プロローグ「風の始まり」
世界に朝日が差し込み、木々の間を縫うように影を与えた。目を覚ましたカラスたちは低い声で鳴き交わし、それぞれの家族に挨拶した。それから彼らは背伸びをするように自慢の黒い翼を動かした。
村のボスは引き締まった巨体で息を吸い込み、群れ全体に威厳のある声を響かせた。
「村のみんな、おはよう!! 朝礼の時間だ!!」
カラスの集会所は山の頂にそびえる大樹の上にある。その場所で朝と晩は村中の家族が一堂に会している。そうして集まった仲間たちは木の枝に腰を下ろしてボスに注目した。
「さて」とボスは言って規律よく整列した住民たちの顔を見回した。「今日は、晴れて巣立ちすることになった一羽の仲間を紹介しよう」
ボスは目配せをして小さく頷いた。「風太、ひとこと挨拶を」
指名された小さなカラスはゆっくりと皆の前に出て、深呼吸してから話し始めた。
「この度、長老より名前をさずかり、冒険隊の一員となりました。風太と申します」と彼は言って、右の翼を斜めに下げながら心を込めてお辞儀した。
「皆と協力して村の発展に尽力することを誓います。どうぞよろしくお願いします」
それを聞いた仲間たちは翼を大きく広げて歓迎の意を示した。
「うむ」と言ってボスは満足そうに頷いた。「それでは声を合わせて、カラスの三カ条!」
――――――
カー 「ひとつ! カラスは仲間を愛すること!」
カー 「ひとつ! カラスは楽しむ心を愛すること!」
カー 「ひとつ! カラスは自由を愛すること!」
――――――
「それでは、今日も一日」とボスが声をかけると、再び全員で呼吸を合わせた。
『美しい世界へ羽ばたこう!!』
ガァー!ガァー!
いくつものグループが漆黒の翼を羽ばたかせて一日の幕を開けた。陽を浴びたカラスの翼は空に美しい影を描いて町を彩った。
風太は新しい小隊に加わり、新生活の期待と不安に胸を膨らませていた。未知の冒険が待っていることに心を躍らせ、先輩の背中を追いかけて羽ばたいた。