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八刃白書  作者: 鈴神楽
4/5

双子戦士のプライド

江戸時代と言えばこの二人です

 幼稚園から大学院まである私立八刃ハチバ学園の朱雀エリアにあるオペラハウス。

 外国から招待されたオペラ歌手がその歌声を披露する中、既に眠りについている曙。

 その様子に呆れ顔の華夏。

 そんな時、ドアが開き、和が現れて大声で叫ぶ。

「曙、新たな白書の場所が判明したわ!」

 会場に何ともいえない空気が流れ、華夏が本気で無視しようかと悩んだ。



「オペラハウスで大声を出すなんて真似は、二度としないで下さい」

 華夏の言葉に申し訳無さそうにする和。

「ゴメンなさい。でも、一刻も早く回収したかったから」

「その気持ちは、解ります」

 そして、今だに眠っている曙を背負う華夏と和は、ぬいぐるみショップシロキバに向かう。



「今回の白書の断片は、江戸時代。東洋の妖帝が暴れていた時代。物は、若返りの秘術。まあ、使い方は、想像は、つくから、向こうの人と協力して奪還して」

 ヤヤの言葉に頷く、華夏達。(曙もようやく目を覚まして、眠い目を擦りながら頷いている)

「もう、行くの?」

 幼女の言葉に、華夏が頭を下げて言う。

「すいませんが、よろしくお願いします」

 幼女は、カードゲームの対戦者、百爪に言う。

「勝負の続きは、戻ってきてからやるから」

「何度でも相手してあげるよ」

 自信たっぷりに返す百爪。

 そして、曙が何時もの魔方陣を描き、過去に戻っていくのであった。



「今回は、何で男装なの?」

 幼女の質問に、華夏が大きなため息と共に告げる。

「この時代は、少女や幼女には、恐ろしい存在がいるのよ」

 曙が手を叩く。

「そういえば、東洋の妖帝ってゴールドさんの前世の通り名だったっけ」

「知り合い?」

 幼女の質問に和を含めて複雑そうな顔をする。

 そんな所に一人の華夏達と同じ様な男装に見えるが確かに喉仏も出ている少年がやって来て言う。

「嬢ちゃん達、外で歩くのは、ちょっと危険だぜ」

 それを聞いて苦笑する華夏。

「それは、解っているんですが、ちょっと用事がありまして」

「後回しに出来ないのかい?」

 少年の問いに華夏が頷きながらも言う。

「はい、八刃としての仕事ですから」

 それを聞いて、少年の顔も真剣な物になる。

「見ない顔だな、何処の物だ」

 華夏が言う。

「あたしは、谷走の華夏といいます。こちらは、間結の曙と白風の和ですが、ただし、未来から来ました」

 頭を掻く少年。

「そんな技術まで創ってるのかよ。俺は、萌野の強羽キョウウだ。どんな用件で来たんだ?」

 和が真剣な目で答える。

「白書の回収です」

 強羽は、少し悩んだ後、答える。

「それなんだ?」

 華夏が小さく溜息を吐いて言う。

「今回は、外れの人に当たった気がする」

「とにかく、俺の妹の所に行こう」

 強羽に案内されて、華夏達は、強羽にそっくりな辻易者の少女の所に行く。

「これが、俺の妹烈羽レツウだ」

「この子達は、何者?」

 聞き返す烈羽に強羽が言う。

「何か複雑な事情みたいだから、食事をしながらでも話そう」

 こうして一同は、食事屋に向かった。



「白書の一部を紛失したですって!」

 思わず立ち上がる烈羽。

「まともな反応が返ってきた」

 華夏の呟きに強羽が首を傾げる。

「そんな凄い物なのか?」

「八刃にとって最重要記録よ!」

 怒りながらも思案する。

「それにしても、それを探すまでの時間が五十刻しかないとなると厳しいわね」

 それを聞いて曙がお気楽に聞く。

「あれ、この時代もそこそこ情報網があるって聞いてたけど?」

 烈羽が溜息を吐いて言う。

「あるわ。問題は、東洋の妖帝の支配力の広さよ。問題の技術を管理しているのは、何処かを調べるのにも五十刻では、足らない可能性があるの」

「それでしたら、協力者を使ったらどうですか?」

 和として極々当然の事を言ったのだが、強羽も烈羽も眉を顰める。

「冗談としても笑えないぞ。今回の事は、八刃の問題だ、何で一般人を巻き込む」

 強羽の言葉に烈羽が頷く。

「そうね。全ては、八刃の中で解決しないと」

 華夏達が顔を見合わせる。

「とにかく、調査は、開始するわ。はっきりするまでは、私が確保した宿屋に居て」

「ありがとうございます」

 華夏が代表してお礼を言い、指示された宿に行く。



 宿の部屋で、お茶を飲みながら曙が呟く。

「何か、違和感を覚えますね」

 華夏も和も同感の様に頷くと和が持つ槍、蒼牙が言ってくる。

『八刃という組織は、元々閉塞的な組織だ。貴方達の時代の様にオープンになったのは、つい最近、ヤヤが八刃の長になった後くらいよ』

 驚いた顔をする華夏。

「本当ですか?」

『本当よ。あの先行者の七輝、導輝が視た未来もそれが元よ』

 蒼牙の説明に、顔を見合す華夏達。

「先行者ですか……」

 和が複雑な顔をする。

『あの戦いは、ヤヤの頑張りで悲しみを少なくすんだ。でも、大切な者を護りたい者同士の戦いだった』

 その場に居た蒼牙の言葉は、重い。

「あちき達も動いた方が良いね」

 曙の言葉に元々探索がメインの華夏が言う。

「でも、この時代に情報網が無いわよ」

 それに対して曙が答える。

「簡単よ、囮作戦」

 指差され首を傾げる幼女。



「ねえ、何か凄く危険を感じるんだけど」

 幼女の言葉に曙が言う。

「幼女に危害を加えられる存在がこの世界に居る訳無いじゃん」

「そうだけど」

 何故か不安そうな顔をして、どこぞの時代劇に出てくるピンクくのいちみたいな丈が短い忍者服を着せられた幼女が外を散策させられていた。

 すると、数人の危なそうな男達が現れ幼女を誘拐していく。

「さて、追いかけますか」

 曙が平然と言い、華夏が密かに追跡するのを見て和が呟く。

「えーと、物凄い偉い使徒である幼女様を囮にするなんて良いんでしょうか?」

『……不味いわね。でも、本人達が考えて動いているんだからここは、やらせておきましょう』

 蒼牙の諦めを含めた言葉に和は、従うしか無かった。



「もう、やだ!」

 涙目で嫌がる幼女。

「別に危ない目にあってないんだからいいじゃん」

 曙の言葉に幼女は、華夏と和に退治された男達を指差して言う。

「この変態達が、幼女に何を見せたと思うの!」

 曙は、平然と答える。

「勃起したチ……」

 流石に口を塞ぐ華夏。

「もう、こんな事は、手伝わないからね」

 拗ねる幼女の言葉に、困った顔をする和。

 そこに烈羽が現れて言う。

「貴女達、何をしているの?」

 和が慌てて答える。

「少しでも発見を早めようとあたし達も調査を……」

 烈羽が大きく溜息を吐く。

「あのね、調査ってそんな簡単なもんじゃ無いのよ」

 それに対して華夏が言う。

「そうですね。でも、出来るだけの事は、すべきだと思います」

 後から来た強羽が言う。

「得意なことは、得意な奴に任せるこれがベストな選択だろう?」

 子供に解らせる様な言い方。

 強羽達は、曙達の行動を子供の落ち着きの無さと判断していた。

 それに対して、曙が答える。

「得意じゃ無いとやっては、いけないんですか?」

 意外な質問に戸惑う強羽だったが、烈羽は、即答する。

「「得意な人間だけの方が、効率が良いの。そして、貴女達の行動は、邪魔になる可能性もあるのよ」

 華夏がはっきりと言う。

「それでは、得意な人たちだけに任せて確実に間に合うのですか?」

 痛い所を疲れて烈羽が黙ると今度は、強羽が言う。

「だからってこんな事をして逆に遅れても無駄だろうがよ」

 和が真直ぐな目で答える。

「無駄では、ありません。動くことに意味があるんです。お母さんが何時も言っています。例え小さく無力と思えても、力を合わせればより大きな力となるって」

 困った顔をする烈羽と強羽に蒼牙が告げる。

『お前達の考えも正しいだろう。だが、行動を起こさなければ何も達成できない。それも真実なの』

 強羽が頭を掻いて言う。

「解ったよ。しかし、こっちの奴等との連携をしろよな」

「はい。頑張ります」

 意気込む和。

 華夏は、実施に連携をとるための方法を検討する。

 そして、曙が幼女の方を叩いて言う。

「そういうことでこの後も囮をお願い」

「イヤー!」

 涙目で怒鳴る幼女であった。



「それで無事回収できたの?」

 戻ってきた曙達にヤヤが確認すると、和が胸を張る。

「はい」

 そんな和達の後ろでは、幼女が、青褪めた顔をして居たので、百爪が近づいて言う。

「どうした?」

「大人って怖い……」

 囮の時にみた、ロリコンの男達(一部女)の欲望むき出しな行動にショックを受けた幼女であった。

 そして、和達が帰った後、一人の少女、嘗て先行者を産み、八刃と敵対していた、星語ホシガタリ明日アシタがヤヤの元に来た。

「お久しぶりです」

「お久しぶりね。それで、あの予言の方は、どうなっているの?」

 ヤヤの質問に星語明日は、緊張した面持ちで告げる。

「変更は、ありません。そう遠くない未来、この世界と異界の出入りを防いでいた壁の一部が崩壊します。そして多くの異邪がこの世界におしかけて来る事になります」

 ヤヤは、真剣な顔をして言う。

「それで、その後は?」

 星語明日は、複雑そうな顔をして言う。

「解りません。異界の事が絡むため、正確な事が解らないのは、仕方ないのですが、それでも昔みたいに、八刃だけで戦って破れる未来は、みえません」

 ヤヤは、苦笑しながら言う。

「それでも勝てる保障は、無いって事だよね」

 星語明日が頷く。

「はい。でも、負ける未来も確定していません」

 ヤヤは、八刃の事、異邪の事がぼやかしながらも載っている雑誌を見ながら言う。

「工作は、続けている。後は、人の強さに頼るしかないね」

 星語明日が真直ぐな目で言う。

「信じたいと思います。八刃が変わった以上、人の未来も変わる筈です」

「今後の為にも、白書の回収を急がないとね。本当の戦いは、その後なんだから」

 ヤヤの言葉に星語明日が告げる。

「その件ですが、私の予知が……」



 曙と華夏と和の八刃白書を回収する過去への旅は、まだまだ続くらしい。

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