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こどくなシード 異世界転移者の帰還道  作者: 藤原 司
太陽都市『サンサイド』
2/202

最初

「──ッ【オイオイなんだってこんな英雄の紛い物を】」


(……なんだ?)


 聞きなれない声で目を覚ます。どうやら仰向けに倒れているようだ。


 体を起こそうとするが、全身が痛い。


 麻痺しているのか、目が覚めたばかりなのかわからない。とにかく体が言うことを聞かない。


 視界もぼやけていて見えないが、耳はなんとか機能している。


 そして肝心の声ははっきりと聞こえているのだが、何を言っているのかわからない。


「──ッ【わざわざ別の世界のコイツを選んだのは理由があるはずだが……】」


 やはり何を言っているのかわからない。少なくとも日本語ではないし、英語でもない。


(聞いたこともないな)


 強いてわかった事と言えば、声の低さからおそらく男だという事しかわからない。


「──ッ【後で調べてみるかね まあどうせ破棄しただけと思うが】」


「あんた……言葉わかる……か?」


 何もしないよりは良いと思いきって話しかけてみた。通じてくれることを祈るしかないと、藁にもすがる思いで尋ねる。


 口が動くようになってくると身体が少しずつだが動かせるようになってきたのがわかる。


 どうやら一時的なものだったようだ。これならあと少しで起きられるだろう。


「──ッ【オヤオヤ〜? 目が覚めたのカナ〜?】」


やはり何を言っているのかわからないが、ぼやけていた視力が戻り始める。


視力が戻り始めたことでわかる事は、木々が生い茂ってる事からここは森の中、あるいは山の中か。


そしてわかりたくなかったことだがどうにもコイツは黒いローブでフードで顔が見えない。


(怪しい)


人を見かけで判断したくはないが、絶対こいつは信用してはダメだと直感した。


「──ッ【あ〜悪い悪い 何言ってるかわかんないよナ〜】」


 未だに通じない言葉でなにか言われたかと思えば、何やら得体の知れない木の実を無抵抗なのを良い事に、口へと無理やり押し込まれる。


(食べろと言うこと……か?)


 あまり食べたくはないが、状況がわからない今仕方ない。幸い硬くはなかったので噛んで飲み込む事ができた。


「どうダ〜? 美味いカ〜?」


「……この世のものとは思えない」


 まずかった。


 何をしゃべっているのかが分かるようになった感動より、先に出た言葉は木の実への感想だ。


とてもじゃないがこの世の物とは思えない、という味の感想に、この感動は負けたのだ。


「贅沢言うなヨ」


「言葉が通じるようだが喋れたのか?」


「インや逆サ あんたがこっちの言葉を話せるようになったのサ」


「いまの殺人兵器でか?」


「察しが良いから説明が楽で助かるヨ」


 殺人兵器は否定しないようだ。


それほどまでにまずいのを知っていて食べさせたのは気に入らないが、さっきの木の実で話せるようになったという事なら素直に感謝しよう。


「まあこの世界の物を飲み込めばなんでも良いんだけどネ〜」


 いますぐ感謝の気持ちを返して欲しい


やはり見た目からして最低最悪なやつという判断は間違ってないようだ。


 だか一つ、気になる言葉を聞いた。


「この世界? まるで俺が異世界にでも来たみたいな言い方だな 」


 何とか動くようになってきた体を起こしながら、気になる言い方をしたことについて聞いてみる。


「よくできましタ」


 わざとらしく大きな拍手をする。


 嘘だ。


 そんなことがある訳ない。


 からかってるだけだそうに違いない、そんな根も葉もない話を信じろと言うのか?


「からかうならもっとマシなことを言ってくれ」


「ここはお前のいた世界とは異なる世界 俺はこの世界のことを基礎(ベース)と呼んでいる」


 何も間違ったことは言っていないと、黒いローブ姿の男は言う。


 そう言った黒いローブの男の言葉は今までのふざけた態度と違い、驚くほど冷たいものだった。


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