第8話 サザンガルド晩餐会①~開幕
烈歴 98年 7月12日 18時55分 軍都サザンガルド 3区(華族区)軍都迎賓館 控室
フォン・サザンガルド家にて領主のシルベリオさんとその嫡男シルビオさん、そして奥方のスザンナさんからサザンガルドの勢力について、教えてもらった僕とビーチェは、そのまま昼食をフォン・サザンガルド家にてご馳走になった。
ちなみにフォン・サザンガルド家に逗留してるはずのじいちゃんは、エクトエンド村へ僕の結婚式に出てくれる人を迎えに行っているため不在だった。
大総督の就任について、直接話をしたかったけど、仕方ないか。
それにしても、エクトエンド村からは誰が来てくれるかなぁ…サトリの爺さんは来てくれると思うけど
その辺はじいちゃんが良い感じにまとめてくれるだろう。
そして昼食後に、一度ブラン・サザンガルド家に戻った僕らは、ブラン・サザンガルド家に戻って、晩餐会の準備をして、オルランドさん、アドリアーナさん、カルロ君と一緒に、フォン・サザンガルド家に隣接しているサザンガルド随一の社交会場である『軍都迎賓館』に足を運んだ。
この軍都迎賓館は、セイトにある社交会場のように豪華絢爛ではないが、代わりに甲冑や武具などが綺麗に壁に並べられて、軍の都の名に相応しい迫力があった。
今僕は、会場となる大広間に隣接する控室にビーチェと2人で登場の時まで待機している。
この隣の大広間には、数十の丸いテーブルが並べられ、サザンガルドの有力者がもうすでに集まっているそうだ。
……今更ながらめちゃくちゃ緊張してきたぞ…
「……う~ん……こういう場は何度来ても慣れない……部屋の豪華さとか…会場の広さに…人の多さ…田舎で育った僕には辛い…」
「王家十一人衆になってから何度か出たじゃろ?…それにこんな田舎都市の晩餐会など皇都の社交場に比べれば温いものよ。楽にしてくりゃれ」
青いドレスに身を包むビーチェはそう言って、足を組みながら紅茶を飲んでいた。
「…まぁビーチェにはサザンガルドでの社交場なんて慣れたものだろうね」
「……まぁ慣れてはおるが、流石に妾自身の結婚の晩餐会となると緊張もするぞい?…しかし旦那様は妾の数倍は緊張した面持ちのようじゃからのう。ここは妾がしっかりしないといけないのじゃな」
「……それは…すいません…」
「良い良い。妾がリードすることもあってもよかろうて。かっかっか!」
ビーチェはご機嫌そうに快活に笑った。
本当にこういう社交の場は作法もわからないし慣れないから、生粋の華族令嬢であるビーチェの存在は本当に頼りになる。
「ほんとに頼むよ…今日は僕静かにしてるから」
「……皆シリュウを見に来ているのじゃがのう…」
そうなの?
やっぱり皆地元の御姫様であるビーチェの晴れ姿を見に来たと思うんだけどな
そう思っていると、控室の扉がコンコンとノックされ、案内の執事の人が入って来た。
「失礼します。シリュウ様、ベアトリーチェ様、ご入場お願いいたします」
お?いよいよ晩餐会の開始かな…
「それでは行こうかや。妾の自慢の旦那様を皆に紹介しようぞ」
「それはこちらの台詞だね。僕の自慢の奥さんを皆に見てもらいたいな」
お互いにそんな声掛けをしながら、僕らは腕を組んで、隣接する大広間に繋がる大きな扉を出た。
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烈歴 98年 7月12日 19時00分 軍都サザンガルド 3区(華族区)軍都迎賓館 大広間
軍都迎賓館の大広間は、豪奢な装飾ときらめくシャンデリアに彩られ、まさに軍都サザンガルドの権威そのものを体現していた。そこには、軍都庁の幹部や領邦軍の華族、周辺都市の領主たち、さらには商人や職人、教育者といった各界の名士が一堂に会している。
今日の晩餐会を欠席する者などいようはずもない。何より、あの「サザンガルドの剣闘姫」ことベアトリーチェの婚約相手を、この目で確かめたいという興味が彼らを駆り立てていた。しかも、この機会にはめったに姿を見せないフォース砦のコルラード・トロヴァート隊長も遅れはするものの参加するとあっては、なおさらだ。
会場には高揚した空気が漂い、名士たちはそれぞれ席につきながらも、興奮を抑えきれない様子で雑談に興じている。だが、会場の扉が開き、この地の主であるシルベリオ・フォン・サザンガルドが登場すると、一瞬にしてその喧騒は静まり返った。
「諸君、日々の多忙を押してこのように一堂に会していただいたこと、心より感謝申し上げる。サザンガルドの名士たる皆々のご臨席を賜り、我が領主としてこの上なく光栄に存じる。さて、この度、我が愛しき姪、ベアトリーチェ・ブラン・サザンガルドが、かの名門ドラゴスピア家の現当主、皇国海軍准将、さらには王家十一人衆の一角を担われるシリュウ・ドラゴスピア殿との婚姻の運びとなり、その吉報を皆々様にお披露目申し上げたく、この場を設けさせていただいた次第である。この良き日に共に喜びを分かち合い、宴のひとときを存分に楽しんでいただければ、これに勝る幸いはない」
シルベリオの威厳ある挨拶が響き渡る。
彼がベアトリーチェとその伴侶となるシリュウ・ドラゴスピアを紹介すると、会場には拍手が巻き起こった。
彼の言葉を受け、参加者たちはいよいよ今日の主役たちの登場を待ち望む。
「それでは諸君がお待ちかねの主役の登場だ」
その声とともに、大広間の中央奥の扉が勢いよく開かれる。
青いタキシードをまとった青年――シリュウ・ドラゴスピアが堂々と歩みを進める。
その隣には、青いドレスを優雅にまとい、微笑みを浮かべるベアトリーチェ。
二人の姿はまさに絵画から抜け出したかのように美しく、大広間全体の視線を一瞬でさらっていく。
「我が姪ベアトリーチェ・ブラン・サザンガルドとその伴侶であるシリュウ・ドラゴスピア殿だ。皆盛大な拍手で迎え入れてほしい」
その言葉と同時に、大広間には歓声と拍手が響き渡った。それは祝福の嵐となり、主役である二人に降り注ぐ。
新郎新婦の姿を前に、誰もが胸の奥にこの日の特別さを噛みしめるのだった。
シリュウ「あばばば……なんか偉そうな人がたくさんいるよ…」
ビーチェ「……この場ではシリュウが一番格があると思うがのう……」




