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【閑話】サザンガルド家の優雅だったティーブレイク

烈歴 7月2日 15時14分 軍都サザンガルド ブラン・サザンガルド邸 庭園 


太陽の照りが一日の頂点を少し過ぎた時間


この屋敷の主であるオルランド・ブラン・サザンガルドとその妻アドリアーナ、シリュウの祖父コウロン・ドラゴスピア、そしてサザンガルド領主でありオルランドの兄のシルベリオとその妻スザンナは、庭園にて優雅にティーブレイクをしていた。


シリュウとベアトリーチェの結婚式の段取りについて、ちょうど最終調整を行い、もうこのまま当日を迎えても問題ないぐらいには準備が整ったことを祝して5人でささやかな慰労会をしていた。


「いやはや、急な婚儀にも関わらず2週間も前に準備が完了するなど、サザンガルド家の皆様の手腕には舌を巻きまする」


コウロンはにこやかにサザンガルド家の大人達の迅速な結婚式の準備の早さに感心していた。


「いえいえ。しかしシリュウ殿の関係者の出席者が少ないのも準備が早く終わったことの一因でもありました。よろしいので?」


シルベリオはコウロンに問う。


「仕方ありますまい。あの子の交友関係はまだそこまで大きくありませんからなぁ。儂の知り合いとエクトエンドから特に出席を希望する者、あと皇都で知り合った数名の友と、十分ですぞ。はっはっは!」


コウロンは気にしないで欲しいと言わんばかりに笑う。


「ベアトリーチェの方はサザンガルド家の関係者と学園の同窓生くらいかしら?」


アドリアーナが指を折って確認する。


「そうだろうね。カルロもすっかり元気だし、いやはやシリュウ殿と出会う前はこんなに霧の晴れたような状況になるとは思わなかったよ」


オルランドは安堵の息をつきながら言う。


シリュウと出会う前のブラン・サザンガルド家はカルロが衰弱状態にあり、ビーチェが当主教育の辛さに家出をして家庭崩壊寸前の状況であった。


それをシリュウがエンペラーボアを討伐し、カルロの衰弱状態を回復させることに貢献したため、ブラン・サザンガルド家は順風満帆と言ってもいいくらいの状況になっている。


カルロはすっかり元気になり、コウロンの武術指導を受けている程だ。


「うふふ。シリュウさんは凄い方ですね~」


スザンナは頬に手を当てながら、シリュウを褒めた。


シリュウとベアトリーチェの結婚式の準備も整い、彼らの雰囲気は非常に穏やかで余裕のあるものだった。



しかしその空気を切り裂く報告が入る。


「旦那様…至急の文が入っております…」


穏やかな空気で会話をする5人の間に神妙な面持ちで文を持ってきたブラン・サザンガルド家の家令ハーロック


その手には2通の文があった。


「どうした?お前がこのような場に報告を入れるなんて珍しいな…」


オルランドはハーロックのらしくない行動に眉をひそめた。


「この2通の文…1つはシリュウ様からコウロン様への文ですが…もう1通はベアトリーチェお嬢様から旦那様とご領主様宛のもので…そして封にはベアトリーチェ様の実印で封緘しております」


「ベアトリーチェの実印で封緘?よっぽど重要な文なのかしら?」


ハーロックの報告にアドリアーナはそう推測した。


「至急の用件であることは間違いないでしょう。皇都から送付されておりますが、送付日は6月30日でございます」


その言葉にシルベリオが驚く。


「一昨日じゃないか!皇都からわずか2日で届かせる程の文…一体何が…」


ハーロックが持ってきた2通の文を固唾を飲んで見守る5人


そしてコウロンが言う。


「何にせよ開けてみましょうぞ。このシリュウの文は貰っても?」


「もちろんでございます。どうぞ」


コウロンはハーロックから文を受け取り、さっそく開封する。


「……どれどれ………ほう!……ふむぅ……なるほどのう…」


シリュウの文を見たコウロンは最初は喜色を浮かべていたが、最後は険しい顔つきになった。


「……何と書かれておるのですか?」


失礼とは思いながらも、シルベリオはコウロンに手紙の内容を尋ねた。


「ふむ…全てはお話できませんが…まぁ何といってもシリュウがこの度『王家十一人衆』に就任したそうですぞ」


「「「「!!??」」」」


コウロンの言葉に驚くシルベリオとオルランド、アドリアーナ


スザンナは「あらあら~」とにこやかに微笑んでいるだけだが……


「入隊してからまだ2月も経っておりませんぞ…!?」


シルベリオは驚愕の顔で言う。


「いやこの間の帝国からの撤退戦の功績だろう…あれ程の功績なら『王家十一人衆』に抜擢されてもおかしくない…」


オルランドは冷静にシリュウが『王家十一人衆』に就任した要因を推理した。


シリュウが帝国から撤退した一団を見事な武で救ったことは、すでにサザンガルドにも知れ渡っている。


「いやいや……凄い子だとは思ったけど…想像以上よ?うちの娘は何て男を捕まえたのかしら?」


アドリアーナも冷や汗を掻きながら言う。



そして気になるのはもう1つのベアトリーチェからの手紙…


「シリュウ殿が王家十一人衆に就任したことと関係があるのか…?」


シルベリオはおそるおそるその手紙を開封する。


そして出てきた文をオルランドとアドリアーナにも見えるように広げた。


そして……その中身は……


「……け、結婚式に『王家十一人衆全員』が参加するだと!!??」


「……つきましてはその手配をお願い…だと…!?…我が娘ながらとんでもないことを言うなぁ……」


「…え?…ちょ、ちょっと待ってよ!?『王家十一人衆』なんて来賓の格で言うと最高クラスよ…!?い、今からそれを…追加で何人!?」


「落ち着け、アドリアーナ…もともと『王家十一人衆』の一人であるパオ少将が参加される予定であった…それに準じよう…」


「あなた……そうね。また忙しくなるわね…はぁ…早速打ち合わせするわよ!」


「ああ(おう)!」


そう駆け出していきそうなシルベリオとオルランドとアドリアーナ


しかしそれをスザンナが制した。


「あらあら~文は最後まで読みましょう~」


いつの間にかベアトリーチェからの文を手にしているスザンナがいつものようにニコニコしながら言う。




「スザンナ…何が他に書いてある…?」


シルベリオは妻のスザンナにおそるおそる問う。



「リータ殿下とその娘さんのルナ殿下も参加を希望しているそうですよ~もう招待することを約束したって書いてあります~」



「「「ひゅっ………」」」



スザンナの衝撃の一言に心臓が止まりそうになる3人



そして次の瞬間3人とも膝から崩れ落ちた。


「こ、皇族の参加だと…?」

「…それもめったに公の場に出られないルナ殿下まで……」

「……あぁ…関わらないことって言ったのに……とんでもないことになるでしょ……私達が……」



ほんの数分前までは優雅な空間であったこの庭園が、一転して重たい空気が漂う。


これからシルベリオとオルランド、アドリアーナは追加の参加者に関する手配を緊急にしなければならない。


それも現役の王家十一人衆と皇位継承権第1位の皇妹殿下とその娘というこの皇国においてもっとも格があると言っても過言ではない人達の手配だ。


新たに招待すべき人の交通手段や宿泊場所の確保、果ては衣装の調達手段の提供、趣味嗜好の把握


場合によっては護衛や専任の侍従も考えなければならないほどだ。


やるべきことが山積している。



あまりにもいたたまれなくなったコウロンは、苦笑しながら3人に声を掛ける。






「……そ、そのう……儂も何かできることはありますかのう…?」




そのコウロンの言葉は3人には届かない。





3人はただこの現実を受け止めるのに精いっぱいだった。









リータ「シリュウちゃんの結婚式とか私が行かないわけないでしょ」


ルナ「皇都から出るの……初めてかも…!」

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