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【閑話】蠢めく悪意〜タレイラン公爵の企み


烈歴 98年 5月31日 タレイラン公爵王都邸 とある一室


ここは王国の四公爵の1人、タレイラン公爵が所有する王都ルクスルにある邸宅だ。


王都からは西に位置し、相当な距離にあるタレイラン公爵領だが、王都にも豪奢な邸宅を構えている。


その豪奢な邸宅には、タレイラン公爵その人と空色と青色でショートカット髪型をした若い女性と全身に灰色の鎧を纏う大男、そして紅色の髪を後ろに束ねた男性もののスーツを着ている若い女性が一室に集まっていた。


その中で一際歳を重ね、上級魔術師の証である赤のローブに身を包むタレイラン公爵は、集まった面々に現状を説明した。


「ふむ。王城に潜り込ませた諜報員によるとリータ・ブラン・リアビティは、前情報通り王家を含む四公と接触を試みているらしい。しかし我らとは交渉する気はないようだ。皇妹風情が生意気だが、我らにとっては好都合だな」


「わざわざ王国くんだりまで来たんだ!何もしないまま帝国に帰るなんてごめんだぜ?」


鎧の大男がタレイラン公爵に物怖じせずに言う。


その様子をスーツを着た男装の麗人のような女性が鬱陶しそうに言う。


「……うるさい…何もないならそれでいい……報酬はもらうけど……」


「嘘つけよ!本当は戦いたくてしかたないんだろう?」


鎧の男が男装の麗人にニヤつきながら言うが、麗人は無視した。


そんななかショートカットの女性が、全身鎧の男性と男装の麗人に居丈高に言う。


「まぁ?あんた達は保険よ、保険。あたいの護衛?みたいなもんよ。気楽にやんなさい!」


「………たかだか魔術師風情がうるさいわね……その首いつでも斬り落とせるのよ…?」


「その言葉そのままそっくり返してあげる。あんたなんて秒で氷漬けにしちゃえるんだから!」


2人の女性は今にも殺し合いを始めんばかりに険悪な様子だが、全身鎧の男性は構わず大きな声で笑った。 


「……ぶははは!気の強ぇ嬢ちゃん達だ!」


「……よさぬか。プスキニア」

 

2人の諍いをタレイラン公爵がショートカットの女性を諌めることで止める。


「はーい。よかったわね、氷像にならなくて」


「……今首が繋がっていることの幸運に感謝しなさい……」


2人の諍いが落ち着いたところで、タレイラン公爵は話を再開させる。


「リータ・ブラン・ベラルディは王家と四公に極秘で会談を持つということを諜報員から確認している。なら王家との極秘会談はごく少数の護衛になるだろう。想定される護衛は王家はリクソン・ベタンクールと皇国はアウレリオ・ブラン・ベラルディ及びシリュウ・ドラゴスピア、そしてパオ・マルディーニだ」


「……それだけの戦力を急襲して、大丈夫なの?」


男装の麗人がタレイラン公爵に問う。


それに対し、ショートカットの女性がつまらない質問に答えるように答える。


「問題ないわ。あたいの氷塊で会談場所をまとめて潰すもの」


それに続きタライラン公爵も補足する。


「会談場所は王家に潜り込ませている諜報員から知ることができる。護衛の布陣もだ」


「………そこまで筒抜けなんて王家は脇が甘いのね…」


「うむ。あのベタンクールの小僧の周りは探れないが、王はまだ青二才よ。即位から日が浅いため、信じられる側近も少ない。その側近に潜ませておるからな」


「……老獪ね。これが王国のやり方かしら?」


「王国人は帝国人と違って、脳は筋肉でできておらぬからな」


「ぶははは!言うじゃねぇか、おっさん!まるで俺たちが考え無しの脳なしの言い方じゃねぇか?」


「………あんたは黙ってなさい……逆にそのことを証明してしまうわ…」


「ふっ。我らとそなたらは同志ではない。利害が一致している協力者だ。必要以上に馴れ合う気はなかろう」


「…それもそうね。主からは獲ってこれそうならあんたの首も獲ってこいとの指示を受けているくらいには、馴れ合う気はないわ」


「ふっ、野蛮な発想よ。しかし私の首を獲るならもう少し大きな舞台でお願いしたいものだ。王国と帝国の存亡をかけた戦いでな」


「……あなたも覇道を歩むものなのね…」


「そなたの主と同じようにな」


「その手始めが王と皇国の皇族の暗殺ね…」


「成功すれば、この国は我が手中に入る。失敗しても皇国と王国の関係は悪化し、王家は我らと皇国の両方を相手しなければならない。王家と皇国との戦線は我らが、我らと王家の戦線はピケティがそれぞれ背後を突ける地理関係にある。あの若き王にこの難局を乗り越える器はない」


「んで俺らの協力が必要なのは?氷塊で潰すくらいならテメェらだけでもできたろ?」


「保険よ、保険。皇国の武術師の情報が少なすぎるからよ。アウレリオ・ブラン・ベラルディは戦場に出たという情報はないから未知数だし、シリュウ・ドラゴスピアの前情報なんて冗談みたいな報告しか上がってないもの。万が一その2人がマリオ・バロテイのような魔術が効かない武術師なら、あたいの氷魔術での暗殺は失敗するかもしれないわ。そのために帝国からあんた達に来てもらったってわけ。王国にはあなた達以上の武術師はいないからね」


「………武術師風情とか言うわりには、結局は武術師頼みなのね?…自分で言ってて情けなくないの?」


「うっさいわねー。保険だって言ってるじゃない!99%あたいの初撃で終わるから、1%のために備えておくだけよ!王家の暗殺よ?失敗は絶対に許されないわ」



「それもそうだな!帝国をひっくり返すためにも王国にはぐちゃぐちゃになってもらわねぇと!」


「……私達の助力にかかわらず暗殺に成功したら、主との契約は守ってもらうわよ?」



「もちろんだ。共に国を割ろうではないか」


全身鎧男「それにしてもシリュウ・ドラゴスピアの冗談のような報告ってなんだ?」


男装の麗人「齢16にして、インペリオバレーナをパオ・マルディーニと共に討伐、エンペラーボアを単騎討伐した噂あり。コウロン・ドラゴスピアの実の孫というところかしら」


全身鎧男「………冗談だろ?」

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