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寝起きの神様もいればイカれた少女もいる

 吾輩は吸血鬼である。


 名をサン・アンジェリーク・バルトロメウス・ベルトルト・クルト・ディルク・エッカルト・………なんだったか。


 名を忘れるほどに長いのだ。長く生きすぎても禄なことがない。その一つの事例が名前だ。長く生きて人々や魔物を救いすぎた。貴族位はいくつ貰っただろうか。とはいえ、貴族位を貰った国など殆ど無くなってしまったのだが。


 昔、「愛した人と一緒に死ねなくて辛くないのか」と言われることがあった。


 実際、吾輩が若い時は辛かったが今となってはカテゴリ制覇を掲げるぐらいには割り切っている。


 愛して、愛されて、死なれて。


「嗚呼、いい日々だった」


 それで一区切り。


 1000年もすれば割り切れるというものを、知り合いが死んでいくのをうじうじと悩み、直系の眷属は自殺した。実に愚かだ。それとも、永遠を共にすることがわかっている親友がおるから吾輩は大丈夫なのだろうか。そうなのかもしれぬな。


 と、吾輩は思っているが吾輩の方が愚かなのかもしれん、吾輩は長く生きすぎているのだから、否、吾輩はまだ若いのかもしれんな、まだまだ入口なのかもしれん。|先代(クソ野郎)が何年生きてたか全くわからんしな。


 不老不死、超再生、莫大な魔力、圧倒的な力、経験。


 吾輩はこれらを持って世界を救ったこともあった、はたまた魔王と一緒に世界を滅ぼそうとしたこともあったし、女子とひたすら戯れたり、はみ出しものを集めて国を作ったり、ムカついたから国を滅ぼしたりしたこともあったか、ああ、弟子を育てたこともあったか?懐かしかったな。最近は吾輩の子孫が集まり出来た国にうっかり見つかったこともあった、結果が現状なのだが。非力な女子という設定に徹してみたこともあった、あれは楽しかった。結局は500年も遊べば飽きてしまったがな。そう言えば20万年ほど前に亜神と出会ったこともあったか、『お前もなるか』なんて聞かれたが『|神(吾輩)に向かって行っておるのか?』と一蹴してやった、ガクガク震えていたあやつはまだ元気じゃろうか、今は信仰されとらんようだが名前を変えて生きておるかもしれんのぉ。




 さて、次は何をしようか。


 50万年ほど生きただろうか。

 まだまだ、生きようと、何かをしようとする吾輩の愚かさに心底呆れてしまう。


 ロールプレイでもしようか。


 学校行って、遊んで。


 最近(・・)出来た迷宮でもいこうか。まだ攻略され取らんかったはず。



 ガチャリ


 扉が開いた。


「誰だ、殺すぞ」


 吾輩は殺気を当ててやった。

 いや、殺気とかいうとるけどただの威圧だからの?

 ふわふわ吾輩の周りに漂う魔力をちょちょいと弄っとるだけやし。


 あー語尾が、寝起きの弊害が。今回はミヤコ語風でいこうか。


「誰や、ケツから手ぇ突っ込んで心臓握りつぶしたろか」


 ……なんか違うな。


「わ、わわわわわわわわわたしはエキドナ・ウォレンハイ……ぐすっ……ですぅ……」

「エキドナ・ウォーレンハイ?」

「ウォーレンハイ……です……ぐすっ」

「そうか、ウォーレンハイドか。ファーストネームはなんていうんや」

「エキドナです……さっき言ったじゃないですか……ふえっ」

「エキドナか……ファミリーネームは?」

「ふぎゅっ……ふえっ……ふええぇぇぇ」


 泣き出したぞこの女子、メンタル弱すぎやろ。ちょっと煽っただけやないか。

 ああ、鳴き声がうっさい。女子やし殺すのも少し、ほんの少ーしだけ罪悪感が。というかミヤコ語使いづらいなぁ、ロールプレイ始めてから使おうか。

 あれ?この部屋暗くね。光を灯すか。


『光よ』



 光が灯すと、一人部屋にいた。


「ふぇ?ううぅ……うわあああああああああああん」


 お漏らしした美少女が。


 ドタドタドタドタ!


「どうしたエキドナあああああああああ!」

「いや!!!来ないで!!!」

「エキドナあああああああああ!」


 煩いな。


「エキドナ!」

「いやあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!」

「煩い!!!!!!」


 滅多に怒らぬ超超寛容な吾輩ですら感化できぬ煩さで泣きよるこの女子はエキドナというらしい。駆け込んできたのは父親かの?


「貴様ら何者じゃ、影がないことから吾輩の眷属の末裔とかか?そもそも吾輩はここに入ることを許した覚えはないのじゃが」

「貴様こそ誰だ!」

「あ?」

「ここに眠っておられるのは神であるはず、真祖ランペルージは『ジュッ』」


 吾輩は男の下半身を消し飛ばした。


「あ……あぁっ……っ!?」


 お漏らし小娘は絶句している。さもありなん。


「何故吾輩の原初の名を知っている」

「……」

「ちっ……出来損ないの眷属か。殺してしもうたわ。小娘、答えろ」

「とっ……」


 吾輩は女の片腕を消し飛ばす。


「答えろ」

「い……言い伝えです」

「言い伝え?」

「要約しますと、原初、悪事を働く一人の神しかおらず、立ち向かいし男児二人と麗しき神の娘は」

「麗しき?」

「はい、原典ではこの世の美を集めても叶わぬほどに麗し「犯人が分かった」……はい?」


 クソアマが……っ!


「ひとつ聞く、娘、貴様の父親は出来損ないだな?」

「……時折影が」


 吾輩のシステムに穴があったか。惜しい人材だったかもしれんな。


「そうか、なら死んで当然だ」

「なっ!?何故ですか!」

「出来損ないが眷属を名乗ることは許さん」

「ですが父は武術に「残念だが影が出るものは吸血鬼の特性に制限が出る。満足に使えぬ以上眷属は名乗らせれぬよ」……そんなこと、誰も」


 そりゃそうじゃ、出来損ないは全員殺しとるからの。


「吾輩が誰かわかっとるのか?」

「……」

「血が薄まれば影が出るし、吸血鬼の特性も薄まる、現に貴様の父親は死んだだろう」

「……」

「半吸血鬼は『核』を失わなければ、もしくは血を流しすぎなければほぼ死ぬことはない」

「……」

「薄まった血は子に受け継ぎにくくなる。血が受け継がれる限り半吸血鬼としての面子は守られる。しかし薄まってしまえば吸血鬼の特性は薄まり簡単に死ぬ。もし、簡単に死ねばどうなると思う」

「……わかりません」

「異種族に殺され、さらに異種族が力をもっておれば『半吸血鬼族は恐るに足らぬ』と言って攻めてくるだろうよ」

「そのよ「負ける負けないが問題ではない。人が死ぬ」……そう、ですか」

「血が薄まれば殺さねばならん」

「同胞は、死なねばならないのですか」

「出来損ないは同胞ではない」


 まぁ、そもそも半吸血鬼が出来損ないなんじゃけどな(笑)。


「……まぁ、呪いで早く死ぬ分マシとも言えますね、友達とも別れずに済むし。よし、やったね父さん!」


 ……なんじゃこの娘。吾輩の血を濃く受け継いだものは全員頭のネジイカれとんじゃろか。この前見かけた奴もイカれとったぞ。


「さて、ここにはいつから住み始めたのだ?」

「800年前、貴方様が残された魔法陣から場所が特定され、戦火に巻き込まれていたこともあり移住が始まったらしいです」


 うわー。吾輩失敗してしもうたか。


「そうか」

「降りられるのですか?」

「族長に会わねばならんよ」

「その後は」

「友とクソアマに会いにいく」

「……生きておられるので?」

「お主らのいう『神』じゃからな」

「!?」

「お主も来るか?なかなかの才女みたいだしのぉ、父親を殺してしまったことだし、弟子にしよう。たしか母親は死んでおったな、身寄りは父親のみだっただろう」

「何故知っておられるのですか」

「神だからじゃ、はっはっは」

「そりゃそうですよね~」


 え、軽すぎじゃろ。怖い、現代っ娘怖い。


「はよ族長のとこへ案内せぇ、弟子にせぬぞ」

「こちらです!」

「もうちっと悲しんでやってもええかと思うがの」

「だから苦しまず友とも別れず神に殺されたのだから幸せですよ。まぁ、母と会えて本当に幸せを謳歌してるかもしれませんが」

「前向きじゃの」

「父親と引換に真祖の弟子になれるんですよ!むしろアドですよアド!爆アド!爆アドですよ!アドがいっぱいありすぎて爆発する!それが爆アド!爆アドひゃっほおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!!!。

 ああ、それより口調が見た目とあってませんよ?見た目高貴なお姫様なのに『吾輩』とか全然あってないです」


 この娘本当にイカれとるのではなかろうか、テンションの温度差すごすぎじゃろ。老人にはつらいわ。


「ふむ。なら妾とでも自称するかの。ところで、お主が妾の前で漏らしたことはか「いやあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!」元気じゃの……」


 お漏らし小娘と何をしようかのぉ。


 ああ、先に馬鹿どもに挨拶せねばな。


 その前に眷属か。


 さて、今回(・・)はどういう世界になっていることやら……くふふ……楽しみだ。


 精々楽しませてくれ、五十万と三万三千六百八十三年間、あいも変わらず汚い愚かな人間よ。


 まぁ妾も元人間なんじゃけど(笑)


 ☆★☆★☆★☆★☆★☆★


「やぁ、愚かな愚かな妾の眷属共よ」


 妾の声に愚かな眷属略して愚属は目を剥いて妾の方を見て、怒りを顕にしおる。この程度の挑発で動くなど実に愚かじゃ、嘆かわしい。しかし四人の内一人は冷静じゃの、ただ驚いているだけかもしれんが。というか妾の神殿の前に城がたってるのは気に食わんのぉ。壊すのは止めてやるが、というかこいつら誰じゃ、国王か?


「我らが愚かな『眷属』だと?貴様の眷属になどなった覚えはないわ!死ね!」


 嗚呼……愚か、実に愚かじゃ。ここまで愚かじゃと殺してあげたほうが優しさじゃの。なんだかよくわからんくせ毛の男、お前は愚かすぎる。こいつが国王とかだったらこの城を潰そう。

 というかこの男、魔術展開が遅すぎる。いや、これが『今回』の『今』での強者なのかもしれん。嘆かわしいのぉ。妾ならこやつが展開している今の間に一国を滅ぼす術式を半分ぐらいは描写可能だというのに。『今回』は過去最弱じゃなかろうか。ここまで弱いと面白いものも面白くなくなる。いっそ一国建国してみた方がええかもな。『今回』はそうしようか。いや、世界征服じゃ!みんな誘って世界征服して遊ぼう。

 とか考えてるうちにやっと九割か。見たところ『業雷』じゃろうがところどころ綻びが見える。唾でも吐けば壊れるような術式展開じゃ。ざっこ(笑)。


『解唾』


 ほぅら、唾を吐けば壊れよった。


「愚かじゃのぉ」

「本当に真……祖……?」

「今更気付くとは本当に愚かじゃ、嘆かわしい」

「先ほ」


 そこで男はこと切れた。こと切らした記憶もないが体が勝手に殺したのかのぉ、不快感を与えない便利な便利な妾の体。素晴らしい、これぞすとれすふりーとやらじゃ!


「なにも殺すことは……っ!」

「妾の寝起きは機嫌が悪いと残しといたじゃろ」

「……せめて眠りについた容「嫌じゃ」え?」

「女子は身だしなみが重要じゃ!のぉエキドナ」

「えっ?あっ……まぁ、そうですね」

「ほらエキドナもこう言うとるじゃろ?」

「でも貴方は元々おと「美容に気を使っとったよ」……も「美容に気を使っとったよ」……はい」

「それより妾が起きたのじゃ、酒持ってこーい!」


 さっけ~さけさけ~おさけ~♪


「完全におっさぐぴゃぁっ!」


 失礼な事を言うエキドナの頭に斧を投げてやった。この斧、五回ぐらい前の時におった亜神からぶんどったものじゃがどっからでも投げれて念じれば戻ってくるからめちゃんこ使いやすい。おしおきにはもってこいじゃ。エキドナが抗議の目を向けておるがいつの時代も優秀な師匠の元についた弟子は師匠に弄ばれる物じゃ。それこそ妾の生まれた時より前からのお約束じゃ。斯く言う妾も随分弄ばれた物じゃ。いまでも思い出せばムカムカしよる。


「一番良い酒を持ってきて、国民を集めて見下ろさせろ。ああ、来れるものだけで良いからの?」

「はっ!」

「ところで国王は誰じゃ?」


 先ほど答えた男が手を挙げる。良く見れば先程妾が冷静な男と評価した奴ではないか。よかったの城が壊れんくて。




また一つ作ってしまった。


いったいどうやって収集つけるんだろうね。

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