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第9話 覚えていない約束は、忘れられない花束に


皇国捕鯨祭 前夜祭も佳境に入った頃、私は酔いを醒ますため、会場から少し離れたバルコニーで風にあたっていた。


このバルコニーは会場から少し遠いけども、私にとって思い出の場所だからわざわざここに来たのだ。


ここはパオが少将に昇格し、王家十一人衆に入ることを記念して開催されたパーティで、パオと話をしたバルコニーだ。


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


「にー…オイラが王家十一人衆になってもリアナはそのまんまだろんね?」


「当たり前でしょ。何も変わらないわよ。あなたはもう少ししっかりしなさいよ」


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


パオが昇格しても変わらないことを確認し合った夜


私はまだパオの隣で立てることを嬉しく思った夜


あれからもう2年近く経つのか。


流石にパオが王家十一人衆に最年少で昇格したのは驚いたけど、職務の内容はそこまで変わらなかったが、辛かったのは社交の場に出ることが増えたことだった。


なぜなら社交の場に出るたびに、パオを狙う女狐が現れ、そいつらを退治するのに必死だったからだ。


何なら面と向かって「あんたお呼びでないのよ」ととある令嬢に言われたこともある。


それでも私は負けなかった。


今日はパオが私のために見繕ってくれたドレスを着て、これでもかというくらいパオと腕を組んで会場中を歩き回った。


私のことを恨めしそうな目で見る華族令嬢の視線が心地よかった!


どうだ!私がパオのパートナーなんだ!


私は全身でそう主張するように胸を張った。


当のパオは意味が分かってないと思うけど


このおかげで少し舞い上がってしまい、普段はあまり飲まないワインをたくさん飲んでしまった。


珍しく酔いが回ったと思ったので、冷水を手に、少し離れたこの思い出のバルコニーに1人で来たのだった。



「星が綺麗ね…月も…満月かな…いつもより明るくて…橙色に光っている…」


私は満点の星空を眺めながら、心地よい風を感じていた。


不思議とその風は吹き止むこともなく、私の火照った体を冷ましてくれた。


少しして、酔いも冷めたころに、私は振り向きもせずに、声を掛けた。



「パオ、いるんでしょ?」


私がそう言うとバルコニーの柱の陰からパオが姿を現した。


「…にー…なんでわかったぬん…?」


「何年一緒にいると思っているの。自然の風とパオが起こした風の違いくらいすぐ分かるわ」


「なんとぅ…オイラも修業不足かや?」


「はいはい、こっちにおいでよ。星空と月が綺麗よ」


「うぃっさ」


そう言いながらパオは私の隣に並び、空を眺めた。


パオと一緒に同じ景色を見ている。


私はただそれだけのことがたまらなく嬉しかった。


これ以上は望めないかな。


でも流石に30を過ぎても同じような状況なら流石にパオに責任とってもらわないとね。


私がそう思案していると、パオが私の手を握って来た。


「…!?///…パ、パオ…?」


私は驚きを隠せなかった。


パオから手を握られるなんて…初めてのことだったからだ。


「リアナ、このバルコニーで話したこと覚えてる?」


「も、もちろんよ。もう2年も経つのよね。パオが少将になってもうすぐ2年になるのかな」


私が平静を装いながら、そう答える。


パオに手を握られたことで、私の心音は留まることをしらない。


「…にー?そんな最近じゃないろん。ほら、卒業パーティーの時のことさ」


「…卒業パーティー?」


卒業パーティー…そうだ。


海軍学校の卒業式の夜に催された卒業パーティー


初めてドレスを着て、パーティーに参加した。


華族の令嬢みたいとはしゃぎながらドレスを着た覚えがある。


そうかこのバルコニーの最寄りの会場が卒業パーティーの会場だったっけ。


でもなんて話したっけ…覚えてないな…


「…ごめんなさい。覚えてないわ…」


「いいぬん、もう8年も前のことだからね。覚えてなくても仕方ないろん」


「どんなことを話したっけ?」


「卒業してもオイラの面倒みてくれるって約束したことっさ」


何だそんなことか。


そんな約束は普段からしているから私が覚えていないのも当然か。


私にとってはパオの面倒を見ることは呼吸をするくらい当たり前のことだから。


「その時からリアナはずっと約束を守ってくれたんね。だからオイラもちゃんと約束を果たすよ」


約束?


パオから何か約束してもらったっけ?


「その約束って?」


「オイラもリアナの面倒を見るって約束」


ふふ、そんなことか


そんなこと良いのに


私はパオの隣に居られるだけで



「これはオイラの気持ちさ」


そう言ってパオは風の魔術を使った。


そしてどこからともなく、青色と黄色と緑色の花の花束を運んできた。


そして花束は私の手元にゆっくりと落ちてきた。


「……え?……これって……」


「リアナの好きな花…青色のカーネーション、黄色のスターチス、緑色のアナベル…」


それって


それって


その女性が好きな花を、その女性に贈るということは、この国では求愛を意味する。


前夜祭にドレスを着て参加してとお願いしたり、花束の贈り物…


パオはわかっているのだろうか?


「…ねぇ…パオ…意味は分かっているの…?」


私はどうしても我慢できなくて、答え合わせを望んだ。




「もちろんだにー」




「!!??」




まさかパオは…!?




「オイラ、リアナを泣かせちゃったあの日から、少ない脳みそで一生懸命考えたんじゃもん。シリュウっちやベアちゃん、レア姉ちゃんに相談したりね。それで、やっと、やっとわかったもんね。オイラにはリアナがずっと、ずっと必要なんだにー。リアナは海軍学校の時にオイラが1人立ちするまで面倒みてくれるって言ったけども、オイラが1人立ちできてもずっと一緒にいて欲しいろんよ」



まさかまさかまさか!



そうしてパオは懐から小箱を取り出し、そっと開け、私の前に跪きながら、小箱を開けた。


小箱には小さな赤色の宝石が輝く指輪が収められていた。


そして


「リアナ、オイラと結婚しよう」


大好きなパオからの求婚


私が望んていても、パオとの関係が壊れるのを恐れて、見ようともしなかった夢


私は考えることもなく大きな声で応えた。


「…………はい…!…喜んで…!」


私は大粒の涙を流しながら、パオに抱き着いた。


「良かった…ありがとう…リアナ」


「こちらこそ!ごめんね、面倒くさい女で…ずっと…ずっとこの時を夢見てた…!」


「…にー…待たせてしまって申し訳ないおろろん…」


パオが申し訳なさそうに言うが、そんなことはない。


「…待つ?待ってなんかないわ。だってずっとパオと一緒にいたもの。私はそれだけで幸せだった……」


「…オイラ、頑張っちゃうもんね。もっとリアナに喜んでもらえるように」


「…そう?じゃあお願いがあるわ」


「…ぬん?」


そう言って私はパオの顔を取って、自分の唇とパオの唇を重ねた。


生まれてから早26年


あまりにも遅すぎる最高のファーストキスだった。


























ビーチェ「青色、黄色、緑色の花が好きとは、どこかで見たことあるような色合いじゃのう」

シリュウ「パオっちの髪の色じゃん」


カーネーション   花言葉 「無垢の愛」

スターチス(黄色) 花言葉 「誠実」「愛の喜び」「純潔」「初恋」

アジサイ・アナベル 花言葉 「ひたむきな愛」

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― 新着の感想 ―
[良い点] 更新お疲れ様です。 ヒューッ!パオっちやるじゃん!自身の髪の色に合わせた&心からの想いを代弁する花言葉を持つ花をチョイスするとかお洒落ですなぁ! シリュウの結婚と合わせてウルトラめでてぇ…
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