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一通の手紙

作者: tomo

私の名前は沖本直人(おきもと なおひと)年齢45歳、ごく普通のサラリーマンである。


娘は沖本美香(おきもと みか)年齢18歳、友達も多くよく家に連れてくる。


そして妻は沖本直美(おきもと なおみ)年齢43歳だった。


この手紙は私の亡くなった妻からの手紙だ。


妻は2年前癌の病気で他界した。


そして私と娘二人を残して先立ってしまった。


チュンチュン


部屋の外から聞こえるスズメの鳴き声。


いつもいつも変わらない朝・・・。


だが少し変わっているのは妻が居ないこと・・・かな。



-始まり-


2年前


娘は中学3年生受験生だ。


妻とは20年前に結婚した。


「トントントン」


リビングの調理場で朝食を作っている妻。


そしてまだ部屋でぐっすり寝ている美香。


「あなた、そろそろ美香を起こして頂戴」


「あぁ分かった」


直人は二階に上がり美香の部屋の前で叫んだ。


「美香!もう時間だぞ!!起きなさい! ・・・ 入るぞ」


「うーんパパもう少し・・・」


美香は15歳(当時)活発な中学生だ。


「ホラ起きないと遅刻するぞ?」


「うーーんわかったぁ」


そしてリビングに降りるとすでに朝食の用意が出来ていた。


「あなた、美香わ?」


「あぁ今降りてくるよ」


「パパママおはよう」


美香は眠そうな顔を擦りながら挨拶した。


「おはよう」


二人同時に挨拶した。


「さて御飯も食べたし着替えて会社にでも行くか」


「あっあなた、お弁当忘れてるわよ」


「おおありがとう、じゃ美香行って来るからな」


「うん、いってらっしゃい」


夕方


「うーーーん会社も終わったし今日は俺が買い物して帰る番か」


買い物はいつもローテーションで決まっている、そして今日が俺の番。


会社も終わり直人はスーパーで買い物をしていた。


「プルルルプルルル」


すると直人の携帯電話が鳴った。


「公衆電話からだ、はいどちら様でしょうか?」


「あっパパ?わたし美香!ねぇパパ直ぐに大田丹第一病院に直ぐ来て!ママがママが!」


「わかった!落ち着きなさい!何があったのかいってごらん」


「うん・・・今日学校から帰ったら近所の人がママ病院に運ばれたのよ?って教えてくれて近所の人の車で大田丹第一病院まで連れてってもらったの」


「そうか分かった、これからパパも行くから待ってなさい」


10分後、直人は病院に着いた。


あたりを見回すと近くにナースステーションがあった。


「あの、すみません沖本と言いますが」


「あっ沖本様ですね?お伺いしています、こちらえどうぞ」


すると霊安室に案内された。


「えっ・・・霊安室・・・」


コンコン


「お父さんがこられましたよ」


中に入ると白く冷たくなった妻がベッドに居た。


美香が泣きじゃぐりながら立ち上がり


「ママが・・・ママが・・・」


と直人に抱きつき何度も何度もママの言葉を口にした。


「失礼します。我々も精一杯努力をしたのですが・・・発見が遅かったようで・・・救急隊が自宅に着いたころには息がなかったそうです」


「それは・・・ありがとうございます」


-手紙開封日-


3年後


会社帰りに直人はふと思い出した。


「そうだ、今日は娘の誕生日だ」


直人はケーキを買いに行った。


「いらっしゃいませ!」


「あのー、このいちごのロールケーキください。それと今日は娘の誕生日なんで名前を書いてもらえますか?」


「娘さんお誕生日なんですね。おめでとうございます」


「ありがとう」


「沖本様ケーキが出来上がりました。3500円になります。ありがとうございました!」


直人がケーキを買って腕時計を確認するとすでに20時30分を廻っていた。


ふと横を見るとそこに一本の路地があった。


「ここは・・・娘が小さいころよく児童公園に通っていた道だ・・・ちょっと寄り身して行くか」


外路地を少し歩くと公園の明かり見えてきた。


「この公園まだあったんだな」


ギーコギーコ


直人はブランコに乗っていた。


「このブランコ思い出すな」


-小さいころの思い出-


「ままぁブランコにのろぉ?」


「ほらほら走ってるとこけるわよ」


「はやくーー」


「美香!こっち向いて手振ってごらん!」


「いぇーーい」


「美香っ可愛いなぁー」


直人はビデオを撮っていた。


「ねぇーあなた・・・」


-目覚め-


「あぁいかん少しうとうとしてしまった・・・最後の妻の一言なんだったんだろう・・・・

 ビデオを撮るので夢中だったから最後まで聞けなかった・・・」


明るい公園の外灯を少し眺めていた。

すると雨が降り始めた。


「ポツポツポツ」



「うん?雨だ・・・走って帰らないとケーキが台無しだ。早く帰らないと待ってるしな」

 

幸助は手を出して雨の量を確認していた。


「ポツポツポツポツ」


「よし、今なら間に合う!」


「タッタッタッタ」

「タッタッタッタ」

「タッタッタッタ」


「ちょっと雨脚が強くなってきたな」


ザー−−−−


「タッタッタッタ」

「タッタッタッタ」

「タッタッタッタ」


走って家に着くと傘も差さないで玄関の前で誰か立っていた。


それは美香だった。


「おい美香雨なのに傘も差さないで立ってると風邪引くぞ?」


玄関の前で美香が泣きながら傘も差さず立っていた。


「だって・・・パパ帰ってこないし・・・家の中一人で怖かったもん」


美香は泣いていた。娘の泣く姿を見るのは小学校以来だ。


「すまなかったな。今日は美香の誕生日だろ?帰りにケーキ買ってきたんだ」


「えっ・・・パパ・・・覚えてたの?いつもはママが買ってきてくれるの・・・ママが亡くなってからは一度もなかった・・・」


「今日は豪華な料理だぞ!」


直人は美香の肩に腕をよせ一緒に家の中に入って行った。


「さぁー美香食べよう!」


寂しそうな美香の顔を見て直人は泣きそうになった。


「どうした美香食べないのか?」


すると美香は怒った顔で。


「パパと二人っきりなんて寂しいよ!!」


と言った。


「美香・・・」


ガチャン!!


机を叩き立ち上がった美香が走って二階の自分の部屋に行った。


「ママ・・・なんで居なくなっちゃうの?私寂しいよ・・・」


ベッドの中で美香は家族の写真を見ながら泣いていた。


「コンコン」


「美香入るぞ?」


扉を叩いても返事がない。


「ごめんな・・・パパなにもお前に出来なくて・・・いつもいつもお前に迷惑掛けてばかりだ、

 辛いときでも毎日明るく接してくれていた、ママが亡くなってから誕生日って事を忘れずっと仕事ばかりしていた」


ガチャ 


扉が開いた。


「パパ・・・さっきは怒ったりしてごめんなさい」


「美香は凄く辛かったんだな」


部屋に入ると直人は美香を優しく抱きしめた。


すると部屋が明るくなった。


直人が窓を見ると雲の影から月が出ていた。


二人はベッドに座って話をした。


「ねぇパパ・・・なんでママは亡くなったの?」


「・・・そうだなもうお前も大人だし・・・話しても良いだろう。ママな小さい頃から癌を患っていたんだ

 パパも付き合い始めてその話は聞いた。



「うん・・・パパあたし寂しいの・・・パパと居て楽しいときもあるけどでも三人で居た方がもっと楽しかった」


「そうか辛かったな、ごめんないつもいつも」


「でもね、ママはパパのこと凄く好きだったでしょ?だから今度は私がパパの事をママ以上に好きになる!!!」


「ありがとう」


直人は泣いてしまった。


「パパ泣かないで、御飯食べよう?」


「そうだな、ご飯食べよう」


二人はリビングに降りて椅子に座った。


すると美香が


「そうだ、学校から帰ってきてポスト除いたらママからの手紙が来てたよ?まだあけてない」


と言った。


ママから手紙?そんなはずはない。と直人は思った。


「今見てみるか?」


「うん!」


直人は手紙を手に取り開封を始めた。


「ガサガサ」



拝啓


暑い日ざしがまだまだ降り注ぐ9月いかかがお過ごしですか?


この手紙を受け取る時には私はもう亡くなっているでしょう。


あなた?ビールばかり飲まずにちゃんとした生活してる?


美香、あなたはしっかり勉強してる?


それから美香?パパを宜しくね。


パパ寂しがりやだから。


強く立派な女の子に育ってね?


これはママからの約束。


最後に・・・あなた、ずっとそばに居てくれてありがとう。


小さい頃好きって言ってくれてありがとう。


まさか余命1年の私が子供を出産して中学に入るまで見届けれるなんて夢にも思わなかった。


あなた、ずっとずっと居てくれてありがとう凄く楽しかったよ・・・


美香をよろしくお願いします。


敬具


直人が読み終わると二人とも泣いていた・・・。





























この小説をお読みになってありがとうございました。

この小説を書いているとつい泣いてしまいました。


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