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第7話  フォン・サザンガルド家の3人の息子


次期領主であるシルビオさんと庶民の娘であるルチアさんとの婚姻を認めたほうがサザンガルド家の益になると言うじいちゃん


「なぜ…ですかな?」


そう尋ねるのはオルランドさんだった。


話の当事者のシルベリオさんと、シルビオさん固まって呆けている。


「これは儂の独り言と聞いてもらえたら幸いですじゃ。まずサザンガルド家の当主として、果たすべき使命は、領地を守ることだけですかな?」


じいちゃんがシルベリオさんとオルランドさんの方に向かって問う。


当主として果たすべき使命?


領主としての仕事以外に何があるのだあろう。


僕がそう思っているとシルベリオさんが絞り出すような声で言う。


「………世継ぎですな…」


「まさしく。特に儂のような成り上がりの華族ならいざ知らず、サザンガルド家のような大都市を治める由緒正しき華族ならご世継ぎの重要性は跳ね上がるでしょう」


確かに、サザンガルド家のような次代に継ぐべきものが大きい華族にとって、世継ぎの存在は非常に重要だ。


「して、その話がどうしてその娘との結婚に繋がるのでしょうか~?」


そう聞くのはデフォナさん


意外にもこういう話題は好きなのだろうか。


食事の手を止めて会話に入って来た。


「はっはっは。大人の女性であるデフォナ嬢にこのようなことを言うのは少し憚られますが、()()()()()()()()()()()()()()()()()()のですぞ。これは儂の経験上の話ではありますがな」


段々と話が繋がって来たぞ。


「つまり、愛する人と一緒になった方が子供ができやすいから、世継ぎが欲しい華族の当主としては、愛のない政略結婚より、愛のある恋愛結婚の方がいいってこと?」


僕がそうじいちゃんに聞く。


「まさしくそうじゃ。これは儂の人生経験上じゃがのう。愛のない政略結婚をした華族には不思議と世継ぎはそんなに生まれていなかったのじゃ。儂のように継ぐべきものが少ない華族ならそれでいいじゃろうが、サザンガルド家ほどの6大華族ならそうは言ってられないじゃろうのう」


6大華族


皇国を代表する6つの大華族だ。


サザンガルド、ノースガルド、タキシラは都市を管轄する大華族


あとの3つはセイトにある皇家に連なる大華族だ。


それくらい大きな華族なら、世継ぎ問題は確かに重要だろう。


でも1つ疑問があった。


ここまで政略結婚を推しているシルベリオさんには3人も息子がいる。


愛がない政略結婚をしてはいなかったのだろうか?


「不躾なことを聞いてもいいでしょうか?」

僕が手を挙げて言う。


「……なにかね?」

シルベリオさんが渋そうな表情のまま答える。


「シルベリオさんとスザンナさんは政略結婚だったのでしょうか?息子さんが3人もいらっしゃいますし、夫婦仲が良さそうなので、政略結婚にしては不思議だなと」


僕がそう言うと、アドリアーナさんとオルランドさんがくっくっくと笑いを堪えている。


スザンナさんはあらあら~まぁまぁ~を頬に手を当てて照れている。


なんで


シルベリオさんは下を向いてプルプル震えていた。


「兄さん、ここらが年貢の納め時じゃないかな」


オルランドさんがそう言い、シルベリオさんの肩を叩く。


「オルランド…!貴様…!」


シルベリオさんがオルランドを睨みつけるが、意に介さずオルランドが言う。


「スザンナさんと兄さんの結婚は確かに政略結婚だ。サザンガルド家嫡男とタキシラ家次女の大華族同士の結婚だったからね」


なんと スザンナさんはタキシラ出身で、しかも領主一族の娘だったのか。


そう言えば、デフォナさんは本家の人脈で来てもらったと言っていたから、スザンナさんの実家の縁で来てもらったのかな。


オルランドさんの言葉を引き継いでアドリアーナさんがぶちまける。


「でも実態は違うのよ。シルベリオ義兄さんは、タキシラ大学に在学中に、図書館で出会ったスザンナ義姉さんに一目惚れしたのよ。領主の娘と知らず、すごいアタックしたそうよ?」


なんと


「あの時のこの人の求愛は情熱的でした~。でも私も領主の娘でしたので、おいそれと求愛をお受けすることはできませんでしたの~」


スザンナさんがあららうふふ~と笑いながら言う。


シルベリオさん 


やってることシルビオさんとそんな変わりませんよ?


「そしてスザンナ義姉さんがタキシラ領主の娘と知って、兄さんは当時のサザンガルド家当主であった父に、タキシラ一族との縁談を強烈に勧めたんだ。皇国最高の頭脳の集まりであるタキシラを治めるタキシラ一族とのつながりは軍都サザンガルドの弱い部分を補ってくれると熱弁してね。でも実際はスザンナ義姉さんと結婚したかっただけさ」


シルベリオさん めちゃくちゃ面白いじゃん。


好きな女性と添い遂げるために自分ができること全部やってる。


最初に会ったときの厳格そうな印象はもうどこにもない。


シルベリオさんは真っ赤になって俯いて、顔を上げることができない。


もう当主としての威厳はどこにもなかった。


「私は若い時は本にしか興味がなく、縁談もありましたが、どれも乗り気ではありませんでした~。でもこの人は図書館に来ては、私と共に本を読んでくれました。私がおすすめした本はどれだけ厚かろうが、難しかろうが、必ず次の日には読み終わって感想を言ってくれましたの~。そのうちに私の気持ちも少しづつ傾いてきまして……//」


やめて!シルベリオさんのライフはもうゼロよ!


3人の息子たちは、おそらく父母の馴れ初めを初めて聞くのだろう。


口を開けたまま、呆けたように聞いている。


「父上と母上はただ政略結婚とばかり…」


シルビオさんが驚きつつそう言う。


間違ってはないけど、シルベリオさんが一目惚れして政略結婚をしたのは


シルベリオさんのスザンナさんへの求愛話は、間欠泉から噴き出る温泉のように出そうだったが、流石にかわいそうになってきたので、話を切ろう。


「そ、そうなんですね!ではシルビオさんの気持ちもわかるのではないでしょうか。好きになった女性が華族であるか、庶民であるか、その違いだけですよね?」


僕がそうシルベリオさんに言う。


「……観念しよう…その通りだ…政略結婚を推し進めるのは、当主としての責務からだ。我が父にそう教えられたのでな…ただ私はスザンナが華族で幸運だっただけか…」


ようやく顔を上げて、そして上を向いて呟くように言うシルベリオさん


「そう言えば、シリュウ殿も自分が華族だと最近まで知らなかったそうだな」


シルベリオさんから聞かれる。


「はい、そうです。ドラゴスピアの姓があることは知っていましたが、華族と知ったのはビーチェとの結婚をオルランドさんに認められた後ですね」


「貴殿も身分違いの恋を乗り越えようとしていたのだな。いや乗り越えたのか…それも私のように権力を使わずに…」


「いや結局僕も最後はドラゴスピアの名に頼っていますから、似たようなものですよ。僕ら」


「……っふ…はっはっは!確かに…!私達は似た者同士か!家の力で好いた女性を娶ったのだからな…!」


シルベリオさんが大きな口を開けて笑う。


何かツボに入ったのだろうか。


出会ってから一番笑っている。


「コウロン殿…やはりあなたは偉大な英雄だ。小事にとらわれ大事を見失っていた私に、大切なことを思い出させてくれました」


「何の。ただ長いこと生きているだけですぞ」


「そんなことはありますまい。……シルビオ」


「はっ」


「今度そのルチアとやらを家に連れてまいれ」


「……!?…では…!?」


「早とちりするな。まずは会ってみるということだ。婚約云々はそれからだ」


「……ありがとうございます!…父上も必ず気に入ってくださいますでしょう!ルチアは本当に良き娘ですので!」


「…そうか…それでその娘はどのような娘なのだ?」


「はい。母のように朗らかで、いつも周りを笑顔にさせる娘です」


「…そうか……それが本当なら、良き娘だな」


「もちろんでございます!」


ついにシルベリオさんが折れた。


このまま順調にいけばシルビオさんとルチアさんが婚約に至るだろう。


めでたしめでたし



周りの人たちも笑顔で、次々にシルビオさんを祝福する声が上がる。





しかしデフォナさんだけは相変わらずげんなりしていた。


「………ここ最近でもう2つの婚約話を目の当たりにしました……独身の私には毒ですよ毒…どんな魔獣の毒よりも強烈です…」


「まぁまぁ、デフォナさんには浮いた話とかないのですか?」


僕がそう聞くと、デフォナさんからエンペラーボアの突進よりも鋭い視線が飛んできた。


「シリュウさんは結構ずけずけと人が聞きにくいことを聞きますね?槍の達人は、人の繊細な部分を突くのもお上手なのです?」


「………それはすいません」


田舎暮らしで同年代とも交流がなかった弊害が出ている。


僕の人との交流能力の低さにびっくりだ。


「……まぁ、想像通りありませんよ?大学でも研究が第一で、若い時も異性との交流も時間の無駄と思っていましたからね。でもこのくらいの年齢になると、友人が結婚したり、子を産んだりするので、流石にそろそろ1人は寂しくなってくるんですよ…でも大人になれば新しく人と知り合う機会と時間なんて中々ないですからね…」


自嘲気味に語るデフォナさん


そんなデフォナさんに意外なところか助け船が


「…意外ですね。デフォナさんのような美しい才女が縁に恵まれないとはタキシラの男は見る目がないのでしょう」


そう言うは次男のピエールさんだ。


その言葉にびくっと反応したデフォナさん


「……いやいやピエールさん?お世辞でもそのように褒められると私のような妙齢の女性は本気にしちゃいますからやめておいたほうがいいですよ?」


「お世辞ではありませんよ。私としては、知性や教養がある者に我が伴侶になっていただきたいと思いますから、デフォナさんのような女性と縁を結びたいと思います」


ピエールさんはいたって真面目な顔で言う。



そう言われたデフォナさんは顔を真っ赤にしていた。



「そう言えばピエールは縁談を断ってはいなかったな。見合いで相手の女性と会っていたな」


そう言うのはシルビオさん


シルビオさんは相手の方と会うまでもなく断っているようだが、ピエールは会ってはいるようだ。


「私ももう22歳ですからね。シルビオ兄さんのように意中の人はいませんから、縁談にて出会った方が私が認める方であれば結婚してもいいとは思っています」


「でもピエールが求める水準が非常に高いのですよ~。知性や教養がある女性と言っていますが、ピエールの基準では、皇国最高学府のタキシラ大学を卒業していることは必須ですからね~」


そう言うはスザンナさん。


「相変わらず勉強バカじゃのう。ピエールは」


ビーチェ バカじゃないのよ それは


「私はそんなに勉強家ではない。むしろ周りがしなさすぎるのだ。それにタキシラ大学を卒業するほどの知性がない女性と人生を共にするのは苦であろう」



なんともすごい言いようだ。


タキシラ大学は皇国最高学府で、僕は逆立ちしたって入れない大学だ。


それにシルベリオさんもタキシラ大学だって言ってたな。


すごい高学歴家族じゃないか。


無学でごめんなさい


「ぶははははは!!シルベリオ殿の息子はみな優秀ですのう!これも親の教育の賜物ですぞ!」


「恐縮です。長男のシルビオは文武両道で、次男のピエールは文の道を究めようとしており、優秀だと思っていますが、三男のアントニオはどちらも秀でてはおらず…」


「何の!何も心配ありますまい。アントニオ君は人として最も大事なものに秀でておりますぞ」


「それは何か?」


「社交性ですぞ。今日から屋敷にお邪魔させていただいておりますが、アントニオ君と接する使用人はみな嬉しそうな顔でした。人に好かれる才があるのでしょう。それは華族社会においては最強の武器ですぞ」


「わ~い!コウロン様に褒められちゃった!僕は人とお話することが大好きです!舞踏会とか大好き!」


確かに、この宴会でも常に笑顔を振りまいているし、給仕した使用人の人にも感謝の声かけしていて、気配りができて凄いなと思っていた。



フォン・サザンガルド家の3人の息子は、皆それぞれ優秀で、そして面白い人たちだ。


この人たちと僕は親族になり、末永くお付き合いをしていく。


それはまた楽しみな未来だと思った。










早く皇都に行きたい……

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