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第21話 龍槍初陣 相対するは双剛魔猿


リタさんの指令を受けて、僕はパオっちとアンリ司令官、アンリ司令官の部下数十名と、双剛魔猿…ツイン・エイプの姿が確認された地点は馬で移動していた。


「ちなみになんですけど、こんな街道にそんな危険な魔獣が出るって、王国では良くあるんですか?」


「基本的にはあり得ない。街道には魔獣避けのための対策を多数行っている。今回はどうやらとある公爵家の私兵達が近隣の森林で魔獣狩りをしていて、ツイン・エイプをこちらの街道方面に逃したらしい。王国の恥の上塗りをしてくれて、情けなくて涙が出そうだ」


あらまぁ…それはアンリ司令官からすればいい迷惑だな


「タレイランめ…この皇国を招く大事な時期に、しかもこの使節団の行軍経路近隣で魔獣狩りなどしよって…国の恥晒しが…!」


激おこのアンリ司令官


ん?今なんて言った?


「タレイランって、サザンガルドに隣接する領地を持つタレイラン公爵ですか?」


「そうだが、貴殿も知っているのか?タレイランの悪名は国境を超えて伝わっているのか」


それはもう。


ビーチェの弟のカルロ君に毒を盛り、解毒薬の引き渡しと引き換えにサザンガルドの無血開城を迫ったあのタレイラン公爵だ。


いつかとっちめてやろうと密かに思っている相手でもある。


「ええ、詳細は話せませんが、ぶっ飛ばしてやろうとは思うくらいには知ってます」


「ふっ、貴殿とは仲良くなれそうだ。私もあそこが大嫌いだからな」


ひょんなことから意気投合する僕とアンリ司令官


この人から苦労人の匂いがするなぁ


いい人みたいだし、仲良くしておこう。


しばらくすると、大きな川があり、その川に石造の大きな橋が架かっていた。


その橋の手前に、青色の大人の身の丈3人分くらいの巨大な猿と同じくらいの背丈の赤い猿が佇んでいた。


どちらも筋肉隆々で、ただならない気配を漂わせている。




橋の向こう側は、鉄製のバリケードと王国の兵士と思われる部隊が、橋を渡らせないように陣取っていた。


「不幸中の幸いだ。王都から応援が間に合って、王都側への侵入は阻止できているらしい。この橋を抜ければ王都はもう目と鼻の先だからな」


「それは良かったろん。でもどうする?皇妹殿下からはアンリ司令官の部隊で倒したように見せないといけない指令があるにー。あそこの部隊にオイラ達の戦闘しているところが見られたら口封じできないおろろん」


「かの名高きパオ・マルディーニ少将よりお気遣いいただくとは恐縮だ。ただ心配ご無用、あそこにいる部隊は我がプラティニ公爵家の部隊であるゆえ、気にせず戦闘していただいて構わない」


「公爵家の私兵?王国軍じゃないのですね」


僕が不思議そうに尋ねると、アンリ司令官は答えてくれた。


「皇国の貴殿らからすると不思議に思うだろうが、王国においては国家に兵は帰属しておらぬ。強いて言うなら王家の私兵が王国軍だろうか。兵は各貴族の家に帰属しているのだ」


「え!?そ、そうなのですか!」


僕は驚くが、パオっちはさほど驚いていない。


というか王国と鎬を削っている海軍少将なんだから、知っていて当たり前か。


僕が勉強不足すぎるのだ。


「王国の兵は、まず貴族に忠誠を誓い、貴族が王へ忠誠を誓うのだ。貴国にも貴族同士の争いはあるだろうが、この国の貴族同士の争いで流れるのは金貨ではなく血だからな」


アンリ司令官が自嘲気味に言う。


「済まない。脱線が過ぎたな。あれの討伐を頼めるか?」



「任せてください」

「ガッテン!」


アンリ司令官に威勢良く返事をして、ツイン・エイプに近づく僕とパオっち


事前の打ち合わせで、僕が前衛、パオっちが後衛で布陣し、僕が剛猿、パオっちが魔猿を各々で頑張って討伐する作戦だ。

(作戦と呼べるかどうかは不明な模様)


近づいてくる僕らに気づいた2頭の猿は、青く物理耐性の高い魔猿が前に、赤く魔力耐性の高い剛猿が後ろに布陣していた。


うーん、その程度の知能はあるか。


ツイン・エイプは、瞬時に僕が武術師、パオっちが魔術師と気付いて、僕と魔猿を相対するようにして、位置取っている。


まぁ丸腰のパオっちはともかく、僕は自身の丈より長い槍を担いでいるから僕が武術師ってわかるよね。


このまま相対しても仕方ないので、僕はパオっちに声を掛けて、突撃することにした。


「とりあえず突撃してくるね。魔猿をかわして剛猿に一撃入れられるか試してくる」


「いってら〜」


パオっちの了承を得て、僕は槍を半身で構えた。


何度か呼吸を整え、隙を伺う。


魔猿は僕を注視している。


そして、魔猿がパオっちを一瞬見たその瞬間に、地面を蹴り上げ、魔猿をかわして、剛猿に迫る。


ザッ!!!


魔猿の脇をすり抜け、一気に剛猿に迫る。


そして龍槍ガルティウスを剛猿目掛けて一気に突いた。


ガキィイイン!


しかし魔猿が想像以上に俊敏な動きで、僕と剛猿の間に身を入れ、僕の槍を大木のような腕で防いだ。



僕の攻撃を防いで、硬直している魔猿目掛けて、パオっちが雷を魔猿の頭上から落とす。


バリバリバリ!!!


しかし、今度は剛猿が飛び上がり、魔猿に落ちようとしていた雷を一身に受ける。


「ウホオオオオ!!」



剛猿は大きな雄叫びをあげる。


これはダメージを受けたからではなく、してやったりの雄叫びだ。


一合目を終えて、僕とパオっちは一旦ツイン・エイプから距離を取った。


「ももも!確かに魔術が全く通らないにー。それにあいつらの連携は敵ながら見事じゃもん」


「お互いの死角を完全に把握しているね。これはかわして戦うのは大変だなぁ」


「まぁオイラは幾分やりようがあるろん。シリュウっちはどう?」


「実は考えがあってさ、もう何合か今みたいに打ち合っていい?確かめたいことがあるんだ」


「ほいっさ!合わせるにー」


パオっちの了承を得て、僕はまた剛猿めがけて突っ込む。


そして先ほどと同じように、魔猿がカバーに来て、それをパオっちが魔術で狙い、また剛猿がカバーする。


この打ち合いを数度経て、僕はあることを確認していた、


(………この感じ……多分いけるな……)


ツイン・エイプから距離を取って、パオっちに成果を報告する。


「ありがとう、パオっち。行けそうだ」


「むむ?何がぬん?」


「魔猿だっけ?青い方の物理耐性が高いやつね。あいつ、この槍で貫けそうだ」


何度か牽制の突きで、外皮の硬さを確かめた。


確かに大分硬い外皮だが、インペリオバレーナよりほんの少し通る感触がした。


この龍槍なら十分いけるだろう。


「………ぷっぷっぷく!何を確かめてるかと思えば、剛猿へ至る道じゃなく、魔猿を倒す手立てを探していたなんて、相変わらずシリュウっちは規格外だおろろん!」


「魔猿を貫いて、剛猿もそのまま狩ってくるよ。僕が魔猿の相手をしている間、剛猿の相手してくれる?」


僕が提案すると、パオっちは不敵な笑みで答えた。


「ふっふっふっ!倒してしまっても構わんのじゃろう?」


お?パオっちも、魔術が通らない剛猿を狩る気だな。


さすが相棒、考えていることは同じだったか。


「ああ、もちろん。王国への挨拶代わりだ。度肝を抜いてやろう」

「うっしっし!!やっぱシリュウっちとの戦いは面白いねん!」


ビーチェ「はぁ…仕方ないとはいえ、シリュウと離れるのは寂しいのじゃ……ふがふが」


リアナ「でも特務武官補佐はこういう待つことも多いわ。早く慣れないと……ふぐふぐ」


ジョルジュ「………お二人さん…首に巻いて口元に当てている布はなんですかい?」



ビーチェ「シリュウの腰巻き」

リアナ「パオの汗拭き布」



ジョルジュ「」

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