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第36話 ノースガルドに至る道⑪~援軍そして援軍

烈歴98年 6月18日(行軍4日目) シュバルツ帝国 ラインハルツ大橋


ロロ・ホウセンとの一騎討ちで瀕死の重傷を負ってしまったところで、このラインハルト領を治めるラインハルト公の嫡男、レオンハルト・ラインハルトさんが一軍を率いて、ラインハルツ大橋に現れた。



その軍の数は500程が騎馬隊だが、騎馬隊の向こうに歩兵がその3倍くらいの数がいた。


全部で2000程度の兵に見える。


つまりこのロロ・ホウセン率いる『黒備え』の倍の数はいた。


しかしラインハルト軍の強さは僕にはよくわからないので、ヒルデガルドに現状について僕は聞いた。


「……こ、これって…助かったの…?」


「……『黒備え』は間違いなく帝国で最強の部隊……でもラインハルト家の兵も帝国屈指の精強さを誇るわ……数では倍ほど違うから……流石の『黒備え』でも倍の数のラインハルト軍はかなり難しい相手よ…」


「おお……ラインハルト軍はそんなに強いのか……助かった…てかサンディ中将はこれも知ってたのか……つくづく恐ろしい人だね…」


「……そうね…少なくともロロ・ホウセンが追手に来ること以外は完璧な策だったわ…」


ヒルデガルドがしみじみとサンディ中将の策の深さに驚いている。


ラインハルト軍の登場で一転して苦境に陥ったヴィルヘルム軍はホウセンを除いて、混乱を隠せなかった。


そして副官が再度ホウセンに進言する。


「ロ、ロロ将軍!この場にいてはラインハルト軍に我が隊が襲撃されます!一騎討ちの決着はほとんど着いているではありませんか!ラインハルト軍の全数がこの橋に来る前に、橋を渡り、皇国軍を追撃しましょう!」



「………致し方なしか……進軍を許可する……だが俺はあの者を討つまでここに残るぞ…」


流石のホウセンも副官の言うことに理があると感じたのか、進軍の許可を出した。


まぁ()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()のですけどね


流石にこの状態であの騎馬隊1,000騎と戦えないので、僕とヒルデガルドは素直に橋の脇に逸れて道を譲った。


「……完敗だよ……こんなボロボロの僕に、あなた達の部隊を止められないからね………」


「…投降はしないわ……でも通りたければどうぞ……無駄な抵抗はしない主義よ…」


僕達のそんな様子を見て副官は高らかに笑う。



「はっは!最初からそうしておればよいのだ!……行くぞ!全軍、橋を渡り、四国山道へ行く!目指すはリータ・ブラン・リアビティの首だ!」


「「「「おう!!!」」」」


そして下馬して一騎討ちを見守っていた兵士達が、次々に騎乗し、橋を渡るべく一気にラインハルツ大橋に向かって駆けだした。


「させぬ!騎馬隊よ!あの軍を追撃せよ!」


レオンハルトさんも負けじと、部下に指示を出す。


そして500騎の騎馬隊がラインハルツ大橋を目掛けて進軍しようとする。


それを僕は大声で静止した。



「ダメです!ラインハルト軍はここまでで結構です!」


「なぜだ!君たち皇国軍が襲われてしまうぞ!」


「ラインハルト領はこの大橋までのはず!この先の戦いはラインハルト公の侵犯になってしまう!これ以上はご迷惑をおかけします!」


「ぐっ!そ、その通りだが…では橋のこちらに残る残党を討伐する!」


「ありがとうございます…それで充分です…」



そのやり取りを聞いていたホウセンの副官は更に気分を良くする。


「はっはっは!この橋を渡れば奴らは来ない!者共…行くぞォ!」



ドドドドドドドドド


そして僕達の脇をすり抜け、騎馬隊がラインハルツ大橋に入った。


ドドドドドドドドド


そして騎馬隊の先頭が橋の真ん中に到達した瞬間




ガラガラガラガラガッシャーン!!



ラインハルツ大橋は騎馬隊の重みに耐えきれず、川に沈むようにして崩壊した。




「な、なに!!」

「うわああ!」

「まずい!この川は深いぞ!」

「も、もどれええ!」



ドボーン!!


ラインハルツ大橋に入っていた騎馬隊のほとんどが引き返すことができず、そのまま川へ落ちて行った。



その数はおおよそ騎馬隊の半分ほど、残された騎馬隊は橋の前で呆然と立ち尽くしていた。


そしてその隙を見逃さなかったのはレオンハルトさんだ。



「不届き者に女神様が天罰を下したのだろう!好機!全軍あの騎馬隊を包囲せよ!」


「「「はっ!」」」


残されたヴィルヘルム軍を包囲するように動くラインハルト軍


「ま、まずい…囲まれる…!」

「しかし後ろは川だ…!逃げ場が…」

「うろたえるな…こちらにはロロ・ホウセン将軍がいらっしゃる!負けはない!」


黒備えも一転してかなりの窮地に立たされたはずだが、流石帝国最強の部隊か。


すぐに体制を立て直し、包囲に迫るラインハルト軍を迎え打つ陣形を整えた。


そしてラインハルト軍の歩兵も橋まで到着し、川を背に布陣するヴィルヘルム軍を半円状に包囲した。



僕とヒルデガルドは混乱の内に、ラインハルト軍の方へ移動し、レオンハルトさんの元に辿り着いた。


「……た、助かりました…ありがとうございます…レオンハルトさん」


「何を言う!むしろここまでヴィルヘルム軍の追撃を許してしまったことを詫びよう。奴らラインハルツハーゲンを迂回するように進軍したようで、気付くのに時間がかかってしまった。申し訳ない!」


ほとんど見ず知らずの僕らに救援をしてさらにその不手際を詫びるレオンハルトさん


超いい人じゃん


今度カチヤ将軍に会った時に、レオンハルトさんの好感度を上げておこうと僕は心に決めた。


「……あいつら…迂回してこの早さなの…?…ほとんど不眠不休じゃないかしら…」


ヒルデガルドがロロ・ホウセンの部隊の進軍の速さに驚く。


「……お前は…ヒルデガルド・ラーム……!?…なぜここに…!?それに…その姿は…!?」


ヒルデガルドの姿を見て驚くレオンハルトさん


そう言えば僕らはずっとヒルデガルドといたからもう違和感がないけど、レオンハルトさんからするとヒルデガルドはヴィルヘルム軍の幹部みたいなものだろう。


「……話せば長くなりますが…ヒルデガルドは今は…皇国軍の兵士なのです…」


「な…!?………それも何か事情があるんだろう…今は問わぬ。…にしてもシリュウ准将…その傷で立っていられるな……おい!衛生兵!…シリュウ准将の手当を!」


「だ、大丈夫です…これくらい…」


僕が治療を固辞しようとするとヒルデガルドに頭を叩かれた。


「…馬鹿な事言わないの……ベアトリーチェに会うんでしょ…今は甘えなさい…あんたはもう使い物にならないの」


「ぐはっ…その言葉が何よりの傷だよ…」


そして何人かの衛生兵が僕のところに来て、水の魔術で傷口を洗浄し、包帯を巻いて止血してくれた。


ふぅ……正直、だいぶ楽になった。


特に水で冷やされるのがとても気持ちいい……よく見ると傷口は赤く腫れあがっていた。


それはそうか。


僕が治療を受けていると、レオンハルトさんとヒルデガルドはヴィルヘルム軍の方を見ていた。


「……さて…あの部隊…どう攻略するか…」


レオンハルトさんが川を背に布陣しているヴィルヘルム軍を見て思案する。


数こそヴィルヘルム軍500vsラインハルト軍2,000の構図だが、あちらにはロロ・ホウセンがいる。


それも僕は一騎討でほとんど有効打を与えられていないので、ロロ・ホウセンはほぼ万全の状態だろう。


「……包囲しているのか仕方ないけど…一点突破で来られたら…止められないわよ…」


「それもわかっている。だが、どこから突破されるかは読めないからな。このまま膠着状態を維持し、更に援軍を呼んで、捻り潰すか」


レオンハルトさんがヴィルヘルム軍を倒す算段を付ける。


しかし僕は気になっていることがある。


「あのう……あの部隊…なんか余裕そうじゃないですか?…ロロ・ホウセン将軍がいるにしても…包囲されてて逃げ場がないはずなのに……」


「…確かに…こちらには『錦馬公』もいるのに……いやに余裕ね……なにかあるのかしら…」


「馬鹿な。この状態で余裕を見せられるなど…『援軍を確信している』ことしか考えられないぞ……まさか…!」


レオンハルトさんが背後を振り向くと、遠くに土煙を舞わせながらこちらへ向かってくる騎馬隊の姿があった。


「………まさか……あの部隊は…!?」


「…嘘でしょ……なんで…?」


その部隊を確認するとレオンハルトさんとヒルデガルドの顔が驚愕に染まる。


その騎馬隊は、赤と黒が入り混じった鎧で統一され、その先頭には赤茶色のウェーブがかった髪で皇帝の血を引く者しか身に着けることが許されない黒のローブを着た男性がいた。



おいおいおいおい……


あの黒のローブを付けている人って……まさか……




「貴様ら、何を遊んでいる。とっとと皇妹の首を取って来いと言ったではないか」




「…ヴィルヘルム…!!!」



レオンハルトさんが大きな声で叫ぶ。


「敬称をつけろ、下郎が」


レオンハルトさんを見下すように答えるヴィルヘルム



こいつがシュバルツ帝国 第二皇子



カール皇帝が言う決して皇帝にしてはいけない者



ヴィルヘルム・シュバルツ・ブライトナーか








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