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第11話 皇都事変①〜皇宮から出る日

列歴98年 7月7日 19時19分 1区(皇区)皇宮東宮 リータ私室


リータは空っぽになった自身が長く過ごしたこの部屋を眺めて継承者第一位としての生活を振り返っていた。


リータが皇王の息子を差し置いて継承者第一位になったのには少し変わった経緯があった。


それは現皇王のフェルディナンドが皇太子時代に妻を迎えたにも関わらず5年もの間子宝に恵まれなかったことに端を発する。


あまりにもフェルディナンドに子が生まれないことを危惧した前皇王(フェルディナンドとリータの父)の心の隙を突くように既にルナを産んでいたリータは前皇王と各大臣に自身の継承権をフェルディナンドの次点にするよう迫ったのだ。


リータの華族界隈での評判は、ヘスティア神国での留学の際に見ず知らずの男と儲けた子を連れ帰ったことで地に堕ちていたが、それでも華族達は万が一のことを考えて、リータの要求を呑んだ。


そしてその後すぐにベラルディ公爵の妹の第二夫人に息子が、パッツィ公爵の姪の第三夫人に娘と息子が立て続けに生まれ、5年もの間子宝に恵まれなかったのはメディチ公爵の娘の第一夫人に問題があったとされ、フェルディナンドから離縁を申し渡されてしまった。


それを受けたメディチ公爵は憤怒し、実の娘に華族社会では生きていられないような傷を付けられたことにより、今に至るまでフェルディナンドとメディチ公爵の関係に深い溝ができていた。


そして第一夫人と仲が良く、フェルディナンドの対抗馬になりうるリータとメディチ公爵の距離は自然と近づき、メディチ公爵はリータの最大の支援者となっている今に至るのだ。


(アンネッタ様……子を作って帰ってきて、皇宮に居場所がなかった私に唯一お優しくしてくれた……あなたの仇は私が必ず…)


メディチ公爵の娘であり第一夫人であったアンネッタは、長らくリータの良き理解者であった。


そんなアンネッタを子を産まないという理由でにべもなくこの皇宮から追放した現皇王フェルディナンドのことをリータは親の仇のように恨んでいる。


そして皇宮の、政庁の腐敗を目の当たりにし、一刻も早くあの愚王を玉座から叩き落とさねばならないという使命感に駆られていた。


そして今日はその第一歩だ。


ルナと共に皇宮から自らの意思で出て、皇王と対立することを内外に鮮明にアピールする。


リータは今一度自分のやらねばならないことを思い、気合を入れるようにして頬を軽く叩いた。


そんなリータの共に皇宮を出るルナは、母であるリータを気遣う様子を見せた。


「母様…大丈夫…?……最近あまり寝ていないようだし……」


「大丈夫よ、ルナ。今日からはシリュウちゃんとベアトちゃんと一緒に暮らすのだから、楽しみで眠れなかっただけよ」


「……それはそう…!」


ルナはふんす!と小さな体を大きく動かして喜びを表現した。


シリュウの屋敷はリータの屋敷の隣に建築しており、シリュウ達から設計書を預かったリータは、その設計書にシリュウの屋敷とリータの屋敷を繋ぐ渡り廊下を勝手に付け加えた。


これでリータ達とシリュウ達は一つ屋根の下で暮らす家族とも言えるような状況になったのだ。


建築途中の屋敷を見学に来て、渡り廊下を見た時のシリュウとベアトリーチェは顎が外れるほど口を開けて驚いていた。


渡り廊下もあり、シリュウ達とほぼ同じような生活をすることになりルナはこの皇宮を出る日をとても楽しみにしていた。


ここ数日で、ベアトリーチェの他に、ドラゴスピア家の家臣である会計役トスカや護衛騎士のリナ、メイドのシュリットにパオの婚約者であるリアナとも知り合い、その全員と大人数でお茶会をした日は、遅くまでそのお茶会のことをリータに話すほど楽しんだようだった。


(シリュウちゃん達との出会いを経て、この子の世界も広がっていく……もっと広げてあげるにはここから出ないと)


リータは親としてルナの将来を憂いていたが、同年代の子達の交流が増えることは大変喜ばしいこととも考えていた。



そして今日まさに夜も更けている時間だが、皇宮から『リータウン』に完成した屋敷へ移動する時だ。


なぜこんな夜遅くに移動するかというと、本来の予定であれば日中に移動する予定であったが、宮内省による皇宮から出る手続きが遅れたため、夜に出ることとなってしまった。


(まぁ兄様かベラルディ公爵の嫌がらせだと思うけど…相変わらずけつの穴が小さい奴らだわ)


しかも皇宮を出ることで、今この時点ではリータは皇位継承順位が最後尾になったため、皇家騎士団の護衛はつけられないとのこと


今から護衛を軍から呼び寄せようにも皇宮に軍人が入る手続きが必要だとかで、呼び寄せることができなかった。


しかし今の身分で敵の本拠地である皇宮で1泊するのはあまりにも危険なため、リータはルナと後1人のメイドのみを連れて、徒歩にて屋敷を目指すことになったのだ。


屋敷まではそう遠くはないが、皇宮を通り華族区を抜けるため、おおよそ30分くらいだとリータは見積もっていた。


「あまりぐずぐずしていても仕方ないわね。では行くわよルナ」


「はい…お母様」


そしてリータはルナの手を引いて部屋から出る。



そしてお付きのメイドが扉の前で立っていた。


そのメイドは金髪の髪を肩まで下ろしており、眼鏡を掛けた人形のように整った顔つきをしていた。





「じゃあ、屋敷までお願いね。ヒルちゃん」


「お任せを…」



皇都において最強格とも思われるヒルデガルドを伴い、リータは夜の皇宮を後にした。


そして短いようで長い屋敷までの道を歩み始めた。




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