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【閑話】円卓会議 集結する王家十一人衆

烈歴98年 5月6日


インペリオバレーナが討伐されてから2日後のこの日は以前より予定されていた王家十一人衆の公式会議である『円卓会議』が皇宮にて開催されていた。


この皇宮にある円卓の間にて、着座しているのは10人と書記係が数名


皇軍大将 『金剛』  ルイジ・ブッフォン

皇軍中将 『蒼の剣聖』ファビオ・ナバロ

皇軍少将 『氷の知将』レア・ピンロ

皇軍准将 『不壊の盾』アウレリオ・ブラン・ベラルディ


陸軍大将 『獣王』  アレス・デルピエロ

陸軍中将 『鬼謀』  サンディ・ネスターロ

陸軍少将 『泰山』  マリオ・バロテイ


海軍大将 『双嵐』  ゾエ・ブロッタ

海軍中将 『狐火』  フランシス・トティ

海軍少将 『海の迅雷』パオ・マルディーニ


皇国軍の最高戦力もとい最高権力者達が一堂に会していた。


これに皇国軍を統括する『大総督』を含めて王家十一人衆と一般に言われているが、実態は違う。


今代の大総督は名誉職に成り下がり、皇国軍を支えているのはここにいる10人であった。


円卓を囲んでいる10人の雰囲気は重たい。


それもそのはず


今日予定されていた議題と急遽組み入れられた議題は、いずれも各軍の意見は衝突し、着地点が見いだせなさそうであったからだ。


そして議長たる大総督は欠席であるため、進行役不在で会議は始まろうとしていた。


そんな雰囲気の中、口火を切って議論を進めようとしたのは陸軍中将のサンディ・ネスターロだ。


「相変わらず皆さんお堅いねぇ〜どうせ結論なんかつかないんだろうから楽に話そうぜ〜」


軽薄そうにサンディは言うが、真面目な性格のレアは嫌悪を示しながら言う。


「…そもそも陸軍が折れればこんな雰囲気にもならないのですけどね?」


「おっと、随分な言い様だね〜。でもそれは侵攻に限った話だろう?別件はうちだけじゃなく海軍も一歩も引く気はなさそうだぜ?」


軽く煽るように言うサンディにレアは鋭い視線を送る。


「……侵攻戦に限れば好きにするがいいに…!でももう1つの話は、オイラ達は絶対に引かないよ…!」


そう言うはパオ海軍少将


いつもは円卓会議ではファビオ皇軍中将とマリオ陸軍少将と共に議論にはほとんど参加しないパオだったが、珍しく強い主張をする様に、面々は驚いていた。


特にあの現場にいなかった面々は特に



「ひゅ〜パオがそこまで入れ込むなんてこいつぁ大した奴なんだろうなぁ…!ますます引けなくなったぜ」


口笛を軽く吹いて言うサンディ


「パオ…お前もか…」


呟くように言うファビオ



「……何のことだかそろそろ私にも説明してもらえないだろうか」


話に入れないアウレリオ皇軍准将


アウレリオはこの中で唯一、その者の存在を認知していなかったため、話についていけなかった。


「…まぁ、各々言いたいこともあろうがまずは予定通りの議題から話そうじゃないか、その後でその話はしよう」


そう面々を宥めるようにして進行するブッフォン皇軍大将


「その話ならアタシらの意見は変わらないよ。『勝手にしな』」


そうにべもなく言い放つはゾエ海軍大将


海軍の長がそう言ったため、フランシス海軍中将とパオ海軍少将はこの議論に参加するそぶりも見せず、紅茶と菓子をお供にティーブレイクに入った。



「ゾエは話が早くて助かるぜ!じゃあ俺らとお前らの一騎討ちだな!ルイジ!」


そう鼻息荒くブッフォン将軍に向き合うはアレス・デルピエロ陸軍大将


「…帝国への侵攻…皇軍は時期尚早と判断する」


ブッフォン将軍が絞り出すように言う。


「いや今が最大の好機だ!帝国が後継者争いで揺らぐなんて数十年に一度だ。ノースガルドと協力して、インバジオンを取る!」


反論するデルピエロ将軍


インバジオンは帝国領に位置する帝国における対皇国の侵攻拠点都市だ。


ここ数年帝国では後継者争いが勃発しており、政争が起こっている。


その混乱振りは他国にも知れ渡っており、ここ数年帝国が侵攻に踏み切れない要因になっていた。



この隙にインバジオンを攻略するというのが陸軍が主張する侵攻論だ。


これに対し、皇軍は帝国は確かに混乱はしているが、それでもインバジオンを攻略するのに戦力は足りないと判断し、侵攻論に反対している。


「インバジオンの戦力や領主勢力の背後関係に不透明な部分が多すぎます。攻略する勝算が不確かな状況では進攻には賛成できかねます」


冷静に答えるのはレア皇軍少将


「それに、サンディ中将ならそれくらいわかっているのでしょう?」


レアは続けてサンディに問う。


レアはサンディほどの知謀を持つ者がこの侵攻の無謀さを理解してしないとは思えないのだ。


レアの追及に対して、サンディは軽く答える。


「旦那が行くって決めたら、それを叶えるのが俺の仕事なんでね」


「…時には諌めるのも部下の仕事では?」


「部下の役割ならそうだが、俺は違う。俺は旦那の奴隷さ」


「やめろよ、サンディ!俺はおめぇのこと奴隷なんて思ったことねぇぞ!気色悪い!」


「旦那…言葉の綾ってやつさ、旦那の意に沿わないことは俺はしない…それだけさ〜」


軽い感じで言うが、サンディの決意は重かった。


そんな中議論が並行になりそうなところにアウレリオ皇軍准将は言う。


「皇軍は侵攻に反対と言ったが、私は違うぞ!私は攻めるべきだと考える!」


皇軍という組織の意思決定を無視する主張に、ブッフォン将軍は苦笑いをし、レアは青筋を額に浮かべている。


ファビオは我関せずと、腕を組んで俯いたままだ。


なぜアウレリオが侵攻に賛成するのか。


アウレリオが皇王の親衛隊長であり、皇王に最も近い軍人である。


そして皇王は侵攻に賛成派なのだ。


その皇王の思想の影響を強く受けているアウレリオは皇軍に所属しながらも侵攻に賛成派であった。



「アウレリオは話がわかるじゃねぇか、今ここで決を採ってもいいぜ?」


アウレリオの賛意に気を良くしたデルピエロ陸軍大将がブッフォン皇軍大将に迫る。


円卓会議は所属と役職に関わらず1人1票だ。


なので普段は参加者が1人多い皇軍が有利なのだが、皇軍内で意見が割れているため、その有利性は失われていた。


円卓会議の決に法廷拘束力はないが、その採決結果は、皇王といえども無視はできないものだ。


この円卓会議で、過半数を占める意見については、皇王は尊重しなければならない風潮があった。


しかし現状では過半数には至らない。


「決を採っても意味がないでしょう?海軍の面々は棄権するのですから」


レアがデルピエロ将軍に言うが、サンディが代わりに答える。


「実はそうでもないんだなぁ〜海軍の方々よ、提案があるぜ」


サンディが海軍の面々に向き直る。


ゾエとフランシスは真剣な面持ちだが、パオはまだ我関せずと菓子を貪っていた。


「なんだい?金でもくれるのかい?」


ゾエが冗談めかして言う。


「もっといいものさ〜この侵攻論に賛成してくれるなら、今日のあと1つの議題、陸軍は海軍の意見に全面賛成するぜ?」


「…な!!??」

「…うぐぅ…!?」

「……チッ…」

 

サンディの思いがけない海軍への提案に、皇軍の面々は一様に顔を顰めた。


レアは驚くように言い、ブッフォン将軍も渋い表情になる。


ファビオに至っては舌打ちまでしている。


「????」


そして置いてきぼりのアウレリオ准将



サンディの提案に皇軍と対極に嬉々としているのは海軍の面々だった。


「…そいつはありがたいねぇ!」


「…その条件なら…悪くない…」


ゾエとフランシスは陸軍の提案が採用の価値ありと判断した。


そしてそれより大きく反応したのがパオだ。


「はい!パオ・マルディーニは侵攻論に賛成でござい!」



サンディの餌にものすごい勢いで食い付いた。



「ぶははははは!!!!!パオがこんなに食いつくなんてな!サンディ…おめぇの見立ては確かだな!」


「…いやいや予想以上だよ、旦那…」


大きな声で笑うデルピエロ将軍


想像以上の効果に、喜びより驚きが勝るサンディ


サンディは事前の調査で海軍がとある人物の登用に固執していると掴んでおり、それに協力することで海軍の賛成を取り付ける算段をつけていた。


そして結果は大成功


海軍はサンディの撒いた餌に大きく食いついている。


陸軍の面々はこの会議に手応えを感じ始めていた。


ちなみにマリオ陸軍少将は、大量の菓子を食べており、議論には参加していない。


マリオはいつも通り議論に参加せず、決を採る時だけ、サンディの言う通りにするだけのつもりだ。




現状侵攻論に賛同しているのは5人


陸軍の3将とアウレリオとパオだ。


サンディはゾエとフランシスが賛成すれば、皇王が侵攻に踏み切ると読んでいた。


「パオはこう言ってるぜ?なに、心配せずともあの話については、海軍に賛同するだけじゃない。陸軍の総意として、皇王様に話をする、つまり全面協力ってわけさ」


「…!えらい気前がいいねえ?サンディ」


ゾエがサンディの譲歩具合に驚きつつ聞く。


「な〜に、こっちも今回は本気ってだけさ。それにいい材料が丁度手に入っただけ、幸運だったさ」


「……サンディ…勝算は?……陸のことは僕たちにはわからないから……」


フランシスがサンディに問う。


「負けるつもりは毛頭ないぜ?陸軍の全てを掛けて、インバジオンを取る。ちなみにノースガルドも説得済みだ」


「……!?……そこまでしているのですか…」


ノースガルドまで説得済みのサンディの手回しの早さに驚くレア


サンディの言葉を聞いて、フランシスはゾエに向いて頷く。


「……約束は守ってもらうよ?サンディ」


ゾエが確認するようにサンディに言う。


「もちろんさ、期待に沿えるよう全力を尽くすよ」


「ならいいさね。海軍3将は侵攻に賛成するよ」


「………くっ!」


悔しそうなレア


「………参ったな……」


困惑するブッフォン将軍


「………チッ……」


舌打ちしながら不機嫌になるファビオ



「ぶははははは!!これで決を採るぞ!帝国の侵攻に賛成の奴は立て!!」


デルピエロの掛け声で採決が行われる。


起立したのは7人


陸軍と海軍の全員とアウレリオだ。


「7対3で過半数だ!書記係!今すぐ議事録をまとめて皇王様へ届けやがれ!」


「は、はっ!」


デルピエロの指示で書記係が退室する。


そして残されたのは王家十一人衆の10人だけ



ここからは非公式の会談だ。


「さて、ここからはアタシらの本題さね。単刀直入に言う。シリュウは海軍で面倒みるさね」


ゾエがいきなり切り込む。


反論するはレアだ。


「シリュウ君は皇軍に抜擢します!」


しかし分が悪い。


「陸軍はシリュウとやらは海軍に推薦するぜ?」


「……何を適当なことを!部外者は黙っててください!」


レアがきつい表現でサンディに言う。


「いやいや適当ではないさ。何せパオと協力してインペリオバレーナを討伐したのだろう?すでに実績がある。海軍に入るのも自然じゃないか」


「は!?インペリオバレーナの討伐!?海軍の総力で討伐したのではないのか!?……その者は何者なんだ…!?」


驚くのはアウレリオ


「おいおい、組織内の情報共有がなってないんじゃないか?アウレリオ、そいつは表向きの情報だ。真実はパオとそのシリュウとやらの2人で討伐したのさ。しかもパオは補助役で、インペリオバレーナに与えた傷は全てそのシリュウがとやらがやったものさ」


レアを煽るように言い、アウレリオに懇切丁寧に説明するサンディ


「……信じられん…そんな者がいるなら私にも教えて欲しかったぞ!」


怒るアウレリオ


「……すまない、アウレリオ。今回の件は私の方で内密に進めていたのだ。確実にシリュウを登用できる目処がついてからアウレリオにも話をする予定だったのだ」


「……ブッフォン将軍…それにしても抜擢するなら、私もその者を見極める必要があるでしょう?」


アウレリオが事前の相談なくことを進めていたブッフォンを責めるように言うが、意外にもファビオが割り込んできた。


「………無駄なことだ…どうせ貴様はシリュウの抜擢に反対していた…」


「何を根拠に言う!?」


「………シリュウはサザンガルドの剣闘姫の婚約者だ。剣闘姫に執着していた器量の狭い貴様は感情的に難癖を付けて反対していただろう……」


「な!?ファビオ…貴様ぁ!」


「それに俺達3人が認めればそれでいい…貴様の意見など不要だ」


「……ふざけるな…!私は准将だぞ!…」


「…笑わせる…碌に訓練もせずに、皇都で政治ごっこに勤しむ貴様など俺は准将だと認めてはいない…シリュウに任せた方が万倍マシだ」


「……貴様ぁ!!」


ファビオの言いように怒るアウレリオ


非常に険悪な雰囲気に包まれる2人


そこにゾエが割って入った。


「あんたら皇軍の内輪揉めは後でやっておくれよ。とりあえずシリュウは海軍で面倒を見る。それでいいさね?」


「そうはいきません。大事なのはシリュウ君本人の意思です!」


レアがすかさず言う。


このままの流れでは海軍にシリュウを取られてしまう危機感が皇軍の面々に出てきた。


「ならシリュウは皇軍に入りたいって言ったのかい?」


ゾエが皇軍に問う。


「前向きに検討したいとは聞いてある」


ブッフォン将軍が答える。


「それはいつのことだい?」


「……5月の2日のことだ…」


ブッフォンが苦しそうに答える。


「ならシリュウも心変わりしているかもねぇ!パオとインペリオバレーナを討伐したのは5月4日だ!今は海軍に心があるのかもしれないよ?」


ゾエが嬉々として言う。


あの現場にいたレアは何も言うことができない。


確かにあの戦闘を通して、パオとシリュウは親友のように仲が良くなった。


それに影響されて海軍に入りたいと言ってもおかしくはない状況だった。


「…オイラとシリュウっちはソウルブラザーさ!」


堂々と言うパオ


レアは実の弟であるパオにそう思えるだけの存在ができたことを姉として嬉しくと思うと同時に、皇軍にシリュウを入れるにあたって、パオの存在が最大の障壁になることに複雑な心境であった。


「まぁ大事なのは今のシリュウの気持ちさね。シリュウの容体はどうなんだい?」


ゾエがレアに尋ねる。


「現在は、皇国軍病院にて療養しています。インペリオバレーナとの戦闘で、全身火傷、両手の亀裂骨折及び打撲、雷魔術による衰弱状態と診察されました。今朝お見舞いに行きましたが、1人で立てるまでに回復しています。回復力も化け物ですよ………」


レアがシリュウの現状を説明する。


「…あの満身創痍の状態からたった2日で自力で立てるのかい……とんでもないね…」


レアの説明を受けてゾエはまた驚く。


「あと嬢ちゃんは元気だったさね?旦那があんな状態なら精神的にもまいってなかったかい?」


「まいるどころか、シリュウ君の病室に住み込みで看病しています…24時間着かず離れずですよ…献身的にシリュウ君を看病する姿は皇国軍病院内では有名です…」


「はっはっは!大した女だよ!あの子も海軍に欲しいさね!」


「……確かにそれはそうですが…彼女はシリュウ君のこととなると人が変わったように恐ろしくなりますからね…」


「……それは知ってる……これからは気をつけないと……」


フランシスが同調する。


「経験者は語る…ですね…でもあなたのおかげで彼女はシリュウ君が海軍に入ることを心配していますよ」

 

「……でもサザンガルド家と繋がっている…そこからも切り口で説得できる…」


「…彼女はサザンガルド家の意向よりも、シリュウ君の意志を尊重すると思いますよ?彼女はそういう人です」


レアとフランシスの討論が始まる。


しかしそれはいつまでも平行線だ。


痺れを切らしたデルピエロ将軍が割って入る。



「うだうだうるせぇなぁ!どうせシリュウと皇王様の判断次第なんだろ?近々謁見するそうじゃねぇか!その場でどこに入りたいか問えばいい!」


「…確かにアレスの言う通りだ。現状シリュウ殿をどこに入れるかこの場の者には決定力がない。謁見の場で皇王様の意向とシリュウ君の意志を確認しようじゃないか」


ブッフォン将軍がそう結論づける。


「異論はないねぃ。その謁見にはアタシ達も参加できるんだろうね?」


ゾエがブッフォン将軍に問う。


「もちろんだ。他にも希望者がいれば謁見に同席できるよう取り計らう」


ブッフォン将軍の回答に反応したのはデルピエロ将軍だ。


「なら俺達も同席するぜ。一応皇軍と海軍に譲った形にはなったが、皇王様がシリュウを陸軍に推挙する可能性もあるからな?その時は恨むなよ?」


デルピエロ将軍がニヤつきながらブッフォン将軍に言う。


「あい分かった。では各々またシリュウ殿の謁見の時に…これにて閉会だ!」


そして各々に席を立つ。


しかしこれは終わりではない。


むしろ始まりの号砲であった。


今日を含めて謁見まで4日間ある。


それまでに皇軍及び海軍はいかにシリュウ…そしてベアトリーチェの気を引けるか、その競争に追われるからだ。



そんなことも夢にも思わないシリュウは、今も病院でベアトリーチェの看病に甘えてるのであった。





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