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(15)恋文は不幸を招く
「厄介なことになっているわね……」
校門周辺を一望できる部屋、学院長室。夕日を背景に書類に目を通していたシエルはつぶやいて、続けて不機嫌そうに眉根を寄せた。
書類はルキとネリアの証言によって書かれた被害届けだった。添付された資料には使用された道具の形状、設置場所、そして管理票が付いていなかったことが記されている。
「以前にも似たような事故があったんだっけ」
前に起きた事故、それは実習中に起こったものだった。禁止されているはずの道具が使用され、不幸が起きたのだ。巻き込まれたのは特待生だった少年で、その事故によって腕を失い解石師への夢が断たれたと書類上には記されていた。
「この二人、何に近付いちゃったのかしらね」
不愉快そうに表情を歪めて書類を机に置く。
「まったく……怪我はなかったみたいだけど、困ったものね……」
被害届けが別の書類に重ねられる。別の書類――そこにはルキの紹介文が載っていたのだった。




