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第9話 大総督の後任

6月30日 10時 皇都セイト 1区(皇区)皇宮 円卓の間


論功行賞にて王家十一人衆に就任することを聞いた翌日


僕は早速その王家十一人衆で構成される『円卓会議』に参加していた。


この円卓の間には、王家十一人衆の面々と数人の書記官と兵士がいるだけだ。


いつもはビーチェが側にいるが、円卓会議では、側近の参加は禁止されている。


僕は非常に緊張した気持ちを抱えて、小鹿のように震えながら着座し、開会を待っていた。


そんな僕を王家十一人衆の面々は若干引き攣った顔で見ている。



「おめぇ……大丈夫か…今にも吐きそうな顔をしてるぜ…?」


そう優しい言葉を掛けてくれるのは陸軍 アレス・デルピエロ大将


「だだだ、大丈夫です…こ、こういう場は慣れていなくて…」


「そんなに構えなくてもいいさ~。ここを戦場だと思えばいいさ」


軽く助言をしてくれるのは陸軍サンディ・ネスターロ中将


「あ、ありがとうございます…」


「シリュウ君…ほら、お水でも飲んでください。少し落ち着きますよ」


僕の元へコップを持ってきて差し出してくれるのは皇軍レア・ピンロ少将


「レ、レアさん…助かります…ゴフッ…」


僕はレアさんから貰った水を飲もうとしてむせてしまう…


「はっはっは!槍を持たせたら誰よりも勇ましいのに、こういうところは年相応さね!はっはっは!」


そんな僕の醜態を見て笑う海軍 ゾエ・ブロッタ大将


「……仕方ない……僕も最初は怖かったからね…」


優しいフォローをしてくれるのは海軍 フランシス・トティ中将


「……それよりこの会議が終わったらおれと仕合しろ…新しい槍を手に入れたそうだな…真剣でやるぞ…」


僕の事情はお構いなしに仕合を申し込んでくる戦闘狂…皇軍 ファビオ・ナバロ中将


「か、勘弁してくださいよ…この会議の後は政庁主催の外交使節団の慰労会に参加しなくちゃ…」


「ばっくれろ…」


そんな無茶苦茶な…


「……レアさん…助けて…」


ゴンッ!


僕の一言で、ファビオ中将の隣に座っていたレアさんがファビオ中将に拳骨をかます。


「シリュウ君、悪は成敗しておきました。安心して慰労会に参加してくださいね」


「ありがとうございます…」



「はっは。このままではシリュウ准将の胃がもちそうにないな。早速会議を始めようか」


皇軍ルイジ・ブッフォン大将の提案に、一同は頷く。


「では僭越ながらここに『円卓会議』の開催を宣言させていただく」


発議者 ルイジ・ブッフォン皇軍大将は、起立し一同に礼をして、開会宣言をした。


「まず開会に先立って、『円卓会議』の新たな参加者を紹介する。皆も知ってはいると思うが、海軍のシリュウ・ドラゴスピア准将だ」


「ど、どうも…よろしくお願いします!」


僕は起立して一同に向き合って礼をする。


そして参加者全員が起立し、拍手で答えてくれた。


「ようこそ、円卓会議へ。まぁシリュウっちならいつか来ると思ってたろん」


隣に座るパオっちが笑顔で言う。


そしてルイジ・ブッフォン将軍が話を続ける。


「シリュウ・ドラゴスピア准将の功績はすでに周知のとおりだ。彼は類まれなる武だけでなく将軍としての資質も見事であることを示した。今後もシリュウ・ドラゴスピア准将の活躍を祈念している」


「は、はい!今後とも頑張ります!」


「はっは。では早速本日の議題に参ろう。そして皇軍大将ルイジ・ブッフォンの名を持って命ずる。書記官と兵士は退出せよ」


「…え?」


ブッフォン将軍の言葉を聞いた書記官と兵士はそそくさと退室した。


今この場には王家十一人衆の面々しかいない。


「これでこの会議の議論の過程は全て闇の中さ~」


サンディ中将はいつものように軽い感じで言う。


「まぁ初めてのシリュウ准将にはいきなり特殊な会議となり申し訳ないが、議題が議題だけにあまり議論の過程を公にしたくないのだよ」


ブッフォン将軍が僕にそう説明してくれる。


本日の議題


それは王家十一人衆に一任された大総督の選出をどうするかということ。


それを話し合うために、僕達王家十一人衆はこの場に集まっている。


しかしどうやってその大総督とやらを決めるのだろうか…


僕がそう思っていると、進行役のブッフォン将軍が話を進める。


「大総督の選出について、皇軍・陸軍・海軍に事前に案を持ってくるように依頼した。まずは各軍の案を発表し合おうではないか」


なるほど


まずは各軍の案を示し合わせ、そこからすり合わせることにするのか。


「ではまず皇軍から提案します」


そしてレアさんが起立して、皇軍の案を発表する。


「皇軍の案は大総督にルイジ・ブッフォン将軍を推薦します。皇軍大将の任と兼任していただきます」


皇軍の案はルイジ・ブッフォン将軍をそのまま大総督に据えるというもの


人選自体は無難であるとは思う。


ブッフォン将軍なら各軍の上に立つ大総督の任も問題なく勤めてくださるだろう。


ということは他の軍も同じような感じなのかな…


海軍からはフランシス中将が案を発表した。


「次に…海軍の案を発表する……大総督はゾエ・ブロッタを推薦する。海軍大将の役と兼任とする…」


我らが海軍も同じような案だった。


つまり陸軍も…


「陸軍の案を発表する。大総督はアレス・デルピエロを推薦する。なお陸軍大将との兼任とする。だよなぁ?」


陸軍はサンディ・ネスターロ中将が発表する。


しかしものの見事に各軍の案が一緒だった。


だが誰もが驚いていない。


そうか、ここからが議論の始まりなのか。


「そりゃあそうなるだろうよ。どこの軍も自分の大将を大総督に推すに決まってるぜ?この大将達の上に立つ人材なんてそうはいないだろう?」


サンディ中将が周りに確認するように言う。


「……しかし…どの軍も…他の大将の下には入れない…」


フランシス中将も目を瞑りながら言う。


「もちろんです。つまり大総督の役は現状の王家十一人衆から選出することは難しいそうです…」


レアさんが困ったように言う。


「しかし外部から俺達の上に立てるような人を引っ張ってこれんのか?」


デルピエロ将軍の言うことも最もだ。


「なくはないろんよ」


「「「!!??」」」


パオっちの発言に皆が目を見開く。


「どういうことだよぉ?教えてくれだよぉ」


マリオ少将がパオっちに聞いた。


「簡単な話だろん。オイラ達全員が認める高貴な方に就任をお願いすればいい。それこそ皇王様か皇妹殿下かのどちらかにね」


「「「「!!!???」」」」


「……パオ…テメェ…前回の会議といい、らしくないことを言いやがるな…後ろに誰がいる?」


デルピエロ将軍がパオっちに詰め寄るように聞く。


「誰もいないろん。思ったことを言っているだけだにー」


パオっちはあっけらかんと答えるが、確かに後ろには誰かがいることは間違いないのだ。


まぁその後ろにいる人は、僕達の目の前にいるんだけど……


「まぁまぁ旦那…それは今関係ないだろう?じゃあ皇王様と皇妹殿下どちらに頼むのか多数決でも取るかい?」


その後ろにいる人ことサンディ中将は一同に多数決を迫る。


「待ってください。その採決は時期尚早でしょう。もっと大総督に就任する方の要件を確認しましょう」


レアさんが冷静に議論を整理しようとする。


そしてゾエさんがレアさんの言葉に直球で答えた。


「要件?…そんなのこの中の全員が認める人物であることさね…ある意味単純さね…」


「単純だが…それは敷居が高すぎるだろう?」


ゾエさんの言葉にファビオ中将が呆れたように言う。


僕も何か言っとかないといけないかな。


そう思って僕は率直に思ったことを聞く。


「では皆さんはどんな人が大総督になればいいのでしょうか?紙に書いて並べてみませんか?」


僕の提案に、ブッフォン将軍が笑みを浮かべる。


「それは良い案だ。まずは各々が希望する大総督の資質について整理しよう」


そしてブッフォン将軍は手元にあった紙を全員に配り、各々が思う大総督の資質について一つだけ書かせて、回収した。


その結果がこれだ。


ルイジ『将たる器を持ち、我々を導いてくれる人』

ファビオ『強い者』

レア『軍事に関する経験が豊富な方』


アレス『俺より強え奴』

サンディ『旦那が認める人』

マリオ『サンディが認める人』


ゾエ『武術師でも魔術師でもどちらでもいいが一流の腕を持つ人』

フランシス『実績が確かな人』

パオ『優しい人』

シリュウ『ブッフォン将軍・デルピエロ将軍・ゾエさんが認める人』



各々が書いた紙を並べて、それを並べる僕ら


「……こんな人…存在します…?」


レアさんが顔をしかめている。


「…オイラもそう思うにー…」


パオっちもげんなりして言う。


「…というか陸軍はデルピエロ将軍が認めたらいいことになってません?サンディ中将もマリオ少将もデルピエロ将軍任せ…?」


僕は陸軍の3人を見るが、「何言っているの?」みたいな顔で見ている。


仲いいな…あの3人


「これは書いた方がますます迷走しているさね」


「……ここまで…要件にバラつきがあるとは……考え直さないと…」


「そもそも3大将が認める御仁ってのが一番壁がでかそうだぜ?シリュウ准将…」


「サンディ中将…そんなこと言われましても3人の上に立つ人なんですからそうじゃないとダメな気がして…」


「心遣い感謝する。しかし確かに私達3人が認める人など…もういないのだ」


ブッフォン将軍は遠い目をしながら言う。


きっと軍でのかつての上司や先輩を思い浮かべているのかな


ブッフォン将軍達の上司や先輩なのだから、年齢的にもうすでにこの世にいないか退役しているのだろう。






ん?









かつての()()…?











「しかし議論はここまで行き止まりさね…ここからどうす「待ってください!」





諦めたようなことを言うゾエさんの言葉を遮る僕。





そして改めて皆が書いた大総督の条件を見つめる。






『将たる器を持ち、我々を導いてくれる人』

『強い者』

『軍事に関する経験が豊富な方』

『俺より強え奴』

『武術師でも魔術師でもどちらでもいいが一流の腕を持つ人』

『実績が確かな人』

『優しい人』

『ブッフォン将軍・デルピエロ将軍・ゾエさんが認める人』
















いるじゃないか…最適の人物が…!




その人物を思いついた僕は、全員に向かって力強く言う。






「僕はこの条件に当てはまる人物を知っています!」







「「「「!!!???」」」」






「ほんとか!?」

「シリュウ君…どなたですか?」

「ろんろん!誰にー?」

「そんな方がいるのか…?」

「マジかよ。シリュウ准将」

「早く言うさね!」

「…一体……」





僕の言葉にどよめく一同





そして僕はその人物の名を言う。





























「コウロン・ドラゴスピアですよ」


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― 新着の感想 ―
更新お疲れ様です。 >コウロンさんならバッチリ該当してんじゃん! やっぱりな!って感じですねww 皆が出した条件を見てて「あれ?これお爺ちゃんなら全部満たせんじゃね?」と自分も思いましたし…シリュウ…
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