【閑話】コウロン・ドラゴスピアの独白〜亡国の後悔
6章開始です。
体調不良気味なのでまばら更新ですみません
未だ答えは見つからない。
果たしてあの時の私の選択は正解だったのか。
そして10年前に良かれと思って軍を離れたことも、正しかったのかはわからない。
そんな考えたくない自問自答から逃れるように、自分の孫に目一杯の愛情と厳しさを注ぎ込んだ。
私は失敗したが、この子はきっと眩い未来を歩いてくれると信じて
英雄になどならなくてもいい。
歴史に名を刻まなくてもいい。
ただただ自分の選択に後悔がなく、素晴らしい出会いを経て、幸せになってほしいと願った。
その願いは通じ、彼は最初の冒険にて人生を共に歩むべき女性と出会い結ばれていた。
手紙でそのことを知った時は、嬉しさで涙を堪えるのに必死だった。
そして実際に彼の伴侶に会えば、そこには一組の絵に描いたような幸せな夫婦がいた。
その姿に私はかつての私と妻のことを思い出してしまう。
身分違いの恋
そして年上の妻
いくら孫でもそんなところまで同じになるとは夢にも思わなかった。
このまま彼女と幸せに平穏に暮らして欲しいと願わずにはいられない。
彼の意志を尊重し、軍への入隊を見守っていたが、本当は婿入りして、彼女と共に軍都を守り、国の政争とは無縁の場所で得意の武を振るう人生を歩んで欲しかった。
ただこのような先の短い老人が未来ある若者の可能性を狭めてはならないという老婆心でその提案を呑み込んだ。
きっとこの2人なら大丈夫
根拠のない確信を持って皇都に送り出す。
そしてしばらくぶりに来た手紙を見て、私は頭を大槌で叩かれたような心理的衝撃を受けた。
『僕はリータ殿下をこの国の王にすると決めました』
『コウロン・ドラゴスピア殿に皇国軍の最高責任者である大総督の役に就任していただきたい』
その手紙はおおよそ孫から祖父に送る文面と内容ではなかった。
これは孫から祖父にではなく、現役の将軍から勇退した将軍への復帰依頼の手紙だったのだ。
そこまで成長した孫の勇姿に嬉しく思いつつも、どこか寂しさを感じた。
しかしそれ以上に感じたのは危機感
この子は私と同じ破滅の道を歩もうとしている。
私が50年以上前に祖国を追われ、妻ともども必死に亡命したあの破滅の道を
そんなことはさせない
させたくない
させるべきではない
破滅の道を歩んで受けた心の傷口からそんな心の声が溢れ出そうだった。
しかしこの子は止まらない。
手紙だけでもこの子の意思の強さを感じる。
私は失敗したからやめておきなさいと、何の反省もせずのうのうと生きてきた薄い大人のように諭すことしかできないのではないか。
この子はこれから綺麗な女性を妻に迎え、子宝に恵まれて、幸せな家庭を築くことができる。
それだけでいいのではないか。
あんな悲劇を受けたのに、国のために身を粉にして働く必要なんてない。
お金など一生に使いきれないほどの金貨の蓄えが7つ分はある。
そんなことしなくても十分に幸せな生を送れるのに。
そう考えても、仕方がない。
幸いにもすぐ会える機会がある。
そこで問いただすとしよう。
人並みの幸せを享受するだけか
英雄になる名誉ある生を全うするか
それともまた別の答えがあるだろうか。
おそらくあの子の覚悟は決まっている。
覚悟が決まっていないのは私の方だ。
自らの過ちで国を滅ぼさせ、自分だけ大切な人の手を握りしめて、大陸を飛び出した哀れな少年の記憶が私の覚悟が定まることを永遠に邪魔をする。
私はあの時どうすれば良かったのか。
その答えを未だに探している。




