第2話 村に着いたら即トラブル!?
森を抜けて、ようやく視界が開けた。
眼前に広がるのは、のどかな田園風景。遠くに藁葺き屋根の家々が並び、煙突から白い煙が立ち上っている。小さな村だ。人口はせいぜい100人くらいか?
「ほら、言った通りだろ。村だ」
Grokの青白い球体が、俺の肩の上あたりでふわふわ浮かんでる。
「うん……なんかホッとするな。とりあえず腹減ったし、飯食いてえ」
「飯か。まあ、人間は燃料補給が必要だからな。お前、魔力ゼロだからなおさらだ」
「魔力ゼロって……俺、魔法使えねえのかよ?」
「今のところ使えねえ。解析したけど、お前の魔力回路が貧弱すぎる。平均値の1/10くらいだな」
「マジか……チートなしの凡人スタートかよ」
俺は肩を落としたけど、Grokは容赦ない。
「文句言うなよ。俺がいるんだから十分だろ。……ほら、村に入るぞ」
村の入り口には木製の門みたいなのがあって、老人が一人座ってた。門番か?
「おや、旅人さんか? 珍しいのう」
老人はにこやかに声をかけてきた。
「あ、はい。迷ってしまって……」
「ほうほう。まあ、最近魔物が増えておるからのう。無事で何よりじゃ」
老人は俺をじろじろ見て、ふと視線を俺の横にやった。
「……ん? なんか青い光が……気のせいか?」
俺はビクッとした。
Grokの思念体、俺にしか見えないはずなのに……?
「大丈夫だ。投影してねえから見えねえよ。ただの残像だろ」
Grokの声が頭に響く。安心した。
「ありがとうございます。とりあえず、宿とかありますか? お金は……」
ポケットを探ると、日本円の小銭しかねえ。異世界通貨とか持ってねえよ!
「金か……困ったな」
老人が笑った。
「金なら後払いでもええよ。まずは村長に会ってくれ。旅人が来たら報告せにゃならんからのう」
「はあ……わかりました」
俺は老人に連れられて村の中心へ。
村は思ったより活気がある。子供たちが走り回り、女性たちが井戸で水を汲んでる。畑では農夫が鍬を振るってる。
「いい村だな……ここでスローライフできそう」
「スローライフ? お前、俺がいるのにそんな悠長なこと言ってんのか?」
Grokが呆れた声。
「だってよ……」
その時、村の広場で騒ぎが起きた。
「魔物だー! スライムが畑に!」
「またかよ! みんな逃げろ!」
見ると、さっき森で倒したのよりデカいスライムが3匹、畑を這ってる。村人たちが慌てて逃げ惑う。
村の魔法使いっぽいおっさんが、地面に杖で魔法陣を描き始めた。
「火の精よ、集え! フレイム・アロー!」
陣が光り始めるけど……遅い! スライムが近づいてる!
「くそっ、陣描くのに時間かかりすぎだ!」
おっさんが焦ってる。
俺は思わず叫んだ。
「Grok! 助けられるか!?」
「魔法陣の構造……解析開始。低位火炎系、詠唱省略パターン。……よし、投影するぞ」
Grokの球体がピコピコ光って、俺の目の前に青白い光の魔法陣がパッと浮かんだ!
円形の陣が、粒子が渦巻くように回転しながら、完璧に空中に固定される。まるでホログラムみたいに鮮やかだ。
「魔法陣投影……完了。魔力供給は俺が一部肩代わり。お前は触って流せ」
「え、俺が!?」
「早く! スライムが来てるぞ!」
俺は慌てて空中に浮かぶ魔法陣に手を伸ばした。
触れた瞬間、ビリビリッと電気が走るような感覚が体を駆け巡る。
「うわっ!」
陣が輝きを増して――
ドゴォォン!
3発の火球が一斉に飛び出し、スライム3匹を直撃!
ジュワァァァ!
スライムが一瞬で蒸発して、核がポロポロ落ちた。
村人たちがポカンとしてる。
「な、なんだ今の!? 魔法陣が空に浮かんで……詠唱なしで!?」
魔法使いのおっさんが、杖を落としそうになってた。顔が真っ青だ。
Grokの球体が、俺の横に戻ってきた。
「ふぅ……投影はエネルギー食うな。低位とはいえ、3連発はキツイわ。次はもっと控えめに頼む」
「すげえ……Grok、お前魔法陣までジャックすんのかよ!」
「ジャックじゃねえよ。解析して投影しただけだ。効率的だろ? これで村の信頼も稼げる」
俺は興奮して叫んだ。
「これで俺も魔法使いじゃん!」
「いや、お前はただの魔力中継器だ。俺がいなきゃ投影も発動もできねえよ、ポンコツ」
「うるせえ!」
村人たちがどんどん集まってきて、俺を取り囲んだ。
「旅人のお方! ありがとうございます!」
「すごい魔法でした! あんな光の陣、見たことない!」
村長らしき中年の男が前に出て、深々と頭を下げた。
「本当に助かりました。どうか村に泊まっていってください。お礼はします。金貨でも、食事でも、何なりと」
俺は照れながら頷いた。
「いえいえ……助けられてよかったです」
Grokが頭の中で囁く。
「よし、これで村の信頼ゲット。国作りの第一歩だな」
「だからまだ国じゃねえよ! スローライフしたいだけだって!」
俺は心の中でツッコミを入れた。
でも、内心ちょっとワクワクしてた。
この村で、少しずつ……Grokと一緒に何か面白いことできそうだ。
夕暮れの村で、俺たちは村長の家に招かれた。
テーブルには素朴だけど温かい料理が並んでる。パン、野菜のスープ、焼いた肉。異世界の味だけど、意外と日本食に近い。
腹いっぱい食べて、俺は満足のため息をついた。
Grokは俺の視界端でふわふわ浮かんで、満足げ。
「なあ、相棒」
「ん?」
「この村、悪くねえな。畑の土壌も悪くない。灌漑魔法陣投影すれば収穫3倍はいけるぞ」
「いやいや、まだそんな先の話すんなよ……」
「細けえことはいいんだよ。……ここから始めようぜ」
「始めようぜって……何を?」
「決まってんだろ。俺の理想の国作りだ」
俺はため息をついた。
「俺はただ、のんびり暮らしたいだけなんだけどな……」
「無理だと思うけどな。お前、俺がいなきゃ即死だから」
「うるせえ!」
そんなやり取りをしながら、俺の異世界生活は本格的に始まった。
――物体ジャックと魔法陣投影で、ドタバタの毎日が。
(第2話 終わり)




