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第12話 皇都事変②〜最強のメイド

列歴98年 7月7日 19時31分 1区(皇区)皇宮 正門前


夜も更けて、街灯の灯りと月明かりのみが皇宮を照らしている様子をリータとルナとメイド姿のヒルデガルドの3人は呆れるように眺めていた。


「……元とはいえ継承権第1位の皇族が皇宮から退去するのに見送りの1人もいないの…?こんな夜に退去するのに、護衛をつけることよりも、手続きを優先することも相まって終わってるわね…」


ヒルデガルドはリータとルナが受けた仕打ちに心を痛めながら吐き捨てる。


「そういう奴らなのよ。まぁこれくらいならまだいいけどね」


「本当に…?酷い仕打ちを受けてきたのね…」


「ヒルちゃんがそんな顔する必要はないわ。あと私にこんな仕打ちをしてきた奴らの顔と名前は全部覚えているから。皇王になったら2秒でクビにするわ」


「………あなたなら本当にしそうね…」


そんな会話をリータとヒルデガルドとで交わしていると、ヒルデガルドはリータの陰に隠れるようにしているルナを見た。


ルナとヒルデガルドはほとんど初対面で、今回ヒルデガルドが随行することもルナは皇宮を出る直前で知ったのだ。


元々がかなり人見知りで、ただならぬ気配を漂わせているヒルデガルドにルナは怯えていた。


そんなルナを見てリータは声を掛ける。


「ルナ、大丈夫よ。ヒルちゃんはとっても強いのよ。私達がこんな夜に皇宮を出ることを決めたのもヒルちゃんがいたからなの。そんなに怯えていては失礼よ」


「は、はい……ご、ごめんなさい…」


「私に言うこと?」


「い、いえ…!……ヒルちゃん…ごめんなさい…」


ルナはパコリとお辞儀をしてヒルデガルドに怯えていたことを謝罪する。


するとヒルデガルドは自身より小柄なルナと目線を合わせるようにしゃがんで答えた。


「……大丈夫よ。慣れているから…でも私があなたの味方だと言うことは信じていて欲しい…」


「………うん…」



ヒルデガルドの優しい言葉に少し心を開いたルナは、目に光を宿して、前を向いた。


そんな2人を見てリータは微笑みながら号令をかける。


「では行きましょうか。ここからは皇宮の外になるわ。でも皇区だから軍人は入れない。だから襲われるのはここからシリュウちゃん達が待つ華族区と言うところね」


華族区と皇区の境には、既にシリュウとパオが待ち構えている。


本日皇区内は()()()関係者以外立ち入り禁止令が敷かれており、この皇区にいるのは皇族か皇宮の勤め人しかいない。


だからこの皇宮の外から華族区までの道は、シリュウ達なしで乗り切る必要がある。


敵が刺客を差し向けるならここからだと()()()は読んでいた。


「経路はわかる?ヒルちゃん」


「もちろんよ…ここ最近はずっと皇都を歩いていたもの……目を瞑っても目的地まで案内できるわ…」


「それは頼もしいわね。では行くわよ」



そしてリータ達は皇宮の外に出た。






その瞬間








ガキィン!

ガキィン!

キィン!



「きゃっ!」

「…くっ!」



金属がぶつかり合う音が3度響いた。



ルナは驚きしゃがみ、リータはそんなルナを庇うようにして覆い被さる。



「出た瞬間いきなり?……本当にクズしかいないのね…この国の頭には…」


ヒルデガルドは隠し持っていた剣で弾いた3枚の飛びナイフを蹴飛ばしながら吐き捨てる。



そしてどこからか黒い外套を羽織った顔を仮面で隠した者が3人現れた。


そしてその3人ともが表情は見えずとも驚きに満ちていことが窺い知れた。



「バカな……我々の投げナイフを一度に防いだだと…」

「……ただのメイドではないのか…」

「……しかし所詮…小娘…我ら3人相手ではどうしようもあるまい…」


そんな刺客3人を見てヒルデガルドは呆れるように言う。


「はぁ……面倒ね…リータ殿下…これはあなたの首に懸賞金がかかっているようだわ…」


「え!?」


「「「!!!???」」」


刺客の振る舞いを見て、瞬時にリータの首に懸賞金がかけられていることを見抜くヒルデガルド


「まず皇族の暗殺というにはあまりにも拙い刺客……それに皇宮から出た瞬間の襲撃…そんなの皇宮から出た直後を一番警戒するに決まってる…無計画すぎるわ…このことからおそらくあなたの首に懸賞金が掛けられていて、皇宮から出た瞬間から早い者勝ちといったところかしら……」



「な、なるほど…」

「ヒルちゃん…すごい…」


ヒルデガルドの洞察力に舌を巻くリータとルナ



それに対し見抜かれた刺客達は少しだけ焦る。


「おい…何者だ…あのメイド…」

「……裏の界隈にはあんな奴は知られておらぬ…」

「……それに軍人は今ここにはいないはずだ…」



ご丁寧に黒幕から軍人がいないことを教えてもらっているという情報までくれる拙い刺客達


痺れを切らしたのはヒルデガルドの方だ。


「リータ殿下……ルナ殿下の目を塞いで…」


「了解よ。ほらルナは見ちゃダメ」


「えっ?」


ルナの目が塞がったのをヒルデガルドが確認した次の瞬間



ズバッ!

スババ!

ザシュ!


「ぐはぁっ!」

「ごふっ!」

「ぎゃあっ!」



3人の刺客達はヒルデガルドの一太刀で同時に3人とも足を斬られてしまい、地に転がってしまう。


そして地に転がる刺客達の首に剣を当てて凄むヒルデガルド


「ひっ!」


ヒルデガルドのただならぬ迫力に怯える刺客達


「……ここであんた達の首を取ってもいいのだけど……何か吐くなら考えてあげてもいいけど…?」


「い、依頼主はわからん…!闇ギルドを通じて、リータとルナの首を取ったら大金と換金してくれる話が流れてきたから参加しただけだ…!」


「……闇ギルド……この国もやっぱりあるのね…」


必要な情報を聞いたヒルデガルドは3人の顔を石畳に叩きつけて気絶させて、リータのところへ戻る。



「リータ殿下…急ぎましょ……思ったより刺客の数が多くなりそう……それになりふり構わない奴も出てくるかも……」



「はぁ……ヒルちゃんがいるから余裕だと思ったのだけど…仕方ないわね。ルナ、頑張って走るわよ」


「……は、はい…!」



そうしてリータとルナは闇夜の皇区を駆けていく。



最強のメイドを携えて




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