 が、そううまい話なわけがない。


「これだから嫌いなんだ」


 自分への嫌悪感が一層高まる。目の前にあるのに、手を差し伸べれば届く距離なのにと。


「外は一体どうなってるんだ?」


《こちらチビルこちらチビル! 聞こえるかリン!?》


通信機から連絡が入る。最高のタイミングで連絡が入った。


「聞こえてる どうしたチビル」


「大変だ! レイが!レイがあの化け物イカに!」


「チクショウ! 離せこのイカ野郎!」


 捕まってしまった。


『グヘ!グヘヘへへフハハハハ!』


 足を掴まれ宙吊りの状態で反抗する。焦って前に出すぎてしまい、捕まってしまったのだ。


「エド! レイを返しやがれ!」


『アンシンシロ……フタリトモハラノナカデアワセテヤル』


「安心できるかこのデカブツ! 変態! スケベ!」


「いやスケベかどうかはわかんないけど……とにかく離せ!」


『メイレイスルナ! コレダカラキライダッタンダ……おまえのことが!』


「何だと……?」


 会話していくうちに少しだけ理性が戻ったのか話し方が戻っている。


 理由はわからないがそれは怒りか、それとも人を喰らったおかげか。


『おまえさえいなければおれがせんちようだったのに! あのばかせんちょうがおまえら姉妹をゆうぐうするから殺してやったんだ!』


「テメェ……!」


「ああ! 身体が馴染むぞぉ! 食えばいい! 人間を食えば元に戻れる!」


「まさか……お前の部下がいないのは!?」


「ああそうさ! 食った! みんなクッテヤッタサ!」


 再び言動がおかしくなる。姿だけでなく意識が化け物となったことで、人間のものではなくなってしまっているのだ。


『クククククウ! クウクウクウクウクウイタクナイクウクウクウクウクウゥゥゥ!』


「言ってることがめちゃくちゃだ……」


「ふざけてんじゃねえぞコラァ!」


 レイは宙吊りのまま銃口を向ける。そのせいで安定せず、撃ってはみるがあたらない。


『ほ〜ら アテラレルなら当ててみナ』


「じゃあそこ動くなよ!」


 意識を集中し絶対に外さないという気持ちで狙いを定める。


 引き金を引いた。狙いは完璧だった。


 だがそれがエドに当たることはなかった。


「え……?」


「……コフッ!?」


『ザンネンだったな〜? あったたのはおまえの『お姉チャン』だ』


 レイが撃つのと同時にクレアを掴んで自分の盾にしたのだ。


 クレアの腹部から血が流れる。その光景に唖然として何も言えなかった。


『ギャハハハハ! お前がウッタ! オマエガ当てた! 望み通りオレサマはこのバをうごかなかったぞウ?』


「あ……あああ!」


『さ〜て こいつはモウヨウズミダ』


 エドは船は叩きつけるようにクレアを投げた。激突から助ける為に部下達は駆けつけようとするが、触手によって阻まれる。


「オマエハ……?」


 だが、その体は助かっていた。


「安心して寝かせて欲しかったんだけどな……戻ってやったぞ?」


 自分一人、安全地帯には居られない。


 そう思ったら、いつの間にか来てしまった。

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