(27)告白
引き締まった四肢、ふくよかな胸にくびれた腰、やや大きめな尻。普段は下ろしている艶やかな長い髪は一つに束ねられて闇に溶け込んでいる。身体の線がくっきりと出る衣装を着ているせいで、一見裸身のように映る。
「仲が良いことは良いことだけど、こんな夜更けに男女が同じ部屋にいるのは少々問題があるんじゃないかしら?」
「が、学院長……?」
「ってか、その格好はどうしたんですか?」
ネリアとルキの問いに、シエルは自分の唇に人差し指を当てた。
「今はお忍び中なんで、しーちゃんって呼んでね」
「「しーちゃん……」」
二人の声と呆れが滲む視線が重なる。
「ちょっとぉ、その態度はないんじゃないかしら? 別にこの格好、問題ないでしょ?」
「すみません。突っ込みどころを間違えました」
シエルの声が冷たく響いてきたので、ルキは素直に謝った。大事なのはそこではない。
「いいのよ? 似合っています、とか言ってくれても」
「とても似合っていますよ。格好良いです。――ですが、そんな格好でどうされたんですか?」
しゃなりしゃなりと歩きながら部屋に入ってくるシエルに、今度はネリアが訊ねた。こんな夜更けに、そんな格好で現れる理由がよくわからない。
そんな問いを投げてきたネリアに、冗談を言っていた顔からきりっとした真面目な顔に変えてシエルは口を開いた。
「――君たち何か厄介ごとに巻き込まれているでしょう?」
その問いに、ルキとネリアは身体を震わせる。
「どんな些細なことでも構わないから、わたくしに洗いざらい話しなさい。その内容によってわたくしが君たちを罰することはないと誓うわ」
腕組をして肩幅に足を広げて立つ姿はなんとも雄雄しい。そんな姿を見ていると萎縮してしまう。
「が、学院長に、ですか?」
言いにくいのでそう問うと、ルキの顔に自分の顔を寄せてはっきりとシエルは返した。
「ち・が・う。しーちゃんよ、しーちゃん」
「は、はい。――え、えぇっと……しーちゃんに包み隠さず話せ、と」
「そう、そのとおり」
満足げに頷くシエルを見て、ルキはネリアと顔を見合わせた。
(信用して良いのだろうか……)
ユートの知り合いらしいが、学院長であるシエルを信用しても問題ないのか否か。敵が何者なのかわからない以上、あまり自分たちの話をしたくはない。
黙りこんでしまったルキたちを見て、シエルはしばらく待った後に口を開いた。
「――言えないなら、わたくしの質問に順番に答えてもらおうかしら。答えたくなければ、無理に答えなくて良いわよ。良い?」
学院長の言葉だ。ルキもネリアも逆らえないと察し、ゆっくり頷く。
「わかりました。質問をお願いします」
正直、シエルが何を聞き出そうとしているのかわからなかったし、自分たちが今どんな状況なのかも把握できていないルキにとって、ただわけもわからず説明していくよりはずっと建設的に思えた。




