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第17話 皇王派と皇妹派

「戦よ。私達で皇都を獲る」


リタさんの衝撃の宣言に、会議室は静まり返る。


サルトリオ侯爵とアウレリオ准将は神妙な面持ちであるだけだが、ビーチェとリアナさん、パオっちまでも絶句している。


もちろん僕も驚きすぎてもう目玉がついているかどうかも怪しい。


「ク、クーデターではありませぬか……」

「……凄い話聞いてしまった……なんでここにいるの私……

「……オイラもびっくりだぬん……」


驚く僕らを落ち着かせるようにアウレリオ准将が言う。


「とは言ってもすぐにではないわ。むしろ私達『皇妹派』はまだ『皇王派』には遠く及ばない。政庁での政争には完全にしてやられたの」


悔しそうに机を叩くリタさん。


「政庁の大臣は商業大臣のアンブロジーニ侯爵を除き、全て皇王派なんだよ」


そう言うのはサルトリオ侯爵


「え?サルトリオ侯爵も皇王派なのですか?」


「はっは!そうだとも言えるし、そうでないとも言えるねぇ…真実は毒で充満した箱に閉じ込められた猫のみぞ知るってところさ…」


「???」


全く理解が追いついていない僕を見て微笑ましそうにビーチェが言う。


「槍を振るう時は誰よりも勇ましいが、こういう時はまっこと愛い奴じゃのう…」


「それもまたシリュウちゃんの可愛いところなのよね!」


ビーチェの言いように嬉々として賛同するリタさん


「……つまりサルトリオ侯爵は表向きは皇王派で、実際は皇妹派ということでしょうか?」


恐る恐る聞くリアナさん


「その通り!流石は名高き『海の迅雷』の妻となるお嬢さんだ。聡き妻は雷が流るる道をも照らすだろうね」


「……そ、そんな…//パオとお似合いだなんて……//」


サルトリオ侯爵の褒め言葉に照れるリアナさん


でも今のは僕にもわかるがお似合いというニュアンスではなかったような……


「まぁリアナ少尉の言うとおり、サルトリオ侯爵はこっち側よ?皇王派の振りをして向こうの動向を把握してくれてるわ。今回の遠征も皇王派はサルトリオ侯爵を使節団に率いらせることで、私の監視をしてると思ってるわ。馬鹿な奴らよね」


おおう……この飄々としたダンディは実は超重要人物じゃないか。


この人の立ち回り如何で皇国の行く末が決まってしまうのでは?


「話を戻すわね。政庁は大方皇王派に抑えられてしまった。なら私達皇妹派は次の舞台に目をつけているの、それが……」


「軍ですね」


僕が答える。


話の流れから流石にわかる。


政庁にて勢力争いに敗れたリタさんは、軍を掌握し、皇王派との勢力を五分に戻そうというのだ。


「その通り。だから戦っていうのは本当に戦闘することではないわ。まぁ最終的にはそうなるかもしれないけど。まずは軍の中に皇妹派の協力者を募る。そして王家十一人衆の過半数を皇妹派で抑えて、『円卓会議』の決定権を握る。そうすれば少なくとも負けはないわ」


「『円卓会議』ってそんなに重要なのですか?法的拘束力はそこまでで慣習で皇王様は尊重するとは聞きましたが… 」


「とても重要よ。これは皇族にしか伝わってないことよ?他言無用ね?軍関係者は初めて知ると思うわ。特に現役の王家十一人衆であるパオ少将は心して聞いてね?」


「にょっ!?」


突然の名指しに猫が毛を逆立てるように飛び上がるパオっち


ここまで衝撃の数々だがまだ出てくるのか?


「皇族にはね『円卓会議』の採決結果と違えてはいけないという鉄の掟があるのよ」


「「「「!!!!????」」」」


「詳細はここでは省くわ。だから王家十一人衆の過半数を抑えれば、皇王に対抗できるの。幸いアウレリオを除き、他の王家十一人衆は、みんな皇王派ではないわ。皇王派も取り込もうとはしているけど、一筋縄では行かないみたいよ」


あの『円卓会議』にはそこまで重たい意味があったのか。


パオっちがめちゃくちゃ焦ってる。


そう言えば議事録見たらパオっちは寝てたり、お菓子を食べてばっかだったな……


自分のしでかした事の大きさに震えている。


「だからこそ私達は機先を制さなければならないの。単刀直入に言うわ。シリュウ・ドラゴスピア准将、ベアトリーチェ・ドラゴスピア少尉、パオ・マルディーニ少将、リアナ・マルディーニ少尉、私達と共に皇国を取り戻して欲しい」


リタさんが出会ってから一番真剣な顔で僕を見据える。


これは非常に重たい決断だ。


「もちろん返事はすぐとは言わないわ。この遠征が終わるまでにしてくれたら」


リタさんは笑顔で返事を待つと言う。


「シリュウ准将は今皇国で最も存在感のある将軍だ。私としても心強い」


アウレリオ准将も柔らかい笑顔で僕を評価してくれた。


「貴殿からは英雄の匂いがする。それははたまた悲劇の英雄か、しかし皇妹殿下と共に行くなら悲劇はないだろう。喜劇ではあるだろうが!」


大仰なセリフを放ちながら手を広げるサルトリオ侯爵


ビーチェにパオっち、リアナさんを見渡すと揃って首を振る。


ここでの即断はできないよね。


「わかりました。少し考えさせてください」


「もちろんよ。それと私達は皇国の未来のために戦っているということを忘れないで。私利私欲で国を荒らす不貞の輩を一掃し、帝国や王国とも手を取り合って平和を成そうとしているということを」


「て、帝国や王国とも!?」


「そう。この遠征の目的は休戦条約前の最終調整ではないわ。王国や帝国の数ある勢力に接触し、水面下で協力を得るためよ」


「事前に皇王派の手が回らないよう直前に外交予定を組み立てたのさ。組み立てさせられた私の身を案じてくれるかね?」


この遠征にそんな目的があるだなんて…


「初任務のシリュウちゃんには申し訳ないけどこの遠征の結果は今後数十年の皇国の未来を左右するわ。よろしく頼むわねパオ・マルディーニ団長、シリュウ・ドラゴスピア副団長」


そう言って、悪戯が成功したみたいな子供のように笑うリタさん



僕はもう引き攣った顔で苦笑いをするしかなかった。


シリュウ「そう言えば、リタさんはリアナさんのことリアナ・マルディーニって言ってたけど、もう籍入れたの?」


パオ「いんや、まだリアナのご両親に挨拶してないろんね。遠征終わったら入籍する予定だにー」


ビーチェ「そう言った方がリアナの受けがいいじゃろうと皇妹殿下は思われて、言ったのじゃろう。取り込みはもう始まっておるということじゃ」


リアナ「そんな…//もう気が早いんだから……皇妹殿下ってば……//……これは皇妹殿下につくしかないんじゃない?パオ?」


シリュウ「効果覿面じゃないか……恐るべし…リタさん」

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