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第24話 一番素敵な人に一番最初に出会う

烈歴 98年 4の月 18日


ハトウの駐屯所の医療室で僕は目覚めた。


左手がまだ痛む。


いつもは夜明けとともに起きるけど、どうやら日は結構高く、正午前のようだ。


「シリュウ…起きたかや?おはようなのじゃ」


そう言って起こしてくれたのは、肩にかかるほどの金髪の美しい女性


僕の恋人のベアトリーチェ・ブラン・サザンガルド、通称ビーチェ


「おはよう、ビーチェ。朝起きたら一番にビーチェにおはようを言えるのは、幸せだね」

僕は思ったままの言葉を発した。


「……//シリュウはそんな恥ずかしいことを言うのかや…」


照れくさそうにするビーチェ。かわいい。


そんな可愛い恋人と共に、今日もまた1日が始まる。


とりあえずはサザンガルドに帰ろうか。



~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


目覚めて、出立の準備をすると、どうやらすぐに馬車に乗れるようだ。


なんと今回は紺馬車を貸し切ったそうで、出発時間は思い通りらしい。


紺馬車を手配したハーグさんに、感謝を伝えると「費用はブラン・サザンガルド家が持ちますし、私は職務で手配を行っただけです」と笑顔で返された。


ビーチェとリナさんと、夜通し運搬された素材の一部と、護衛用の兵士何人かが、紺馬車に乗り込むようだ。


素材の一部には、カルロ君を救うエンペラーボアの肝もある。


そしてデフォナさんも紺馬車に乗り込んでいた。


「デフォナさん、あそこで解体していて、良く戻ってこれましたね」

「あ~解体は夕方には終わりました。夜に泉の拠点に着いたので、そこで野営かと思ったのですが、どうやら急ぐらしく、ランタン(明かりの魔道具)を持った兵士の方と夜間行軍したのです。夜間行軍と言っても、私は荷車に乗っていたので、寝ていましたけどねぇ~」

「……なるほど…荷車で夜間行軍ですか…研究者の割に慣れていそうな感じがしますね」

「私の研究はフィールドワークが命ですから!こんな行軍ぐらいへっちゃらです!机にかじりついて、ウダウダ言っていても魔獣の向こう側へはたどり着けませんからね!」


研究者は勝手に頭脳労働者で、研究室とかに籠り切りのイメージだったけど、分野によっては現場に出ることが重要な研究もあるのか。


魔獣の研究等はその最たるものだろう。


デフォナさんの評価が少し上がった。


「まぁ馬車でも寝させていただきますよ~。帰ったら活力剤の調合と投薬をしないとですからねぇ~。体力は温存させていただきます!」


そう言うと紺馬車の1つの個室に入っていった。


その個室を覗くと、座席と座席の間に、布団が詰め込まれ、寝転がれるようになっていた。


おおう……特別仕様だ。


しかしこれからのデフォナさんの大仕事を考えれば、これくらいの配慮は当然なのかもしれない。


僕がデフォナさんの個室を覗いていたら、ビーチェが声を掛けてきた。


「シリュウもあのようにして、寝転がれる方がいいかや?」

「いやいいよ、ああいう風にしてしまうと、ビーチェの隣に座れないからね」

「……!…シリュウは…ほんとに…もう…」

「おーい。26歳独身の私への当てつけですか~。イチャイチャは個室に戻ってやってくださ~い…」


デフォナさんの悲痛な叫びが聞こえたので、僕らはあてがわれた個室に入った。


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


紺馬車が出発し、順調に進んでいった。


僕はまだ左手の傷が痛むので、ビーチェの左隣りに座る。


昨日は、ビーチェが寝かしつけてくれたとは言え、痛みで眠りが浅かったので、眠気が少しあった。


なので僕は馬車の中では、ほとんど眠っていた。


途中ハトウサービスエリアに着いた時も、降りる気がしなかったので、兵士の方に軽食を買ってきてもらい、馬車の中でビーチェと食べた。


馬車の中では軽食を食べさせてくれたり、飲み物を用意してくれたり、包帯を変えてくれたり、ビーチェに付きっ切りで世話をしてもらった。


お世話をされる嬉しさよりも申し訳なさが少しずつ勝ってきて「なんだか申し訳ないね」と言った。


でもビーチェは「妾がお世話したいのじゃ。シリュウのお世話はとても楽しいし、シリュウのために何かできるのは本当に嬉しいのじゃ。気にするでないぞ?」と優しく言ってくれた。


僕はその言葉に嬉しくなって、思い通りに動く右腕でビーチェの頭を抱きしめた。


昨日と変わらずビーチェに甘え続けて、夕方にはサザンガルドに到着した。



~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


紺馬車はそのままブラン・サザンガルド家の屋敷に直行し、紺馬車が屋敷の入り口に到着すると、屋敷からオルランドとアドリアーナさんが駆け寄ってきた。


「ベアト!シリュウ殿!無事か…!」「ベアト…!シリュウさん!大丈夫!?」

「父様、母様…妾は大丈夫じゃ。……約束通りシリュウがエンペラーボアを狩ってくれたのじゃ。肝もあの馬車に積んでおる。これで……カルロは助かるのかや?」


「…助かる!助かるとも!………ありがとうベアト!ありがとう、シリュウ殿!!なんとお礼を言ったらいいか……」


「シリュウさん…本当にありがとうございました。ベアトも良く勤めを果たしました。それでこそサザンガルドの女です」


オルランドさんとアドリアーナさんが安心したように言う。


「妾は何にもしてないんじゃ…すべてシリュウのおかげじゃよ…」


「……ビーチェは大活躍でしたよ。僕は何とか辛うじてですけどね……ボロボロになってしまいましたし…」


僕は苦笑いしながらそう言った。


「すぐに外科医を手配させますゆえ、安心なされよ。…ハーロック!」


「ここに」


「街一番の外科医をすぐに呼べ。予算は気にするな」


「畏まってでございます」


オルランドさんが指示を出すと、家令のハーロックさんが素早く屋敷を出て行った。


「とにかく今日は休まれよ。報酬など相談したいこともあるが、まずはカルロの活力剤の調合と投薬を優先させたい」


「もちろんです。報酬は…お願いしたいものがありますが、落ち着いてからで大丈夫です」


「当家に出せるものなら最大限の報酬を出そう。その傷が治るまでは我が家に滞在していてほしい。…シュリット!シリュウ殿を客間に案内せよ!」


「はい!こちらへどうぞ!」


「シリュウ…歩けるかや?」


「もう今は1人で歩けるよ。あとはデフォナさんにお任せだね」


そう言うと馬車から降りてきたデフォナさんが元気よく答えた。

「お任せください!今日中に1つの活力剤は調合して見せますよ!馬車の中で寝て元気たっぷりですからね!」


「……お頼み申す」


オルランドさんが神妙な顔で頭を下げ


「お願いします…」


アドリアーナさんが祈るような手で頭を下げていた。


「はい!では調合場へ行きましょう!」


そう言うとデフォナさんは素材が梱包された箱を兵士に持たせて、去っていった。


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

僕は客間の部屋でのんびりしていた。


シュリットさんが用意してくれた怪我人用の軽装に着替えて、ベットに寝転がってゆっくりしていた。


傍には冒険者の姿からドレス姿に着替えたビーチェが椅子に腰かけていて、紅茶を飲んでいた。


「……してシリュウ…父様と母様に妾達の関係について、いつ言うかや?」


「う~ん、まぁカルロ君の容体が回復して、一定解決してからかな?」


デフォナさんが言うには、活力剤の効果はわりとすぐ出るらしい。

早ければ1週間、遅くとも1月ぐらいには目に見えた効果が出るらしい。


「そうじゃな。早くカルロにもシリュウを会わせてやりたいのじゃ…」


「僕も年下の男の子なんて、初めて接するから楽しみだよ」


「……そうじゃな…して、シリュウよ…本当にいいのかや?」

ビーチェが不安そうな顔をして僕に尋ねた。


「何が?」


「……その…ほんとに妾でいいのかや?シリュウはまだ故郷の村から出たばかりで、これから色んな女性との出会いがあるじゃろう…?最初に出会った妾と…その…伴侶になるのは、妾が言っておいてなんじゃが、性急すぎやしないかと…シリュウはまだ16じゃし、華族でなければ結婚などまだまだ先の話じゃ……妾がそのシリュウを…縛りつけていないかや?」

ビーチェがそう伏し目がちに言った。


なんだ、そんなことか。


「早まったなんて、全く思ってないよ。その…恥ずかしいんだけども、ビーチェと最初にあった時、何の根拠もないけど、運命だと思ったんだ。自分でも不思議で、この女性と長い付き合いになるんだと感じたんだ。僕は初めて会った人と伴侶になるんじゃない。ビーチェと出会ったからそう思ったんだ。他の誰でもない君が」


僕は真っすぐにビーチェを見つめて言葉を続ける。


「ビーチェは、僕に助けてもらって、その…惚れてくれたよね?でも僕はもう出会った時からきっと惚れていたんだ。僕がビーチェを離したくないんだ。他の誰でもない君が。これからきっと色んな女性と出会うとは思うけど、君より素敵な人はきっと現れない。一番素敵な女性に一番最初に出会った僕は、きっととても幸運な奴なんだよ」


そう言ってビーチェの手を右手で握りしめた。


ビーチェは涙を流して、笑っていた。


「………!!……シリュウ…大好きじゃ…」


「ありがとう…僕も大好きだよ…ビーチェ」


お互いに繋いだ手を握り返す。



ビーチェは、僕の大事な人だ。




だからこそ伝えないと、僕のことを





「……遅くなったけど、聞いてくれる?僕の、僕自身の話を」








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