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第1話 新生ドラゴスピア家の発足

列歴98年 6月27日 6時12分 皇都セイト 2区(華族区)サザンガルド家セイト政務所 中庭


鳥の鳴き声が静かに響く帝都の朝


この時期の太陽は少し早くに東から登り、早朝にもかかわらず稽古をしている僕の汗が流れるのを促すように照りつける。


そんな太陽を背に、僕は龍槍ガルディウスを一心不乱に振り、ロロ・ホウセンとの戦いで負った傷の回復具合を確かめていた。


「痛みなし。鈍りはあるが、本調子だね。問題ないや」


あれからもう10日近く経つため、僕の傷はすっかり塞がり、問題なく体を動かせるまで回復していた。


そろそろ海軍准将としてまた働かないとね。


「おーい!シリュウや、朝食ができたのじゃー」


屋敷の2階の窓から飛び出さんばかりに顔を出して、僕の名を呼ぶのは、僕の妻であるベアトリーチェ・ドラゴスピア…ビーチェだ。


最愛の人に名を呼ばれた幸せを噛み締めながら僕は笑顔で槍を振り、空を見上げる。


今日もまた空が青い。



〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜


列歴98年 6月27日 8時2分 皇都セイト 2区(華族区)サザンガルド家セイト政務所 食堂


ビーチェと2人で使用人が用意してくれた朝食を食べ終わった後、僕とビーチェはこれからの予定を確認していた。


「今日はこれからどうする?昨日に続いて海軍で遠征の報告の続き?」


昨日は海軍本部にて僕とビーチェ、パオっちとリアナさんはゾエさんとフランシス中将に遠征の全てについて報告をした。


公式の成果だけでなく、王国での暗殺未遂も含めて。


ただ皇妹派としての活動までは報告していない。


あくまで海軍准将としての行った活動の全てを報告した。


僕達が一方的に話すことが多く、昨日はゾエさんとフランシス中将からは短く神妙な面持ちこう言われた。


「シリュウ、初任務にもかかわらずよくやってくれたさね」


「シリュウ君…無事で何よりだ…そしてその働き見事…」


そして報告の内容の吟味と整理のため、ゾエさんとフランシス中将は早々に席を立ち、海軍の幹部を集めて緊急の会議を開いていた。


僕とパオっちも参加しようとしたけど、ビーチェとリアナさんが参加するから僕ら2人はその日はそこで切り上げて、休養するようにゾエさんから言いつけられたのだった。


なので報告に対するゾエさんとフランシス中将の反応は聞けていないのだ。


なので遠征の結果、海軍としてどう動くのかの会議があると思うんだけど…


僕がそう思っているとビーチェは僕の考えていることがわかったのか答えてくれた。


「昨日はあれから他の将校達と妾達とで報告の共有で終わったのじゃ。妾達は事実確認や補足をしていた程度じゃよ。あの程度ならシリュウにパオ少将の手を煩わせることもあるまい。ただ事実の整理と方針を定めるのにフランシス中将からは2日は欲しいとのことじゃ。それまでは妾達は休暇のようじゃ」


「へぇ、そうなんだ。まぁ色々あったからなぁ。特にポアンカレとの同盟をどうするかは海軍にとっては最優先だろうね」


「そうじゃな。ポアンカレとの同盟のことを報告した時のフランシス中将のあんぐりした顔は傑作じゃった。かっかっか!」


「そりゃ驚くでしょ…護衛に行ったと思ったら大陸有数の魔術師軍団と同盟話を持ってきたなんて…」 


「それもあって司令部は、蜂の巣を突いたような騒ぎじゃったのう。戦略の根幹が変わるから致し方あるまいが」


「ご、ご愁傷…」


「それに2日の休暇もちょうど良い。妾達もそろそろドラゴスピア家の屋敷を構える準備もせねばなるまい」


そうだった。


今僕達はこのサザンガルド家のセイトでの活動拠点に居候している形になっているが、そろそろ自分達の屋敷を構えて、自分達の使用人を雇って独立しなければならない。


新生ドラゴスピア家を発足させなければ


屋敷は遠征前にシルベリオさんから紹介してもらった不動産屋に頼んでいるが、家令や会計役などの人材はこれから探さねばならない。


現状ドラゴスピア家の家臣は、護衛騎士のリナさんとメイドのシュリットだけだった。


必要な使用人は、屋敷をまとめる家令に、家の財産を管理する会計役、それに護衛騎士に使用人といったところか…


「屋敷に人材登用か…やることが山積みだね…」


「まぁ…シリュウの想像とは違う大変さが待っておるのじゃが…」


え?なにそれ?


「どういうこと?」


「シリュウは屋敷も人材も探さねばならぬと思っておるのじゃろ?」


「そ、そうだけど…違うの?」


「違うんじゃ…実はシリュウが皇都に屋敷を構えるとの噂がこの一月で皇都中に広まってのう…」


「まぁ、僕も有名人だからそういうこともあると思うけど…それがどうしたの?」



僕が聞くと、ビーチェは苦笑いしながら言う。








「この政務所にぜひドラゴスピア家で働かせて欲しいという者が殺到しておるのじゃ…」




「えぇ…」



僕は驚き半分、呆れ半分で答える。


「なんでさ…こんな新興の…それも16の奴が当主の家だよ?」


「まぁシリュウは今や時の人じゃろうからのう…政務所の者が簡単に面接して、その結果を資料にまとめてくれた。これがその資料じゃよ。まぁそれも良い面と悪い面もあるようじゃ」


「良い面と悪い面?」


「まず良い面から、メイドと護衛騎士に応募する者は純粋にシリュウと妾に憧れて来ておるようじゃ」


「へぇ、ビーチェは有名人だし当然だね」


「シリュウに憧れた者の方が圧倒的に多いがのう…して問題は家令と会計役の方じゃ」


「それが悪い面?」


「うむ。どうやら妾達が若輩の世間知らずの夫婦と見越して、安易に家を牛耳れると思っておる不届者が多いようじゃよ。明らかに下心満載の応募者が多いとな」


「ぇぇ…それはそれで…てかよくわかるね、下心とか」


「まぁそっちの面接はハリーがしたようでのう。ハリーはこの皇都で何十年も執事業をしておる。過去に問題を起こした執事の顔も覚えておるし、名前を誦じるほどじゃ」


ハリーさんはこのセイト政務所の責任者の執事の方だ。


わざわざ忙しい中、面接してくれたのか感謝感謝


しかしそうなるとなかなか登用が難しい。


「やっぱり家令と会計役は信頼できる人じゃないとダメだなあ。自分で見つけてくるしかなさそう」


「その通りじゃ。そもそもどれくらいのメイドや護衛騎士を雇うのかも、華族経営の経験豊富な家令と金勘定ができる会計役が決まらんとわからないのじゃ」


「なるほどねぇ…じゃあ今日の予定は?」


僕がそう聞くとビーチェはニカッと笑って言う。





「家令と会計役を登用しに行くぞい!」

シリュウ「当てはあるの?」


ビーチェ「それはお楽しみじゃ」

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