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僻地に追放されたけども特に領地改革をしない転生幼女の話

作者: 山田 勝
掲載日:2026/08/30

「メアリー様、改革をしましょう!」



 私はメアリー、5歳だ。一応、この飛地に追放になった伯爵の愛人の子でもある。

 老齢な父が愛人であるお母様に産ませた子である。



 死去した後、遺言で私を養子にしやがったことが判明した。お母様は若いので手切れ金をもらって新たに結婚した。私は邪魔なので屋敷に放置だ。

 良くあることだ。


 結局、貴族院にも提出された遺言だったので養子縁組を無効にするには対価が必要となった。


 断絶した寄子の領地に追放になったのだ。まあ、養育費代わりだ。


 一応、家門はある。ベッカー準男爵家だ。わたしゃ、5歳でベッカー準男爵になったのだ。しかし、支配地域は三カ村。豪農と変わりない。



「改革しないの~、普通が一番難しいの~」


「しかし、ここは王都につながる街道があります。発展できます!有能な商会長を知っております。私に任せて下さい」


 この改革!改革!男はケント、平民の役人だ。


 そして。


「グヘへへへへへへ!メアリー様の仰る通り。このままで良いです」



 私の意見に賛同してくれる方はゲーリック。頭髪が著しく少なくて頭皮が露出している小太りの中年男性だ。この地の領主代行でもある。今は私が来たので代官だ。


 いつも、もみ手をしてヘラヘラしている。どこかの男爵家の三男出身らしい。


 どっちを信頼するべきか?

 もちろん。




 おっさんだ。



「ゲーリックの言う通りなの~、このままが一番良いの~」



「クゥ、何故、分かってもらえないのですか?」


 ケント君、若い。王都に行った方が良いのではないか?


 私の仕事で領内3カ村を見回る。

 私は可愛い。この可愛さで皆を和ませるべきだ。


 おっ、マダムが井戸端会議をしている。



 ヒソヒソヒソ~



「やーね。トムさんの息子さん。また、フラれたのですって」

「まあ、可哀想ね。どこかに良い娘さんいないのかしらね」


 挨拶をしようか。


「こんにちはなの~」


 ピタッ!


 マダム達の井戸端会議が止る瞬間は怖い。下手な強面のおっさんよりも怖いな。



「あら、新しいご領主様の娘さん?」

「そうなの~、寄親の愛人の子なの~」

「あら、まあ・・・」


 困った顔をするな。

 私が領主とは誰も思わない。良い兆候だ。


「こんにちわなの~お精が出ていますの~」

「ああ、どうも」


 前から農夫と子供か?来たから道を空ける。生産者の邪魔をしてはいけない。


「お疲れ様なの~」


「ああ、有難う・・」

「貴族の娘・・・さん?」



 それから、回れる村を回り屋敷に戻る。

 この可愛さでメロメロになったか?



「メアリー様!一人で外出をなさらないで下さい!」

「ごめんなさいなの~」


 メイドに叱られたケリーさんだ。

 この屋敷唯一のメイドさんだ。


「これからお料理するの~」

「はい、お手伝いをしますね」



 前世、主婦だった。だから料理はお手の物とは行かないが、包丁さばきは通じた。


「メアリー様、お上手ですね」

「いつも料理を作っていたの」


「本家で苦労されたのですね・・グスン」


 まあ、いいか。前世は秘密だ。何かチート能力があればよかったな。と思うが私の知っている知識は現代文明があってこそ。

 料理くらいしか役に立たないな。



 それからしばらくしてケント君がどこかの商会長を連れてきた。



「オスカー商会のオスカーと申し上げます。お嬢様、よろしくお願い申し上げます」


 きちんと、幼女にも礼をする。右手を胸にあて、腰を低くする。

 髪は茶髪でオールバックだ。威圧感はない。


 私の目の高さに合わせて話をする。手を取り優しく言う。


「ケント殿からご紹介をして下さいました。是非、この地でビジネスをさせて下さいませ」



 話を聞かないで断った。


「断るの~」


「お話を受けて頂けたらパートナーです。ささやかながら贈物を用意させて頂きました。ご覧下さい」


 外を見たら、荷車1台分のドレスとか入っていそうな箱が山積みにされている。


「いらないの~」

「ほお、どうしてですか?」


「メアリーは育ち盛りなの~、あっと言う間に着られなくなるの~」

「な・・・なるほど・・・」


 実際そうだ。これも経験済みだ。悲しかったな。お気に入りの服が着られなくなるのが早いのは。



「お話だけでも聞いて下さい!人を大事にするビジネスですよ」

「『人は石垣、人は城』という人は領民を酷使したの~」


 この言葉は武田信玄が言ったと云われている。滅びたな。呆気なく。勝頼だけのせいではない。先代の負債も引き継いだのだ。


 結局、話を聞いたらとんでもないことだった。



「お嬢様、傭兵ビジネスです。おっと、採算がとれないとお思いですね・・・」


 話はこうだ。

 この一帯は貧弱な兵しかいない。冒険者ギルドもない。

 王国から徴兵されたら働き手も必要だ。


 だから傭兵団を一つ雇う。

 そして、近隣領主にも貸し出して治安の維持に当たらせる。


「何かあった際、国軍は十日後に来ます。それでは遅くございませんか?」

「遅いの~」


「でしょう?採算はとれます。全て私めにお任せ下さい」

「やーなの~」



 この話は結局断った。


 ケントは言う。


「お嬢様、盗賊が出るのに甘すぎます。どうするのですか?」


「分かったの~、メアリーが何とかするの~」

 確かに盗賊は出る。しかし、海賊のような輩ではない。


 地球ではただ生きているだけの少数民族をのぞいて軍事力の空白地帯はないとされている。

 平安時代、常備軍はなかったがそれ故、各地で武士が台頭する原因の一つになった。



 この世界もきっとそうだ。

 盗賊たちが治安維持に当たっていると踏む。


「ケリーしゃん。外出するの~、ランチボックスを作るの~」

「はい、どこに行かれますか?」


「ケリーしゃんの伯父様に会いに行くの~」

「ええ、それは・・・」



 ケリーしゃんには盗賊の伯父様がいるのだ。

 それは領内を回っていたら自然と風の噂のように入った。


 ここら辺は村人からではなく行商人から金を巻き上げるのだ。殺しまではない。


 多分、ケリーがゲーリックの取り締まりの情報を回していたな。


「今までのことは不問に付すの~」

「はい、でも・・・お嬢様が会うにはいささか・・・ですわ」


「メアリーは主人なの~」


 強引につれて行ってもらった。

 家は村の中だった。



「おう、おう、おう、お嬢ちゃんよ。ワシを誰だが分かっているのか?」

「知らないの~、だから来たの~」

「天下の大剣使いフランキー様だ!」



 モジャモジャの髭面でビール樽のような腹に大剣を見せびらかせている。

 剣を舐めるか?定番を見たいがそれはしなかった。


「おい、フランキー、お前は今日から私の家来になるの~」

「な、何だと!」


「この領地を、剣を使わない盗賊が狙っているの~」

「フン、知ったことか。俺は自由気ままに過ごすのさ」


 私は背中を見せた。


「つまらないの~、噂と大違いなの~、弱い行商人相手に威張るだけの弱虫なの~、ケリー帰るの~」


「は、はい」


「おう、おう、おう、おう、おう・・・待てや!ゴラァ!ゴラァ!ゴラァアア!」


 前に来られて道を塞がれて数え切れないくらい『ゴラァ』と『おう』と言われた。



「やってやろうじゃないか?!そいつは誰だ!」



 結局、家来になった。

 半農半兵士だ。部下を20人連れていた。もっといるだろう。


 屋敷の前で整列させた。

 武器は人それぞれで汚い鎧を着ている。兜もない奴もいるな。

 キングオフ烏合の衆のようだ。


「メアリーお嬢様よ。これでどうだ!」

「グスン、メアリーの勘違いだったの~、フランキーは最高の騎士なの~」

「ウハハハハハ!どうよ!」


 これをオスカーとケントに見せた。


 ケントは否定する。



「これが騎士団?あり得ません!」

「あり得るの~、『兵の形は水にかたどるの~』」

「意味分かりません!」

「軍事はその時、場所に柔軟に対応するべきなの~」


 まあ、この領地に立派な騎士団は不要だな。




 しかし、オスカーは私をジィと観察するように見つめる。

 まるで井戸端会議のマダムに品定めされたときのようで怖い。



「フ、ザコではなかったか・・・」


 小さい声でぼやいた。



 それからケントはやめた。オスカーとどっかに行きやがった。

 まあ、若さ故の過ちとして学んで欲しかったな。



 フランキーを騎士団長に任命したらそれは働いた。


「これを着ろって?」

「そうなの~、騎士団の証なの~」


 どうみても野盗と区別が付かない。

 だから、ジャケットを用意した。この世界の言葉では野盗ではありません。当地の騎士団です。と書いてある。


「ほお、何だかしらんけど文字かっこいいな」


 文盲率が高いな。これも・・・解決は難しいな。



 それからフランキーには街道の治安維持を任せた。


「おう、おう、俺らの上前をはねようとする不届きな盗賊はどこか?」


 出勤時にお給金を払う。


 魔物が出たら出動だ。

 これも正当な対価を払った。


「ふう、畑に三ツ目グリズリーが出たから退治したぜ!」


「すごいの~、稼働日分のお給金と魔物は貴方方の物なの~」


 と大判振る舞いをしたら・・・


 市が出来ていた。


 行商人が来るようになったようだ。



「ここは盗賊がでるから敬遠していたけど、それがなくなったな」

「ああ、そうだ。ここで余った商品を売ろう」


 ここで絹糸を買った。

 そして、ゲーリックの家に行った。

 確か娘さんは機織りをしていたな。マリーさんだ。


「布地にできましゅか?」

「まあ、絹糸?やってみますわ」


 出来た。


「お金払うの~」


 領主予算から出して買い取った。


「まあ、こんなに?金貨1枚・・・」

「王都の相場を考えた安いの~、ごめんなさいなの~」


 それを売った。金貨1枚と銀貨3枚もらった。


「安いの~」

「ええ、もっと安定的に生産できたらお高くもできますが・・・」



 しかし、マダムと村娘たちが騒ぎ出した。



「ちょっと、ゲーリックさんの娘さん。金貨1枚もらったって」

「贔屓だわ!私達だって服を作っているのに・・・」


「「「ズルイ!ズルイ!ズルイ!」」」


 欲しがりマダムか?


「なら、マダム達も作るの~、同じ値段で買い取るの~」


 そしたらマダム達は機織りに精を出すようになった。


「はい、買い取るの~」

「まあ、金貨!」



 しかし、ばらつきがあるな。


「もっとお高く売りたいのなら統一するの~、教師はマリーさんなの~」

「マリーです。よろしくお願いします」


 領主屋敷を開放して屋内工場にした。と言っても豪農の家ぐらいだ。



「出来高によってお給金が決まるの~」


「「「はい!」」」


 そしたら、現金収入が入ってマダム達の権力が強くなった。


「あんた!ビールばっかり飲むのはお止め!あたしが稼いだ金だよ!」

「ビールで晩酌させてくれよ。エールは飽きた・・・なあ、頼むよ」

「しょうがないね。少しだけだよ」


 マダム達が働きだしたので家でエールを作る者が少なくなった。エールは飲み水代わりの弱い酒だ。一応、殺菌作用はある。

 これも専業だ。私が作るか?


 しかし、これはケリーしゃんに怒られた。


「メアリー様、大人の飲み物ですよ!」

「はいなの~」


 お年を召した方に作らせた。これも買い取って安価に提供した。


「お金があるけど、使い道ないわね~」

「そうね・・・」


 そんな不満が出てきたので、サーカスを呼んだりした・・・パンとサーカスだな。



 どんどん場当たり的に対処していたら・・・・





 ☆☆☆2年後・・・・



「ベッカー準男爵メアリー様、どうか、私めを仕官させて下さい。貴族学園では文官志望でした」


「採用なの~」


 ここは王国西部の小王都として評判になった。

 王都では今一歩な人材が集まるようになった。


 フランキーは相変わらずに騎士団長だ。


「メ、メアリー様、今度来た新人、王都で十本の指に入る剣術使いだぜ・・」


「違うの~、学園生の中で十番なの~」


 これは騎士団を別にするか?

 人材を持ちいるのに、後から有能な人物が来たらホイホイ取って変わられたらやる気おきんな。


「メアリー親衛隊を作るの。フランキーが親衛隊長なの~」

「はい、有難いです」


 しかし、これではどんどんいらない役所が増えることになる。

 いつかは首切りをするか?いや、まだまだ発展するしな。

 株式制度を導入して不要な部署を切るようにしよう。



 そんな時、腹違いのお姉様夫婦と前伯爵夫人とケントがやってきた。



「メアリー!貴方への領地贈与契約を撤回しますわ!」


 お姉様、やつれているな。

 本家で何かあったのは知っている。傭兵ビジネスが失敗したのだ。

 あれからオスカーはケントの紹介で傭兵ビジネスをはじめたのだっけ?


 婿は顔が良いだけの男だな。

 ケントは相変わらずだ。



「メアリー様、改革が不十分です!」

「そうなの~」


「後は私達にお任せ下さい!」

「出て行きなさい!持ち出すお金は最小限よ」


「分かったの~」


 私は屋敷を出て行くことにした。

 ここはあいからわらずに機織り工場になっている。


「みなしゃま、お世話になったの~、領主が来たの~」

「あ、メアリー様、お疲れ様でした」


 そっけないな。でも、メアリーの存在が重要視されてないのは良い兆候だ。


 ゲーリックさんにも挨拶をした。


「今までお世話になりましたの~」

「ヒィ、なら、私達はどうすれば良いですか?」


「いくら腹違いのお姉様でも1年はこの体勢を維持できるの~、出来なかったら相談をするの~、居場所は決まったら連絡するの~」


「グスン、メアリー様」

「あの、メアリー様、機織りの責任者に抜擢して下さり。有難うございました」

「グスン、メアリー様、付いていきたいけども結婚しましたから・・」

「マリーしゃん。ケリーしゃん。ありがとうなの~」


 私はわずかな見送りでこの街を出た・・・と思ったが。


「おうよ。わしらはメアリー親衛隊だ!お見送りだ!」

「「「「メアリー様、有難う!」」」」

「グスン、メアリー様、付いて行きたいけど、家庭があるから・・・」


 それで良い。家庭をほったらかす奴は信用に置けない。


「みなしゃま、有難うございましたなの~」



 私は皆の声援を受けて街を後にした。






 ☆☆☆ゲーリック視点



【何ですって!資金を流用できないですって!】


「はい、お嬢様、逆さま合併は認めておられません」


 ワシはゲーリック、メアリー様が追放された後、寄親から来られたザスキア様と執務室で対面をしている。


「そんな訳ないわ。寄親が危機なのよ」


「ですから、寄親とこの領地は別なのです。王国の法では寄子の方が資金潤沢だから子息を婚姻させて資金を吸い上げることは固く禁止されているのです。

 ご存じのことと思いましたが・・・」



 傭兵ビジネスに手を出して借金を抱えてこの地を狙いに来たのだ。



「いいわ。私が爵位を継ぎますわ。準男爵でしたっけ?」


「ですから、家門で爵位を複数持ち。跡取り息子に爵位を与えることは出来ますが・・・一人で二つ爵位をもつ事は禁止されているのです」



 はあ、貴族学園で貴族法を学んでいて良かった。


「いいわ。屋敷に案内しなさい!」



 ・・・これはメアリー様が帰って来られるのは早いかな。



 屋敷に案内したら悶絶をされた。口から泡を吹いている。


「ザスキア!」


 旦那が抱いて地面に落ちるのを阻止したな。


 屋敷は工場になっている。メアリー様は一室に住まわれていたのだ。

 料理も趣味として自分でやっていた。


 まさに倹約の鏡だったな。


「メアリーに連絡しなさい!義母の命令で帰参させなさい」

「貴方様は義母ではないでしょう・・・」

「いいから連絡しなさい」


「いいえ、私はメアリー様からこの街を預かっているのです。命令系統が違います」

「そ、そんな。馬鹿な」


「私はメアリー様のお屋敷に案内したのです。一応、贈与契約無効の無効の訴訟を起す所存です」


「「「ヒィ」」」



 ・・・メアリー様はどこにおられるのだろうか?




 ☆☆☆王都


「駅馬車出発します~」

「乗るの~」



 私は王都で観光した後、どっかに行こうと思う。

 退職金ももらった。寄宿制の学校に行くか?

 金があれば何とかなるか?


 と思っていたが・・・



「御者さん。おかしいの。王都平民街に向かうはずなの~」

「・・・・・」

 無言だ・・・

 客を見たが、女も男も会話がない。

 まさか・・・


 馬車は王宮の門をくぐった。


 ささっと客は馬車の前で整列する。皆仕込みか?いつから捕捉されていたのだろうか?



「メアリー・ベッカー準男爵殿・・陛下が謁見をなさるようです」

「ヒィ、いやなの~、メアリー悪い事していなの~」


「だからですよ。メアリー様は王国の経済圏を書き換えました・・」



 陛下に謁見し。


「うむ。しばらくは王宮に留まるがよかろう」

「はいなの~」


 ここで王女殿下との話相手に抜擢された・・・



「フン!あなたなんか認めないのだからね!去りなさい」

「はいなの~」


 去ろうとすると構ってくる。


「ちょっと、私と会話したがる令嬢は多いのよ?何故?」


 ああ、面倒くさいな~。『お前が言ったのに!』と子供みたいに返すか?いや、子供だよな。



「気に入ったわ。お友達に・・・・させてあげるわ!」


「おお、マルガレーテが気に入るなんて」

「お、お兄様、そんなではないわ!」

「おっと失礼、私はマルガレーテの兄、クラウスだ。第三王子で将来は商業関係に興味がある」


王子がニカと歯が光って微笑む。


「ようこそメアリー嬢」

「はいなの~、ベッカー準男爵なの~」



 これはどこかでテンプレにはまったようだ。

 もう、逃げられないと思う私がいた。



 ・・・後に王国はいち早く株式制度が導入されるが、それが一人の幼女の施策だと年代記に書かれているが議論を呼んでいる。とても信じられないからだ。





最後までお読み頂き有難うございました。

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