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転生死神ちゃんは毎日が憂鬱なのDEATH  作者: 小坂みかん
* 死神生活一年目 *
93/364

第93話 死神ちゃんと覗き魔

 死神ちゃんは〈担当のパーティー(ターゲット)〉と思しき冒険者達を発見すると、思わずヒュウと口笛を鳴らした。死神ちゃんの視線の先では様々な種族の入り混じった一団が戦闘を行っていたのだが、互いのことを熟知しているのか、無駄のない連携でモンスター達を屠っていた。どの冒険者も熟練の(わざ)が光っており、とても素晴らしい動きをしていた。

 中でも目を引いたのが僧侶のドワーフだった。彼はずんぐりとした体と僧侶という職業からは想像ができないような俊敏さとパワーで敵を殴り倒していた。死神ちゃんはドワーフの彼に狙いを定めると、戦闘の終わりを狙って彼にとり憑いた。とり憑かれた彼は死神ちゃんをただジッと見つめているだけだったが、周りの仲間達はじっとりとした目で彼を見つめており、少々軽蔑しているようだった。



挿絵(By みてみん)



* 僧侶の 信頼度が 8 下がったよ! *



 ステータス妖精の告げた信頼度の低下具合もかなりのものだった。死神ちゃんは不思議そうに首を傾げると、近くにいたノームを見上げて尋ねた。



「こいつ、さっきの戦闘でかなり貢献していたよな。支援も攻撃も絶妙だったし。何でお前ら、そんなゴミクズを見るような目で見てるんだよ」



 ノームは顔をしかめると、一言「今に分かるよ」とだけ口にした。

 一行は死神を祓うべく一階の教会を目指すことにした。道中、彼らは何度も戦闘を行った。その際も、彼らはやはりスマートな戦いっぷりを見せつけてくれた。死神ちゃんが感心して話しかけると、例のドワーフが気さくに答えてくれた。



「おいら達はそんじょそこらの冒険者とは違って、モンスターの特徴や個々人のスキルなんかもしっかり研究して把握しているからな。だからこそ、戦闘において、最小限の力で最大級の結果を生み出すことができるんよ」



 その後も、ドワーフは独自の戦闘観について饒舌に語ってくれた。死神ちゃんは興味深げに耳を傾けていた。それと同時に、死神ちゃんは心底不思議に思いもした。――僧侶ながら戦闘において屋台骨を支えるほどの実力者で、なおかつかなりの社交性を持っている彼のどこに蔑まれるようなことがあるのか、と。


 少しして、彼らは拓けた場所にやってくると、休憩をとるべくキャンプを張り始めた。その様子を死神ちゃんがぼんやり眺めていると、ドワーフがやってきて死神ちゃんに背を向けるようにしていそいそと座り込んだ。死神ちゃんが不思議そうにそれを見つめていると、彼はそのままゴロリと寝転んだ。

 死神ちゃんは自分の足の間で至福の笑みを浮かべるドワーフを見て、体中に悪寒を走らせた。顔を青ざめさせ嫌悪で目を見開いた死神ちゃんは、ドワーフの顔をこれでもかというくらい何度も踏みつけた。

 その様子を見ていたノームは慌てて死神ちゃんを抱き上げると、げっそりとした顔で溜め息まじりに言った。



「駄目よ、死神ちゃん。落ち着いて。こいつ、そんなことしても喜ぶだけだから……」



 肩を怒らせてゼエゼエと息をする死神ちゃんをノームが(なだ)めると、ドワーフは何事もなかったかのように起き上がり、そして死神ちゃん達を返り見た。



「ちょっとノームさんよ。何で死神ちゃんをどかしちゃうんだよ。――ていうか、かぼちゃパンツか。薄地のショーツが本当は好きなんだけど、たまにはかぼパンも悪くないな」


「えっ、何こいつ、さっきまでの気さくな雰囲気そのままでサラッと変態なこと口走った。気持ち悪い!」


「気持ちが悪いとは失敬な。スカートの中に桃源郷あり。これ、常識よ? その桃源郷を荒らすことなく、ひっそりと見守る。これが紳士ってやつよ」


「いやいやいや、立ち入っている時点で荒らしているも同然だろ! 何が紳士だ、ただの覗き魔じゃないか!」



 死神ちゃんが声を荒げると、覗き魔は〈分かってないな〉というかのようにフウと息をつきながら肩を竦めた。死神ちゃんは苦虫を噛み潰したような顔をすると、勢い良くノームを見やった。するとノームは目を逸らして声を落とした。



「だから言ったじゃない。〈今に分かる〉って」


「何でこんなのと平気でパーティー組んでるんだよ、お前ら」


「この性癖さえなければ、普通に有能な人だから……」



 彼は別段〈女性の下着〉が好きというわけではなく、〈下着を履いた女性の下半身〉が好きなのだそうだ。しかも、下着姿よりも〈スカートの中を覗き見る〉というのが特にお好みらしい。彼のその性癖のせいで、パーティー内の女性メンバーは入れ替わりが激しいのだそうだ。



「でも、それ以外は本当に有能だから。だから私も、スカートではなくズボンを履いてご一緒しているわけ」


「ていうか、確かに〈下着単体〉は興味ないけど、こだわりはあるよ? 〈こういう形のお尻にはこれ!〉っていう下着が、やっぱあるから」


「うるせえよ、変態! そんなこと、誰も聞いてないから!」



 ノームの説明に眉根を寄せて丁寧に訂正を入れてくる覗き魔を、死神ちゃんは怒鳴り散らした。しかし彼は動じることなく「大事なことなのに」と呟きながら、不思議そうに首を捻るだけだった。

 その後も彼は事あるごとに死神ちゃんのスカートの中を覗き見ようとした。そのたびに、死神ちゃんは小さく悲鳴を上げながら必死に逃げ惑っていた。結局、死神ちゃんは常にノームに抱きかかえられることとなった。覗き魔は残念そうにしょんぼりと肩を落とすと、ブツブツと文句を垂れた。



「何で誰も、桃源郷の素晴らしさを分かってくれないんだ? そこには秘密の花園が広がっているだけでなく、もしかしたら永遠の友がそこに隠れているかもしれないのに。それに、癒やし効果も絶大なのに。おいら、これで癒やされたら戦いに勝ちまくれる自信があるのに。仲間が増えて勝ちまくれる、いいことだらけでしょうが」


「うるせえよ! そんなうまいこと事が運ぶわけがないだろう! そんな保証はどこにもないよ! 増えるのはせいぜいが犯罪歴くらいだろうが!」


「いやだなあ、おいら、犯罪は一度だって犯したことないよ。至ってクリーンな身よ? レッドカードなんて受けたことがない、とてもホワイトな僕ちゃんなのよ?」


「極めてレッドだろ。どこがホワイトだ。よく言ってピンクだな」



 死神ちゃんは覗き魔を睨みつけると、吐き捨てるようにそう言った。すると彼はもじもじとしながら「いいね、ピンク」と言った。



「しかも、シルク生地でフリル付きがいいね。それで、エルフ女子のようなすっきりとした小さめお尻を包んで欲しい。うん、可愛いね! ピンク、可愛くていいよ!」


「黙れよ、エロピンク! 少しは自重しろよ!」



 死神ちゃんと覗き魔のやりとりを、彼の仲間達はげっそりとした顔を浮かべて聞き流していた。しかし、彼らは突如険しい顔つきとなり、武器に手をかけた。



「前方からモンスターだ。気をつけろ」



 戦士が声を潜めてそう言ったのも束の間、覗き魔は喜々としてモンスターに突っ込んでいった。そして彼は、ゴスロリワンピースに身を包んだ吸血鬼亜種(モーラ)の足元に滑り込んだが、桃源郷を目にする前に三途の河原を目にすることとなった。

 彼の仲間達と死神ちゃんは盛大に溜め息をつくと、こんもりと降り積もった灰を見なかったことにしたのだった。




   **********




「あれは確かに気持ちが悪かったけど、でも、〈こういう形のお尻にはこれ!〉っていう下着があるっていうのは賛成だね」



 神妙な表情で腕を組み、ゆっくりと頷くケイティーを死神ちゃんは苦い顔でじっとりと見つめた。言葉なく見つめてくる死神ちゃんに、ケイティーは眉根を寄せるとポツリと言った。



「何だよ。別に変な意味じゃないよ。下着だって重要なファッションアイテムなんだから。可愛らしいを追求するなら、とても大切なポイントだろうが」


「はあ、そう……」



 死神ちゃんが生返事を返すと、ケイティーは一転して朗らかな笑みを浮かべた。



「でも私は〈拝む〉だけじゃなくて、触りたい派だけどね! 乳はおみつがやっぱ最強だよね。脚はアリサが美味しそうだし、うなじはサーシャが意外と。あの子、普段髪の毛下ろしてるけど、絶対まとめ上げたらいいと思うんだよなあ。それから、腰の辺りのラインは狂狐(きょうこ)ちゃんが最高だし、腹筋は小花(おはな)の悪夢モードがピカイチだし――」


「悪夢モードってなんだ。幼女の姿(こっち)仮初(かりそめ)だって、何度も言っているだろうが」



 死神ちゃんが表情もなくそう言うと、ケイティーは苦笑いを浮かべてごまかした。死神ちゃんはぐったりと肩を落として溜め息をつくと、再びダンジョンへと出動していったのだった。





 ――――ともあれ、覗きは駄目なのDEATH。

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