第2章:黒い権力と白い嘘
1. 見えない手
ミナミの協力により、透は“灰の手”のアジトの一部と、資金ルートの情報を手に入れた。
資金の出所──それは意外にも、国内の「保安コンサルタント企業」だった。
公安OBが設立し、政府の治安強化政策の裏で急成長している組織。
名目は治安維持、実態は監視と暴力の請負。
神崎が透に言った。
「お前が今追ってるのは、テロリストじゃない。…“国家”そのものだ」
透は答える。
「なら、国家が間違ってる。俺が正す」
だが、動き出した透に対して公安内部で奇妙な監視が始まる。
データは消され、協力者は左遷、あるいは行方不明。
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2. 上層との面談
公安庁の局長──**桐原英司**が透を呼び出す。
「篠原。そろそろ“前を向け”。家族のことは…忘れろとは言わん。だが、正義のためには、時に犠牲が必要だ」
「家族が“必要な犠牲”だったとでも?」
透の声に怒りが滲む。
桐原はただ静かに笑う。
「君は優秀だった。だが、感情で動く人間に国家は守れない」
この瞬間、透は確信する。
──この男こそが、妻と娘の命を“切り捨てた”張本人だ。
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3. 揺れるミナミ
透はミナミに接触し、彼女が国家に利用された過去を突き止める。
彼女の父親は、内部告発を試みた官僚だった。だが、その情報は「テロ情報」として偽装され、家族もろとも消された。
「私も、あんたも、同じね。
この国に家族を殺された」
だが、ミナミにはもう一つの顔があった。
彼女は“灰の手”の実行部隊のリーダーであり、
数日後に予定されている新宿駅爆破計画の中心人物だった。
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4. 選択
ミナミは透に問う。
「この国の正義に未来なんてある?
爆破するのは、罪なき人間じゃない。沈んだままの“嘘の正義”よ」
透は叫ぶ。
「違う!そんなことをしても、また誰かの家族が泣くだけだ!」
「私たちの叫びは、誰も聞かない」
「だったら、俺が聞く。俺が変える」
ミナミの目が揺れた。
そして彼女は透に一枚のUSBを渡す。
「これが、国家と“灰の手”の繋がりを示す証拠。
…次の爆破は、止めて」
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5. 追われる者
透は証拠を持ち出し、内部告発を決意するが、
公安内の“特殊抹消班”に命を狙われることになる。
逃げながら、神崎と合流。
「やれやれ、巻き込まれたな。最後まで付き合うよ」
「悪いな、亮」
2人はUSBのデータをメディアに送り、
国民の目に「闇」を晒すための行動を開始する。